[1474] 脳卒中患者に対する臥位での体幹機能評価法の信頼性と妥当性の検討
Keywords:脳卒中, 体幹機能評価, 信頼性
【はじめに,目的】脳卒中患者の予後,特に座位・起居動作,歩行などの基本動作の獲得には体幹機能の改善が重要である。近年,脳卒中片麻痺患者の予後予測を検討した研究でも,予後予測因子として体幹機能を採用していることが多い。しかし,急性期脳卒中患者では,リスク管理や加療に伴う体動制限,障害による機能低下などにより座位保持が困難な症例は少なくないが,現在使用されている体幹機能評価法の多くは座位で行われるものが多く,実施困難なことがある。本研究の目的は,臥位での評価が可能な体幹機能評価法を作成し,その検者内および検者間信頼性,基準関連妥当性を検証することである。
【方法】臥位での体幹機能評価法は,ベッドサイドで評価できること,課題が実施不可能な場合にも評点出来ることを基準に,頸部・体幹・骨盤帯運動機能検査(NTP-stage)や臨床において床上練習で使用する項目を参考に,頭部拳上・肩甲骨拳上・寝返り・側臥位保持・骨盤回旋・両脚ブリッジ・片脚ブリッジ動作の項目とし,左右を含め12項目で,各評点は0-3点とし,合計0-36点の評価法を作成した。点数が高いほど,体幹機能が良好なことを示す。
対象は,入院中の初発脳卒中患者とし,病前の日常生活活動が全介助だった者や加療に安静を要するクモ膜下出血は除外した30名(年齢73.3±9.3歳(平均±標準偏差),男性18名/女性12名,脳梗塞22例/脳出血8例)であった。そのうち,検者内信頼性の検討には17名,検者間信頼性に19名,基準関連妥当性に30名を対象とした。対象者の1回目の評価実施時の罹患日数は平均9.2±8.1日(2~43日)であった。評価者は,経験年数3年目以上の理学療法士9名とし,評価場所は対象者のベッドサイドとした。
信頼性の検討にはtest-retest法を使用し,検者内信頼性は同一者が1日以上間隔をあけて計2回,検者内信頼性は異なる2人の評価者が1日以上間隔をあけて計2回の評価を行い,統計解析には級内相関係数(ICC)(1,1)とICC(2,1),weighted kappa係数を用いた。基準関連妥当性の検討には,臥位での体幹機能評価法と同時にTrunk Control Test(TCT)とFunctional Assessment for Control of Trunk(FACT)を評価し,統計解析にはSpearmanの順位相関係数を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得た上で,対象者もしくはその家族に研究の主旨を説明し,文書での同意を得て実施した。個人情報の保護には十分に配慮することを説明した。
【結果】臥位での体幹機能評価法の評価に要した時間は,平均349.9±221.1秒であった。評価にあたり,医師からリハビリテーションの中止指示がある場合や評価を行うことが症例に対して負担であると判断される場合は中止すると定めたが,評価が中止された対象者はおらず,評価中の転倒転落やバイタルサインの変動などの発生も認められなかった。
検者内・検者間信頼性ともに,評価項目ごとのweighted kappa係数は0.92~1.00と良好な値を示した。また,臥位での体幹機能評価法の合計点について,ICC(1,1)は0.95,ICC(2,1)は0.96とともに高値であった。各項目とTCTおよびFACTとのSpearmanの順位相関係数は,TCTと0.44~0.88,FACTと0.39~0.86であった。TCT・FACTともに,頭部拳上・肩甲骨拳上(非麻痺側)・側臥位保持(麻痺側)・骨盤回旋(非麻痺側)が中等度の相関(r<0.7)を示し,肩甲骨拳上(麻痺側)・寝返り(麻痺側・非麻痺側)・側臥位保持(非麻痺側)・骨盤回旋(麻痺側)・ブリッジ動作では強い相関(r≧0.7)を示した。また,臥位での体幹機能評価の合計点とTCT合計点,FACT合計点との相関係数は,それぞれ0.90,0.93と強い相関を示した。
【考察】検者内・検者間信頼性の結果,全評価項目でweighted kappa係数が0.9以上の値を示したことから,今回作成した臥位での体幹機能評価法の信頼性が示された。しかし,寝返りや両脚・片脚ブリッジ動作では,検者内および検者間信頼性において2点以上の違いを認めた例もあり,判定基準について,内容の統一を図る必要性が認められた。これらの項目については,動作の開始肢位の明確化,判定基準の修正が必要である。基準関連妥当性について,作成した臥位での体幹機能評価法の合計点とTCTおよびFACT合計点との間に強い相関が得られたことから,体幹機能の評価として十分に使用可能であると判断された。本評価尺度は,TCTやFACTとは異なり,臥位にて評価可能で,さらに比較的短時間に低侵襲に実施可能なことから,発症後早期からの使用が可能である。
