[1473] めまい患者に対する前庭リハビリテーションの介入効果および経時的変化の検討
キーワード:めまい, 前庭機能, 重心動揺
【はじめに,目的】めまいの原因には中枢性,末梢性,心因性などさまざまな要因があり,理学療法施行中にめまいを訴える患者は多い。しかし,わが国においてはリハビリテーションの対象としての認識が低く,普及していないのが現状である。前庭リハビリテーションは1940年代に最初に報告され,それ以降,諸外国では前庭機能障害患者に対するリハビリテーションが積極的に行われている。前庭機能障害は頭位変換によるめまい感やふらつき感などが主症状であり,姿勢保持や歩行能力,さらに日常生活動作に影響を及ぼす。対象となる疾患は良性発作性頭位めまい症,前庭神経炎,聴神経腫瘍摘出後,加齢変化などが挙げられ,バランス機能および固視機能,めまい症状の改善が期待できる。また,前庭機能の回復には適応,慣れ,他の感覚による代償などの要素が関与し,リハビリテーションではこれらの要素を応用して前庭機能障害の主症状であるめまい感とふらつき感を改善させる。諸外国の前庭リハビリテーションの手法はさまざまであり,理学療法士による介入や小冊子による介入,認知行動療法を合わせた介入などが報告されている。介入期間は1ヶ月から6ヶ月と幅広く,頻度に関しても一貫した報告はなされていない。そこで今回,我々はめまい症と診断された外来患者を対象にした個別リハビリテーションを施行し,その介入効果と経時的変化を検討したので報告する。
【方法】対象は,2011年7月から2013年11月までに当院へ通院されためまい症患者13名(年齢:68.9±12.2歳)である。前庭リハビリテーションの介入方法は理学療法士が40分間個別リハビリテーションを施行し,さらにホームエクササイズの指導を併用した。介入期間は6ヶ月とし,評価時期は介入前,介入後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月で施行した。評価項目は重心動揺検査と日常生活のめまい,ふらつき感の自己評価表(以下DHI)の2項目とした。重心動揺検査はBalancemaster(Neurocom社製)を使用し,開眼,閉眼,固い床面,柔らかい床面を組み合わせた条件1(開眼-固い床面),条件2(閉眼-固い床面),条件3(開眼-柔らかい床面),条件4(閉眼-柔らかい床面)と設定し,各条件にて静止立位時の重心動揺を3回計測した。DHIは25項目の質問形式で,7項目のPhysical,9項目のEmotional,9項目のFunctionalで構成される。患者に質問用紙を渡しセルフで記入させ,0-100スコアで判定する。統計処理には,反復測定による分散分析を使用し,各期間での差を比較した。統計学的有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,倫理審査委員会の承認を得た上で,対象者には研究の趣旨を説明し同意を得るとともに,個人情報の取り扱いには留意するよう配慮した。
【結果】重心動揺(条件4)において介入前と各期間すべてにおいて有意差が認められ,DHIは介入前-3ヶ月,介入前-6ヶ月において有意に改善していたものの,介入前-1ヶ月では有意差は認められなかった。さらに重心動揺(条件4),DHIともに1-3ヶ月,3-6ヶ月の間でも有意差は認められなかったもの,13人中10人が介入前-介入後6ヶ月間において改善傾向を示した。また,当院に来院した日数を集計し0-1ヶ月,1-3ヶ月,3-6ヶ月における頻度/月を算出したところ,徐々に減少する傾向であった。
【考察】今回,介入後1ヶ月の時点で重心動揺に有意な改善効果が認められた。Giray.Mらも前庭リハビリテーションの効果は1ヶ月で認められると報告しており,当院においても同様の結果であった。しかし,DHIの介入前-1ヶ月で有意差がなかったことに関しては,DHIの情緒的項目において改善が認められなかったことが影響したと考えられる。また,重心動揺,DHIともに1-3ヶ月と3-6ヶ月の間で有意差がなかったことに加え,初回来院時から6ヶ月の間で来院頻度が減少していたことから,前庭リハビリテーションによってめまいの再発が予防され,介入効果が持続していたことが考えられる。しかし,6ヶ月間の来院頻度を一定にすることで更なる効果が得られた可能性もあるため,今後の検証が必要である。
