第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

スポーツ5

Sun. Jun 1, 2014 10:25 AM - 11:15 AM ポスター会場 (運動器)

座長:竹村雅裕(筑波大学体育系)

運動器 ポスター

[1464] 八王子市バドミントン大会のメディカルサポート報告

宮武智子1, 三宅英司1, 小倉隆輔1, 元井康弘1, 和田晃1, 橋田潤2 (1.医療法人社団永生会永生クリニックリハビリテーション科, 2.医療法人社団永生会永生クリニック診療部)

Keywords:バドミントン, 市民大会, メディカルサポート

【はじめに,目的】
八王子バドミントン連盟と八王子レディースバドミントン連盟の登録者数はそれぞれ約850人と約360人で,両連盟主催の大会は年間14回開催されている。当クリニックでは平成25年度から両連盟からの依頼を受け,大会でのメディカルサポート(以下:サポート)を実施した。本研究の目的は,サポート内容の分析を行い,サポートを充実させるための要件を抽出することとした。
【方法】
サポートは,平成25年5月から11月までの同連盟主催の計7大会実施した。スタッフは,1回の大会につき2名の理学療法士が帯同し,当クリニックの医師と協力してサポートを実施した。場所は大会会場に設置した特設のサポート室を用いた。サポート内容はコンディショニング,応急対応,クーリングダウン,医療相談であった。サポートにあたり選手は,コンディション記入用紙を記入した。記入内容は,氏名,年齢,身長,体重,サポート希望部位(以下:希望部位),疼痛の有無,受診の有無,受傷機転であった。サポート内容の分析は,希望部位,受診の有無,受傷機転について行った。統計学的検討は,年齢を40歳未満と40歳以上の2群に群別けし,群別における性別と希望部位(上肢と下肢)の関連についてχ2検定を行った。また,群別の性別ごとに上肢と下肢における詳細な希望部位の割合を算出した。さらに,受傷機転と受傷の有無の割合を算出した。統計ソフトはSPSS ver.20を使用し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本報告はヘルシンキ宣言に則り十分に説明を行い,書面にて同意を得た。
【結果】
大会参加人数は延べ1860人であり,サポート実施者は132人(7.1%)であった。性別は男性28人(平均年齢43.2±16.2歳,平均身長170.1±7.5cm,平均体重67.1±9.2kg),女性104人(平均年齢45.5±14.0歳,平均身長157.1±4.9cm,平均体重54.6±6.0kg)であった。一人あたりの平均希望部位数は1.7ヶ所で,延べ希望部位数は212部位であった。χ2検定の結果,群別の性別と希望部位の関連は,40歳以上で有意な関連を認め(P=0.016),希望部位の割合は男性が上肢52.6%,下肢47.4%,女性が上肢24.7%,下肢75.3%であった。40歳以上の上位3位の詳細な希望部位は,男性は肩関節36.8%,膝関節26.3%,手関節10.5%,女性は膝関節45.9%,肩関節15.3%,下腿9.4%であった。40歳以下は性別と希望部位に関連を認めなかったが(P=0.067),詳細な希望部位は男女ともに膝関節と肩関節が多かった。受傷機転は上肢が急性11.1%,慢性88.9%,下肢が急性11.8%,慢性88.2%であった。受診の有無はあり38.5%,なし61.5%であった。
【考察】
今回,40歳以上において性別と希望部位に有意な関連を認め,40歳以上の女性の希望部位は男性に比べて下肢が高率で,特に膝関節が多かった。この理由は女性は男性に比べて関節の退行性変性が多いことと基礎体力が低いためと考えた。40歳以上の男性の希望部位は女性に比べて上肢に高率で,特に肩関節が多かった。この理由は,バドンミトンは競技特性として頭よりも上でシャトルを打つオーバーヘッドストローク動作を頻回に行い,男性は女性に比べスマッシュを多用する傾向があるためと考えた。受傷機転は上肢,下肢ともに急性に比べ,慢性が高率であった。この理由はバドミントンは非接触競技であること,練習や試合で前述したランジ動作やオーバーヘッドストローク動作などの同一の動作を高頻度に行うためと考えた。疼痛を有する選手の約3分の1が受診をしていない理由は,受傷機転が慢性であることと疼痛を有していても競技の継続が可能であったためと考えた。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果から,疼痛を有したまま競技を継続し,医療機関を受診していない選手が相当数存在することが示された。市民大会出場のバドミントン選手において,傷害の発生と重症化の予防は必要であり,継続的なサポートが有効であると示唆された。主に傷害発生と重症化予防のためには,特に40歳以上において性別で異なるアプローチが必要で,女性は膝関節を中心として男性は肩関節と膝関節へのアプローチが有効と考えた。