[1493] 新鮮脊椎圧迫骨折患者の身体パフォーマンスに関連する要因の検討
Keywords:脊椎圧迫骨折, Timed Up and Go Test, 身体活動量
【はじめに】高齢者に頻発する脊椎圧迫骨折(VCF)に対しては保存的療法が施行されることが多く,薬物療法,装具療法とともに,ADLや身体活動量(以下,活動量)の向上を目指したリハビリテーション(以下,リハ)を進めるのが一般的である。そして,リハの経過も良好なことが多く,実際,Chrischillesら(1991)はVCFにより要介助状態に陥ることは非常に少ないと報告している。一方,VCFが存在するとバランス機能に低下が認められ,他の骨折を受傷しやすくなることが指摘されており,リハにおいてはADLのみならず身体パフォーマンス(以下,パフォーマンス)の向上も必要と考えられる。しかし,VCF患者を対象にパフォーマンスの獲得状況とこれに影響を及ぼす要因について検討した報告は見当たらない。そこで,本研究では,歩行やバランス能力を反映するパフォーマンステストの代表であるTimed Up and Go Test(TUGT)に着目し,この点について検討した。
【方法】対象は,2012年1月から2013年9月までに自宅にてVCFを受傷後,保存的療法が施行され,当院回復期病棟に入棟した患者のうち認知機能に問題がなく,自宅内歩行が自立していた53名(男性13名,女性40名,平均年齢80.7±7.7歳)とした。評価項目は,HDS-R,新規骨折椎体数,既存骨折椎体数,立ち上がり時および歩行時の腰背部痛のNRS,FIM,TUGT,活動量とした。なお,新規骨折と既存骨折の判別にはMRI画像を用い,既存骨折は日本骨代謝学会が示した診断基準によって判別した。活動量は,対象者にライフコーダ(Suzuken)を入棟時と退棟時に2日間装着してもらい,装着期間中の平均歩数と1~3,4~9Metsの各運動強度における活動時間を算出した。分析にあたっては,HDS-R,腰背部痛のNRS,FIM,TUGT,活動量を入棟時および退棟時で比較した。また,退棟時のTUGTが転倒予測のカットオフ値である13.5秒を下回ったものを転倒リスクの低い(LR)群,上回ったものを転倒リスクの高い(HR)群とし,退棟時の各評価項目を2群間で比較した。統計処理には対応のあるt検定,Wilcoxonの符号付順位和検定,対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮】本研究は当院臨床研究倫理委員会において承認を受け,当院が定める個人情報の取り扱い指針に基づき実施した。
【結果】今回,受傷から入棟までの平均日数は13.6±6.8日,平均在棟日数は48.1±18.6日であった。入棟時と退棟時で各評価項目を比較すると,HDS-R(入棟時:24.7±4.1点,退棟時:25.8±3.4点),腰背部痛のNRS(立ち上がり;入棟時:3.8±3.3,退棟時:1.0±2.0,歩行;入棟時:3.0±2.7,退棟時:1.3±2.0),FIM(入棟時:95.7±17.1点,退棟時:119.0±5.3点),TUGT(入棟時:22.6±10.3秒,退棟時:14.3±5.7秒),歩数(入棟時:951.6±840.6歩,退棟時:2010.0±1357.6歩),活動時間(1~3Mets;入棟時:671.8±551.2秒,退棟時:1315.9±823.3秒,4~9Mets;入棟時:27.7±87.4秒,退棟時:93.5±185.2秒)の全ての項目において有意な改善が認められた。次に,退棟時においてLR群(26例)とHR群(27例)を比較すると,年齢,HDS-R,新規骨折椎体数,既存骨折椎体数,腰背部痛のNRSは両群間に有意差を認めなかった。一方,FIMはLR群が121.8±4.9点,HR群が116.3±4.2点であり,HR群が有意に低値を示した。また,歩数は,LR群が2686.0±1347.1歩,HR群が1496.2±1142.0歩であり,HR群が有意に低値を示した。さらに,1~3Metsおよび4~9Metsの活動時間はLR群がそれぞれ,1711.7±703.4秒,165.6±253.8秒,HR群がそれぞれ,1015.1±790.6秒,38.7±76.8秒であり,両活動時間ともHR群が有意に低値を示した。
【考察】入棟時と退棟時の比較から,今回対象としたVCF患者において,パフォーマンスや活動量の向上が認められ,修正自立以上のADL(FIM:108点以上)が獲得されていた。したがって,Chrischillesらの報告と同様,VCFを受傷してもリハを行うことで基本的ADLに介助を要さない状態まで改善しているといえる。次に,LR群とHR群の比較から,骨折椎体数,腰背部痛の程度はパフォーマンスに影響を及ぼさないことが示唆された。また,HR群のFIMはLR群に比べて有意に低値であったが,116.3点と基本的ADLに支障はないと考えられた。一方,活動量はHR群がLR群に比べ有意に少なく,パフォーマンスとの関連が強いことが示唆された。以上のことから,VCF患者のパフォーマンスの向上にあたっては,腰背部痛の軽減やADLの再獲得はもちろん,活動量を向上させるアプローチが特に重要になると推察される。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,VCF患者のパフォーマンスの向上に活動量の向上が重要であることを示しており,リハのあり方を考えるうえで意義深いデータと考える。