【理学療法学研究としての意義】めまいに対するリハビリテーションは,わが国においてもニーズが高く,今回の結果より理学療法士による個別リハビリテーションが治療効果を示す重要なものであることが示唆された。また,最新の知見では前庭機能と高齢者の転倒との関連性を報告している研究もあり,めまい症状だけでなく,加齢による前庭機能低下を既存している骨折患者や転倒予備群を対象とした前庭リハビリテーションの効果も期待できる。今後はさらに理学療法分野における地位と発展を目指した取り組みを行う必要があると考えられる。
【方法】対象は,2011年7月から2013年11月までに当院へ通院されためまい症患者13名(年齢:68.9±12.2歳)である。前庭リハビリテーションの介入方法は理学療法士が40分間個別リハビリテーションを施行し,さらにホームエクササイズの指導を併用した。介入期間は6ヶ月とし,評価時期は介入前,介入後1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月で施行した。評価項目は重心動揺検査と日常生活のめまい,ふらつき感の自己評価表(以下DHI)の2項目とした。重心動揺検査はBalancemaster(Neurocom社製)を使用し,開眼,閉眼,固い床面,柔らかい床面を組み合わせた条件1(開眼-固い床面),条件2(閉眼-固い床面),条件3(開眼-柔らかい床面),条件4(閉眼-柔らかい床面)と設定し,各条件にて静止立位時の重心動揺を3回計測した。DHIは25項目の質問形式で,7項目のPhysical,9項目のEmotional,9項目のFunctionalで構成される。患者に質問用紙を渡しセルフで記入させ,0-100スコアで判定する。統計処理には,反復測定による分散分析を使用し,各期間での差を比較した。統計学的有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,倫理審査委員会の承認を得た上で,対象者には研究の趣旨を説明し同意を得るとともに,個人情報の取り扱いには留意するよう配慮した。
【結果】重心動揺(条件4)において介入前と各期間すべてにおいて有意差が認められ,DHIは介入前-3ヶ月,介入前-6ヶ月において有意に改善していたものの,介入前-1ヶ月では有意差は認められなかった。さらに重心動揺(条件4),DHIともに1-3ヶ月,3-6ヶ月の間でも有意差は認められなかったもの,13人中10人が介入前-介入後6ヶ月間において改善傾向を示した。また,当院に来院した日数を集計し0-1ヶ月,1-3ヶ月,3-6ヶ月における頻度/月を算出したところ,徐々に減少する傾向であった。
【考察】今回,介入後1ヶ月の時点で重心動揺に有意な改善効果が認められた。Giray.Mらも前庭リハビリテーションの効果は1ヶ月で認められると報告しており,当院においても同様の結果であった。しかし,DHIの介入前-1ヶ月で有意差がなかったことに関しては,DHIの情緒的項目において改善が認められなかったことが影響したと考えられる。また,重心動揺,DHIともに1-3ヶ月と3-6ヶ月の間で有意差がなかったことに加え,初回来院時から6ヶ月の間で来院頻度が減少していたことから,前庭リハビリテーションによってめまいの再発が予防され,介入効果が持続していたことが考えられる。しかし,6ヶ月間の来院頻度を一定にすることで更なる効果が得られた可能性もあるため,今後の検証が必要である。
【理学療法学研究としての意義】めまいに対するリハビリテーションは,わが国においてもニーズが高く,今回の結果より理学療法士による個別リハビリテーションが治療効果を示す重要なものであることが示唆された。また,最新の知見では前庭機能と高齢者の転倒との関連性を報告している研究もあり,めまい症状だけでなく,加齢による前庭機能低下を既存している骨折患者や転倒予備群を対象とした前庭リハビリテーションの効果も期待できる。今後はさらに理学療法分野における地位と発展を目指した取り組みを行う必要があると考えられる。