【理学療法学研究としての意義】急性期病院での早期介入,在院日数の短縮化が進む中で,早期から体幹機能を把握し,経過を追うことで,予後予測の精度も向上し,急性期からのより質の高い脳卒中リハビリテーションの提供が期待される。
【方法】臥位での体幹機能評価法は,ベッドサイドで評価できること,課題が実施不可能な場合にも評点出来ることを基準に,頸部・体幹・骨盤帯運動機能検査(NTP-stage)や臨床において床上練習で使用する項目を参考に,頭部拳上・肩甲骨拳上・寝返り・側臥位保持・骨盤回旋・両脚ブリッジ・片脚ブリッジ動作の項目とし,左右を含め12項目で,各評点は0-3点とし,合計0-36点の評価法を作成した。点数が高いほど,体幹機能が良好なことを示す。
対象は,入院中の初発脳卒中患者とし,病前の日常生活活動が全介助だった者や加療に安静を要するクモ膜下出血は除外した30名(年齢73.3±9.3歳(平均±標準偏差),男性18名/女性12名,脳梗塞22例/脳出血8例)であった。そのうち,検者内信頼性の検討には17名,検者間信頼性に19名,基準関連妥当性に30名を対象とした。対象者の1回目の評価実施時の罹患日数は平均9.2±8.1日(2~43日)であった。評価者は,経験年数3年目以上の理学療法士9名とし,評価場所は対象者のベッドサイドとした。
信頼性の検討にはtest-retest法を使用し,検者内信頼性は同一者が1日以上間隔をあけて計2回,検者内信頼性は異なる2人の評価者が1日以上間隔をあけて計2回の評価を行い,統計解析には級内相関係数(ICC)(1,1)とICC(2,1),weighted kappa係数を用いた。基準関連妥当性の検討には,臥位での体幹機能評価法と同時にTrunk Control Test(TCT)とFunctional Assessment for Control of Trunk(FACT)を評価し,統計解析にはSpearmanの順位相関係数を用いた。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究は,当院の臨床研究倫理審査委員会の承認を得た上で,対象者もしくはその家族に研究の主旨を説明し,文書での同意を得て実施した。個人情報の保護には十分に配慮することを説明した。
【結果】臥位での体幹機能評価法の評価に要した時間は,平均349.9±221.1秒であった。評価にあたり,医師からリハビリテーションの中止指示がある場合や評価を行うことが症例に対して負担であると判断される場合は中止すると定めたが,評価が中止された対象者はおらず,評価中の転倒転落やバイタルサインの変動などの発生も認められなかった。
検者内・検者間信頼性ともに,評価項目ごとのweighted kappa係数は0.92~1.00と良好な値を示した。また,臥位での体幹機能評価法の合計点について,ICC(1,1)は0.95,ICC(2,1)は0.96とともに高値であった。各項目とTCTおよびFACTとのSpearmanの順位相関係数は,TCTと0.44~0.88,FACTと0.39~0.86であった。TCT・FACTともに,頭部拳上・肩甲骨拳上(非麻痺側)・側臥位保持(麻痺側)・骨盤回旋(非麻痺側)が中等度の相関(r<0.7)を示し,肩甲骨拳上(麻痺側)・寝返り(麻痺側・非麻痺側)・側臥位保持(非麻痺側)・骨盤回旋(麻痺側)・ブリッジ動作では強い相関(r≧0.7)を示した。また,臥位での体幹機能評価の合計点とTCT合計点,FACT合計点との相関係数は,それぞれ0.90,0.93と強い相関を示した。
【考察】検者内・検者間信頼性の結果,全評価項目でweighted kappa係数が0.9以上の値を示したことから,今回作成した臥位での体幹機能評価法の信頼性が示された。しかし,寝返りや両脚・片脚ブリッジ動作では,検者内および検者間信頼性において2点以上の違いを認めた例もあり,判定基準について,内容の統一を図る必要性が認められた。これらの項目については,動作の開始肢位の明確化,判定基準の修正が必要である。基準関連妥当性について,作成した臥位での体幹機能評価法の合計点とTCTおよびFACT合計点との間に強い相関が得られたことから,体幹機能の評価として十分に使用可能であると判断された。本評価尺度は,TCTやFACTとは異なり,臥位にて評価可能で,さらに比較的短時間に低侵襲に実施可能なことから,発症後早期からの使用が可能である。
【理学療法学研究としての意義】急性期病院での早期介入,在院日数の短縮化が進む中で,早期から体幹機能を把握し,経過を追うことで,予後予測の精度も向上し,急性期からのより質の高い脳卒中リハビリテーションの提供が期待される。