【方法】対象は,2012年1月から2013年9月までに自宅にてVCFを受傷後,保存的療法が施行され,当院回復期病棟に入棟した患者のうち認知機能に問題がなく,自宅内歩行が自立していた53名(男性13名,女性40名,平均年齢80.7±7.7歳)とした。評価項目は,HDS-R,新規骨折椎体数,既存骨折椎体数,立ち上がり時および歩行時の腰背部痛のNRS,FIM,TUGT,活動量とした。なお,新規骨折と既存骨折の判別にはMRI画像を用い,既存骨折は日本骨代謝学会が示した診断基準によって判別した。活動量は,対象者にライフコーダ(Suzuken)を入棟時と退棟時に2日間装着してもらい,装着期間中の平均歩数と1~3,4~9Metsの各運動強度における活動時間を算出した。分析にあたっては,HDS-R,腰背部痛のNRS,FIM,TUGT,活動量を入棟時および退棟時で比較した。また,退棟時のTUGTが転倒予測のカットオフ値である13.5秒を下回ったものを転倒リスクの低い(LR)群,上回ったものを転倒リスクの高い(HR)群とし,退棟時の各評価項目を2群間で比較した。統計処理には対応のあるt検定,Wilcoxonの符号付順位和検定,対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を用い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮】本研究は当院臨床研究倫理委員会において承認を受け,当院が定める個人情報の取り扱い指針に基づき実施した。
【結果】今回,受傷から入棟までの平均日数は13.6±6.8日,平均在棟日数は48.1±18.6日であった。入棟時と退棟時で各評価項目を比較すると,HDS-R(入棟時:24.7±4.1点,退棟時:25.8±3.4点),腰背部痛のNRS(立ち上がり;入棟時:3.8±3.3,退棟時:1.0±2.0,歩行;入棟時:3.0±2.7,退棟時:1.3±2.0),FIM(入棟時:95.7±17.1点,退棟時:119.0±5.3点),TUGT(入棟時:22.6±10.3秒,退棟時:14.3±5.7秒),歩数(入棟時:951.6±840.6歩,退棟時:2010.0±1357.6歩),活動時間(1~3Mets;入棟時:671.8±551.2秒,退棟時:1315.9±823.3秒,4~9Mets;入棟時:27.7±87.4秒,退棟時:93.5±185.2秒)の全ての項目において有意な改善が認められた。次に,退棟時においてLR群(26例)とHR群(27例)を比較すると,年齢,HDS-R,新規骨折椎体数,既存骨折椎体数,腰背部痛のNRSは両群間に有意差を認めなかった。一方,FIMはLR群が121.8±4.9点,HR群が116.3±4.2点であり,HR群が有意に低値を示した。また,歩数は,LR群が2686.0±1347.1歩,HR群が1496.2±1142.0歩であり,HR群が有意に低値を示した。さらに,1~3Metsおよび4~9Metsの活動時間はLR群がそれぞれ,1711.7±703.4秒,165.6±253.8秒,HR群がそれぞれ,1015.1±790.6秒,38.7±76.8秒であり,両活動時間ともHR群が有意に低値を示した。
【考察】入棟時と退棟時の比較から,今回対象としたVCF患者において,パフォーマンスや活動量の向上が認められ,修正自立以上のADL(FIM:108点以上)が獲得されていた。したがって,Chrischillesらの報告と同様,VCFを受傷してもリハを行うことで基本的ADLに介助を要さない状態まで改善しているといえる。次に,LR群とHR群の比較から,骨折椎体数,腰背部痛の程度はパフォーマンスに影響を及ぼさないことが示唆された。また,HR群のFIMはLR群に比べて有意に低値であったが,116.3点と基本的ADLに支障はないと考えられた。一方,活動量はHR群がLR群に比べ有意に少なく,パフォーマンスとの関連が強いことが示唆された。以上のことから,VCF患者のパフォーマンスの向上にあたっては,腰背部痛の軽減やADLの再獲得はもちろん,活動量を向上させるアプローチが特に重要になると推察される。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,VCF患者のパフォーマンスの向上に活動量の向上が重要であることを示しており,リハのあり方を考えるうえで意義深いデータと考える。