[1468] 高校柔道で起こりやすい傷害及び障害の特性
キーワード:柔道, 成長期, 競技特性
【はじめに,目的】本院は2003年より,柔道大会のメディカルサポートを実施し,2009年からは大規模な高校柔道大会での急性外傷・障害の対応,コンディショニングなどメディカルサポートを医師・看護師・理学療法士が協働して行ってきた。昨年度,日本臨床スポーツ医学会学術集会にて高校柔道で起こりやすい傷害の特性について,高校1年生では肩の傷害が多く,2年生では膝の傷害が多いと述べたが,今回新たな調査では1年生・2年生とも肩の傷害が多い結果となった。これらの調査を基に高校柔道における傷害発生の特性を明らかにし,更に肩の傷害について経験年数との関係を詳細にすることで,今後の傷害予防対策を検討する。
【方法】対象は2012年ハーベスト杯争奪しらさぎ高等学校柔道錬成大会に参加した,兵庫県内51校,兵庫県外54校,参加人数約700名である。錬成大会では1名1日に10から15試合の練習試合を行なっている。医療ブースに来た生徒102名(1年生40名,2年生62名)対し,主訴・診断・身体所見を含んだコンディショニング記録用紙に医師・看護師又は理学療法士が記入し調査を行った。評価内容は主に学年別及び障害別(13項目)・部位別(16項目)とした。
【倫理的配慮,説明と同意】医療ブースに来た学生に説明と同意を得た上で調査を実施した。
【結果】傷害部位は肩関節が最も多く,次いで膝関節,足関節であった。学年別では,1年生は肩関節,膝関節,手指,2年生では肩関節,膝関節,足関節の順であった。障害別では靭帯損傷が最も多く,次いで筋腱損傷,打撲であった。学年別では,1年生は靭帯損傷,筋腱損傷,脱臼,2年生では靭帯損傷,筋腱損傷,打撲の順であった。肩関節の障害は1年生,2年生とも脱臼が多かった。1年生の筋腱損傷は2年生の3倍程多い結果となった。肩関節の受傷者の経験年数では,1年生は平均経験年数8.6±1.8年,2年生の平均経験年数5.6±2.6年と1年生の経験年数が多い結果となった。1年生では小学生の頃より柔道を始めている。
【考察】宮崎らによれば,高等学校柔道部員では膝関節の受傷が最も多く,次いで肩関節,足関節・足趾の順に傷害が多いと報告している。このことは競技特性として膝・肩・足関節は受傷しやすいことを示している。我々の調査でも,肩関節,膝関節,足関節で傷害部位の半数を占めており,これまでの報告と同様の結果であった。柔道は立ち技の極めにおいて,上肢,特に肩周囲の筋力を要するスポーツである。恩田らによると肩関節の傷害が多いことは,体力的な要因と柔道経験による技術面の要因が大きいと述べている。今回の調査では1年生,2年生ともに肩の脱臼が最も多かった。昨年の報告と異なり,1年生の肩関節傷害の割合が少ない点は,1年生参加者の経験年数が長く,肩周囲の筋力が強くなっている点と技術の向上が影響している可能性がある。また筋腱損傷では1年生は2年生の3倍程多いことは,骨関節・筋の成長段階であり,腱板など肩関節周囲筋が弱い点が多く影響しているのではないかと考える。スポーツ指導において,筋力トレーニングがすすめられる高校生時期での1年間の筋力差は大きく,傷害予防の観点からは,特に1年生の時期には肩周囲の筋力トレーニング・ストレッチを重点的に課すなど,学年別にトレーニングプランを立てることが大切であると考える。
【理学療法学研究としての意義】身体的に成長期で,技術も未熟な時期の傷害特性を知ることは,コンディショニングを通じての傷害予防に有益である。
【方法】対象は2012年ハーベスト杯争奪しらさぎ高等学校柔道錬成大会に参加した,兵庫県内51校,兵庫県外54校,参加人数約700名である。錬成大会では1名1日に10から15試合の練習試合を行なっている。医療ブースに来た生徒102名(1年生40名,2年生62名)対し,主訴・診断・身体所見を含んだコンディショニング記録用紙に医師・看護師又は理学療法士が記入し調査を行った。評価内容は主に学年別及び障害別(13項目)・部位別(16項目)とした。
【倫理的配慮,説明と同意】医療ブースに来た学生に説明と同意を得た上で調査を実施した。
【結果】傷害部位は肩関節が最も多く,次いで膝関節,足関節であった。学年別では,1年生は肩関節,膝関節,手指,2年生では肩関節,膝関節,足関節の順であった。障害別では靭帯損傷が最も多く,次いで筋腱損傷,打撲であった。学年別では,1年生は靭帯損傷,筋腱損傷,脱臼,2年生では靭帯損傷,筋腱損傷,打撲の順であった。肩関節の障害は1年生,2年生とも脱臼が多かった。1年生の筋腱損傷は2年生の3倍程多い結果となった。肩関節の受傷者の経験年数では,1年生は平均経験年数8.6±1.8年,2年生の平均経験年数5.6±2.6年と1年生の経験年数が多い結果となった。1年生では小学生の頃より柔道を始めている。
【考察】宮崎らによれば,高等学校柔道部員では膝関節の受傷が最も多く,次いで肩関節,足関節・足趾の順に傷害が多いと報告している。このことは競技特性として膝・肩・足関節は受傷しやすいことを示している。我々の調査でも,肩関節,膝関節,足関節で傷害部位の半数を占めており,これまでの報告と同様の結果であった。柔道は立ち技の極めにおいて,上肢,特に肩周囲の筋力を要するスポーツである。恩田らによると肩関節の傷害が多いことは,体力的な要因と柔道経験による技術面の要因が大きいと述べている。今回の調査では1年生,2年生ともに肩の脱臼が最も多かった。昨年の報告と異なり,1年生の肩関節傷害の割合が少ない点は,1年生参加者の経験年数が長く,肩周囲の筋力が強くなっている点と技術の向上が影響している可能性がある。また筋腱損傷では1年生は2年生の3倍程多いことは,骨関節・筋の成長段階であり,腱板など肩関節周囲筋が弱い点が多く影響しているのではないかと考える。スポーツ指導において,筋力トレーニングがすすめられる高校生時期での1年間の筋力差は大きく,傷害予防の観点からは,特に1年生の時期には肩周囲の筋力トレーニング・ストレッチを重点的に課すなど,学年別にトレーニングプランを立てることが大切であると考える。
【理学療法学研究としての意義】身体的に成長期で,技術も未熟な時期の傷害特性を知ることは,コンディショニングを通じての傷害予防に有益である。