第49回日本理学療法学術大会

講演情報

発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

スポーツ5

2014年6月1日(日) 10:25 〜 11:15 ポスター会場 (運動器)

座長:竹村雅裕(筑波大学体育系)

運動器 ポスター

[1467] 高校生におけるスポーツ外傷・障害予防クリニックの効果

岡田誠1, 田村将良2, 服部紗都子3, 竹田智幸2, 竹田かをり2, 奥谷唯子2, 原田拓2, 今井えりか2 (1.藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科, 2.可知整形外科, 3.名古屋大学医学部附属病院リハビリテーション部)

キーワード:すぽーツ障害, 障害予防, 成長期

【はじめに,目的】
近年,成長期にスポーツ外傷・障害を発症する子どもが増加している。特に,中学校,高等学校での部活動によるものが多発しており問題視されている。これらの問題に対して日本体育協会は報告書やガイドラインを作成しているものの,充分な効果を得ているとはいいがたい。一部の中学・高校・ジュニアクラブを除いた大多数の中学校・高等学校では,充分な管理が行われないままスポーツ外傷・障害を多発している現状があるものと思われる。そこで今回,高校生に対して,スポーツ外傷・障害予防クリニック(スポーツ外傷・障害状況の調査,身体機能の評価,予防に向けた指導)を実施した。部活動を行っている高校生のスポーツ外傷・障害の現状とその身体機能を確認し,スポーツ外傷・障害予防指導を行うことでスポーツ外傷・障害の減少に寄与することを目的として実施した。
【方法】
高等学校で部活動を行っている生徒325名を対象にスポーツ外傷・障害予防クリニックを実施した。生徒のスポーツ外傷・障害の状態を把握する目的で運動機能調査(質問紙によるアンケート調査)を実施した。そして,これらの調査結果を参考にスポーツ外傷・障害予防クリニック(運動機能評価,評価フィードバック,全体および個別の運動指導)を実施した。運動機能調査では,過去のスポーツ外傷・障害の部位と診断名,受傷した時期,現在の身体状況を調査した。運動機能評価は,関節弛緩性テスト(上肢版は上肢テスト),Tightnessテスト,アライメント,体幹機能評価,部位別テストなどの31項目(上肢版は28項目)からなる運動機能評価表を用いて評価を実施した。評価フィードバック,全体および個別の運動指導は評価後に実施した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究の実施に際して,本学疫学・臨床研究等倫理審査委員会の承認を得て,被験者への説明および同意,データの管理には充分な注意を払って実施した。
【結果】
スポーツ外傷・障害の程度は,運動機能調査表と運動機能評価表の項目数から総合的に4段階に判定した。4段階の詳細は,Sレベルは,既にスポーツ外傷・障害を有しており,評価結果に大きな問題がある者,Aレベルは評価結果に問題があり対応が必要と思われる者,Bレベルは評価結果の問題は少ないが予防指導が必要と思われる者,Cレベルは大きな問題のない者とした。その結果,Sレベルが36名(11.1%),Aレベルが119名(36.6%),Bレベルが64名(19.7%),Cレベルが106名(32.6%)であった。スポーツ外傷・障害の該当者・可能性のある者(S,A,Bレベル)は219名で全体の67.4%であった。機能評価表による評価では,全項目31項目(上肢版28項目)に対して31.3±10.4%の項目でチェックが認められた。項目別では,関節弛緩性テストが32.0%,Tightnessテストが44.1%,アライメントが34.5%,体幹機能評価が27.9%,部位別テストが28.7%,上肢テストが22.0%であった。全項目との比較ではTightnessテスト(p<0.01),アライメント(p<0.05)が大きい結果となった。
【考察】
今回のスポーツ外傷・障害クリニックでは,部活動を行っている高校生のスポーツ外傷・障害の現状を把握することができた。機能調査表と機能評価表によるスクリーニング評価を行うことで,スポーツ外傷・障害に該当している者,このまま放置しておくとスポーツ外傷・障害になる可能性のある者など,スポーツ外傷・障害の予備軍も含めた現状の把握が可能となった。スポーツ外傷・障害のレベル判定については,スポーツ外傷・障害の該当者・可能性のある者(S,A,Bレベル)は全体の67.4%であった。日本体育協会スポーツ医・科学研究報告書では,過去に外傷や障害を経験したことのある高校生は62.5%と報告されており,スポーツ外傷・障害の可能性のある生徒を含めた抽出が目的の今回のスクーリング評価では妥当な結果であったと思われる。機能評価表による評価では,Tightnessテスト,アライメントが大きい結果となった。柔軟性低下やアライメント異常とスポーツ外傷・障害の関係性については多くの報告もあり,今後の指導を含めた活動では着目していく必要があると思われる。
今回のスポーツ外傷・障害クリニックを通して多くの生徒にスポーツ外傷・障害予防の必要性を確認できたことは意義のある活動であったと思われる。今後もスポーツ外傷・障害予防を進めていきたいと思う。
【理学療法学研究としての意義】
成長期のスポーツ外傷・障害に対して,スポーツ外傷・障害予防指導を行うことでスポーツ外傷・障害の減少に寄与することできると思われる。