[1443] 多発性骨髄腫に対するリハビリテーションの効果
Keywords:多発性骨髄腫, ADL能力, チームアプローチ
【はじめに,目的】多発性骨髄腫は骨髄におけるリンパ形質細胞系細胞の腫瘍性増殖とその産生物質によって多彩な症候を呈する疾患である。日本での発症率は人口10万人あたり2人で男性に多く,罹患率は40歳以降年齢とともに増加するため,今後高齢化社会を迎えるにあたり増加が予想される。診断や治療法が進歩した現在においても根治は難しいが,様々な治療法の確立によって生存率が向上している。骨痛や骨折および治療による臥床などで,廃用をきたすためリハビリテーションの対象となる疾患である。今回,ADL評価にBarthel Index(以下BI)を使用し,当院入院中の多発性骨髄腫に対するリハビリテーションの効果について検討したのでここに報告する。
【方法】多発性骨髄腫にて当院血液内科入院中にリハビリテーションの依頼があり,平成23年4月から平成25年3月に転帰した患者25名中データーの評価が可能であった19名(再入院例を含む)を対象とした。死亡例以外の17名の入院期間,理学療法介入日数,リハビリテーション施行単位,転帰,移動能力,初期・最終時のBI,改善度(最終BI-初期BI)BI効率(改善度/介入日数)について後方学的に調査を行った。統計処理はt検定,Mann-Whitney検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院臨床研究委員会の承認を得て実施した。また,今回収集した情報については個人が特定できないように配慮を行った。
【結果】患者背景として19名の転帰として自宅退院11名,転院6名,死亡2名であった。死亡以外の17名(男性8名・女性9名),年齢中央値69(60-90)歳,入院日数中央値36(16-168)日,理学療法開始日数中央値3(1-38)日,理学療法介入日数中央値23(4-103)日であった。リハビリテーション平均施行単位は3.1±0.7単位,初期時のBI47.6±5.6,最終時65.5±7.7であり有意な差が認められた(P<0.01)。改善度は17.6±14.3であり,BI効率は0.9±1.2であった。また,多発性骨髄腫の症状の特徴である骨関連事象(Skeltal reated events:以下SREs)を呈した患者は14名73%(内訳:脊椎関係12名内コルセット使用11名・上腕骨骨折後1名・脛腓骨骨幹部骨折術後1名)であった。移動能力についてはほとんどの患者において,移動能力の獲得・介助可での歩行距離の向上が認められた。理学療法介入日数と平均単位では相関が認められ(r=0.6,p=0.05),介入日数と改善度においては有意な相関が認められなかった。また,自宅退院群と転帰群においては,入院日数は自宅退院群中央値31(16-75)日,転院群中央値41.5(23-168)日であり有意な差が認められなかった。リハビリテーション介入までの日数は自宅退院群中央値4(1-16)日,転院群中央値2(1-38)日であり有意な差が認められなかった。リハビリテーション介入日数は自宅退院群中央値23(4-59)日,転院群中央値29(17-103)日で有意な差が認められなかった。リハビリテーション施平均行単位は自宅退院群3.1±0.8単位,転院群2.9±0.6単位であり有意な差が認められなかった。BIでは自宅退院群初期55.9±13,最終79.5±19.4で有意な差が認められた(p<0.05)。転院群では,初期33.3±32,最終40±35.9で有意な差が認められなかった。初期・最終時ともに自宅退院群と転院群では有意な差が認められなかった。改善度では自宅退院群23.6±13.6,転院群6.6±7.5であり有意な差が認められた(p<0.05)。BI効率については,自宅退院群1.3±1.3,転院群0.2±0.2であり有意な差が認められなかった。
【考察】入院加療中の多発性骨随腫患者に対するリハビリテーションの介入はADLを向上させる結果となった。介入日数と平均単位間では相関が認められた,これは入院日数が長くなると治療の効果とリハビリテーションなどの効果により長時間の介入が可能となる可能性が示唆できる。また,介入日数と改善度の相関が認められなかったことにより短い期間においても患者の体調や安静度制限のなか適切なリハビリテーションを介入することで,ADLが改善できることも考えられる。自宅退院群と転院群の比較においては,BI改善のみに有意な差が認められた。このことより初期時のADL能力が高く改善が高い患者に関しては医師・看護師・MSWなどと協力し自宅退院に向けての計画を早期より検討することが重要ではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】本研究により多発性骨随腫の治療中において,リハビリテーションが介入することがADLの向上に繋がることが示唆された。今後は症例数を増やし,病期分類や治療方法などでの違いにおいても検討していきたい。
