[1463] ウォームアップとしてのスタティックストレッチがパフォーマンスに及ぼす影響
Keywords:スタティックストレッチング, 安静椅坐位, 垂直跳び
【はじめに,目的】
ウォームアップとしてスタティックストレッチを用いることは,その後のパフォーマンスを低下させるという報告がある。その一方で,変化がない,あるいは上昇するという報告もあり,未だ一定の結論を得ていない。スタティックストレッチ単独の効果を判定するためには安静との比較が必要と考えられるが,先行研究では何かしらの運動が比較する条件に含まれており,純粋な安静との比較が行われているものはない。
そこで我々は,スタティックストレッチ前後での比較,ならびに安静位保持との比較を行うことによって,スタティックストレッチがパフォーマンスに与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
健常女性12名(年齢21.3±1.2歳,身長159.1±5.0cm,体重53.1±5.3kg)を対象とした。パフォーマンスの指標として垂直跳びの跳躍高を採用し,跳躍の方法についてはカウンタームーブメントジャンプ(以下,CMJ)を用いた。全ての対象者は,スタティックストレッチおよび安静椅坐位の二課題を実施し,実施順序は無作為に選択した。また,それぞれの課題間に48時間の間隔を空け,その間は激しい運動を行わないように指示した。
スタティックストレッチは左右の大腿四頭筋,ハムストリングス,大殿筋,下腿三頭筋を対象に臥位で他動的に30秒間持続伸張した。伸張は左右交互に2回ずつ行い,対象者が痛みを感じず,かつ最大に伸張されていると感じる肢位で保持した。安静椅坐位は背にもたれない状態で10分間安静での椅坐位をとってもらった。測定の手順として,CMJを3回測定した後,いずれかの課題を10分間実施し,その後,2分間休息をとり,再度CMJを3回測定した。測定した中で最も大きな値についてその後の解析を行った。
跳躍高の測定には,三次元動作解析装置(VICON)を使用し,対象者にはPlugInGait fullbodyモデルに従って,体表の39点にマーカーを張り付け,測定を行った。跳躍高は最高値と基準値の差とし,最高値は跳躍時における重心の最も高い値を,基準値は安静立位時の重心位置を100ms抽出し,平均した値とした。
各課題における介入前後の跳躍高の比較,および,介入前後の跳躍高差の二課題間比較について,対応のあるt検定を行った。なお,全ての統計解析には,SPSS ver20.0を用い,危険域5%未満を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は倫理委員会の承認を得て実施した。なお,被験者には測定内容を事前に説明し,紙面にて同意を得た。
【結果】
各測定項目の平均値±標準偏差を以下に示す。スタティックストレッチ実施前が420.4±47.7mm,実施後が407.2±49.4mmであり,実施後に有意な低下がみられた(p<0.05)。安静椅坐位においても実施前が424.1±57.8mm,実施後が399.5±55.6mmで,実施後に有意な低下が認められた(p<0.05)。課題間の跳躍差について,スタティックストレッチは-13.2±10.4mm,安静椅坐位は-24.5±16.7mmであり,安静椅坐位がスタティックストレッチよりも有意に低下した(p<0.05)。
【考察】
スタティックストレッチ,安静椅坐位の両条件ともに跳躍高の有意な低下が認められた。これらの条件に共通している点は安静位でいることである。このことから,安静位でいることが跳躍高を低下させている主な要因であると考えられる。
また,課題間の比較では,安静椅坐位の方が,スタティックストレッチ以上に低下していることが示された。スタティックストレッチは,安静位に加え,筋の伸張を行っていることを考慮すると,筋の伸張そのものは,その後のパフォーマンスを低下させるというよりも,むしろ,向上させる可能性があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
動作前の安静位保持はパフォーマンスの低下につながるという点と,筋の伸張はパフォーマンスの低下を抑える可能性があるという点。
ウォームアップとしてスタティックストレッチを用いることは,その後のパフォーマンスを低下させるという報告がある。その一方で,変化がない,あるいは上昇するという報告もあり,未だ一定の結論を得ていない。スタティックストレッチ単独の効果を判定するためには安静との比較が必要と考えられるが,先行研究では何かしらの運動が比較する条件に含まれており,純粋な安静との比較が行われているものはない。
そこで我々は,スタティックストレッチ前後での比較,ならびに安静位保持との比較を行うことによって,スタティックストレッチがパフォーマンスに与える影響を明らかにすることを目的とした。
【方法】
健常女性12名(年齢21.3±1.2歳,身長159.1±5.0cm,体重53.1±5.3kg)を対象とした。パフォーマンスの指標として垂直跳びの跳躍高を採用し,跳躍の方法についてはカウンタームーブメントジャンプ(以下,CMJ)を用いた。全ての対象者は,スタティックストレッチおよび安静椅坐位の二課題を実施し,実施順序は無作為に選択した。また,それぞれの課題間に48時間の間隔を空け,その間は激しい運動を行わないように指示した。
スタティックストレッチは左右の大腿四頭筋,ハムストリングス,大殿筋,下腿三頭筋を対象に臥位で他動的に30秒間持続伸張した。伸張は左右交互に2回ずつ行い,対象者が痛みを感じず,かつ最大に伸張されていると感じる肢位で保持した。安静椅坐位は背にもたれない状態で10分間安静での椅坐位をとってもらった。測定の手順として,CMJを3回測定した後,いずれかの課題を10分間実施し,その後,2分間休息をとり,再度CMJを3回測定した。測定した中で最も大きな値についてその後の解析を行った。
跳躍高の測定には,三次元動作解析装置(VICON)を使用し,対象者にはPlugInGait fullbodyモデルに従って,体表の39点にマーカーを張り付け,測定を行った。跳躍高は最高値と基準値の差とし,最高値は跳躍時における重心の最も高い値を,基準値は安静立位時の重心位置を100ms抽出し,平均した値とした。
各課題における介入前後の跳躍高の比較,および,介入前後の跳躍高差の二課題間比較について,対応のあるt検定を行った。なお,全ての統計解析には,SPSS ver20.0を用い,危険域5%未満を有意とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は倫理委員会の承認を得て実施した。なお,被験者には測定内容を事前に説明し,紙面にて同意を得た。
【結果】
各測定項目の平均値±標準偏差を以下に示す。スタティックストレッチ実施前が420.4±47.7mm,実施後が407.2±49.4mmであり,実施後に有意な低下がみられた(p<0.05)。安静椅坐位においても実施前が424.1±57.8mm,実施後が399.5±55.6mmで,実施後に有意な低下が認められた(p<0.05)。課題間の跳躍差について,スタティックストレッチは-13.2±10.4mm,安静椅坐位は-24.5±16.7mmであり,安静椅坐位がスタティックストレッチよりも有意に低下した(p<0.05)。
【考察】
スタティックストレッチ,安静椅坐位の両条件ともに跳躍高の有意な低下が認められた。これらの条件に共通している点は安静位でいることである。このことから,安静位でいることが跳躍高を低下させている主な要因であると考えられる。
また,課題間の比較では,安静椅坐位の方が,スタティックストレッチ以上に低下していることが示された。スタティックストレッチは,安静位に加え,筋の伸張を行っていることを考慮すると,筋の伸張そのものは,その後のパフォーマンスを低下させるというよりも,むしろ,向上させる可能性があると考えられる。
【理学療法学研究としての意義】
動作前の安静位保持はパフォーマンスの低下につながるという点と,筋の伸張はパフォーマンスの低下を抑える可能性があるという点。