【方法】多発性骨髄腫にて当院血液内科入院中にリハビリテーションの依頼があり,平成23年4月から平成25年3月に転帰した患者25名中データーの評価が可能であった19名(再入院例を含む)を対象とした。死亡例以外の17名の入院期間,理学療法介入日数,リハビリテーション施行単位,転帰,移動能力,初期・最終時のBI,改善度(最終BI-初期BI)BI効率(改善度/介入日数)について後方学的に調査を行った。統計処理はt検定,Mann-Whitney検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は当院臨床研究委員会の承認を得て実施した。また,今回収集した情報については個人が特定できないように配慮を行った。
【結果】患者背景として19名の転帰として自宅退院11名,転院6名,死亡2名であった。死亡以外の17名(男性8名・女性9名),年齢中央値69(60-90)歳,入院日数中央値36(16-168)日,理学療法開始日数中央値3(1-38)日,理学療法介入日数中央値23(4-103)日であった。リハビリテーション平均施行単位は3.1±0.7単位,初期時のBI47.6±5.6,最終時65.5±7.7であり有意な差が認められた(P<0.01)。改善度は17.6±14.3であり,BI効率は0.9±1.2であった。また,多発性骨髄腫の症状の特徴である骨関連事象(Skeltal reated events:以下SREs)を呈した患者は14名73%(内訳:脊椎関係12名内コルセット使用11名・上腕骨骨折後1名・脛腓骨骨幹部骨折術後1名)であった。移動能力についてはほとんどの患者において,移動能力の獲得・介助可での歩行距離の向上が認められた。理学療法介入日数と平均単位では相関が認められ(r=0.6,p=0.05),介入日数と改善度においては有意な相関が認められなかった。また,自宅退院群と転帰群においては,入院日数は自宅退院群中央値31(16-75)日,転院群中央値41.5(23-168)日であり有意な差が認められなかった。リハビリテーション介入までの日数は自宅退院群中央値4(1-16)日,転院群中央値2(1-38)日であり有意な差が認められなかった。リハビリテーション介入日数は自宅退院群中央値23(4-59)日,転院群中央値29(17-103)日で有意な差が認められなかった。リハビリテーション施平均行単位は自宅退院群3.1±0.8単位,転院群2.9±0.6単位であり有意な差が認められなかった。BIでは自宅退院群初期55.9±13,最終79.5±19.4で有意な差が認められた(p<0.05)。転院群では,初期33.3±32,最終40±35.9で有意な差が認められなかった。初期・最終時ともに自宅退院群と転院群では有意な差が認められなかった。改善度では自宅退院群23.6±13.6,転院群6.6±7.5であり有意な差が認められた(p<0.05)。BI効率については,自宅退院群1.3±1.3,転院群0.2±0.2であり有意な差が認められなかった。
【考察】入院加療中の多発性骨随腫患者に対するリハビリテーションの介入はADLを向上させる結果となった。介入日数と平均単位間では相関が認められた,これは入院日数が長くなると治療の効果とリハビリテーションなどの効果により長時間の介入が可能となる可能性が示唆できる。また,介入日数と改善度の相関が認められなかったことにより短い期間においても患者の体調や安静度制限のなか適切なリハビリテーションを介入することで,ADLが改善できることも考えられる。自宅退院群と転院群の比較においては,BI改善のみに有意な差が認められた。このことより初期時のADL能力が高く改善が高い患者に関しては医師・看護師・MSWなどと協力し自宅退院に向けての計画を早期より検討することが重要ではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】本研究により多発性骨随腫の治療中において,リハビリテーションが介入することがADLの向上に繋がることが示唆された。今後は症例数を増やし,病期分類や治療方法などでの違いにおいても検討していきたい。