[1494] 当院における足関節靭帯損傷の復帰傾向
キーワード:足関節捻挫, 足関節機能テスト, 復帰時期
【はじめに,目的】
足関節靭帯損傷はスポーツやレクリエーションで多く発生する外傷である。足関節外傷は全スポーツ外傷の10-30%を占め,足関節靭帯損傷は足関節外傷の70%以上を占める。そのため,足関節靭帯損傷は全スポーツ外傷からみても非常に発生頻度の高い外傷であり,スポーツ現場において頻繁に遭遇する外傷である。選手が怪我をした後,我々は復帰目標を設定する必要がある。また,団体競技であればチーム編成,個人競技でも出場試合の再設定が必要となる。そのため,初診時の所見からいつ頃復帰可能かを予測できることは我々医療従事者だけではなくチーム,選手にとっても非常に有用な情報になり得る。臨床において経験的に復帰時期を予測可能な場合もあるが,数値としてそれを提示したものは我々が渉猟し得た限りみられない。
そこで今回,当院で行っている初診時の足関節機能テスト(Ankle Functional Test:AFT)とジョグ開始時期,練習完全復帰時期の関係,およびAFTにおけるレベル別のジョグ開始時期と練習完全復帰時期の相関関係を分析した。
【方法】
対象は,20011年1月から2013年9月までに当院を受診し足関節靭帯損傷と診断され足関節機能テストを行った9歳から23歳までの561件,そのうち最後までフォロー可能であった251件とした。AFTは,片脚立ち(One Leg Standing:OLS),片脚カーフレイズ(One Leg Calf raise:OLC),片脚ジャンプ(One Leg Jump:OLJ)を行った。どのレベルのAFTまで可能であったかにより対象を全て不可群(65件),OLS群(81件),OLC群(41件),OLJ群(64件)の4群に分類した。ジョグ開始時期は片脚ジャンプ可能となった時点,練習完全復帰時期は疼痛の有無に関わらず全て練習を行えた時点とした。単位は週(W)とした。
統計学的検定は,各群間のAFT,ジョグ開始時期,練習復帰時期の検討は一元配置分散分析法を用い,多重比較検定はTukey-Kramer法を用いた。ジョグ開始時期と練習完全復帰時期の関係にはスピアマン順位相関係数検定を用いた。それぞれ有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
当院倫理委員会の承認を得,各被験者には本研究の趣旨と方法について説明し同意のうえ実施した。
【結果】
ジョグ開始時期の平均期間(平均±標準偏差)は,全て不可群,OLS群,OLC群,OLS群それぞれで1.9±1.2,1.3±1.0,1.0±0.6,0.3±0.5であった。OLS群とOLC群では有意な差はなかったが,他の全ての群間で有意な差を認めた。練習完全復帰時期の平均期間は,全て不可群,OLS群,OLC群,OLS群それぞれで3.8±2.0,2.6±1.4,2.5±1.7,1.6±1.0であった。練習完全復帰時期においてもOLS群とOLC群では有意な差はなかったが,他の全ての群間で有意な差を認めた。
AFTレベル別のジョグ開始時期と練習完全復帰時期の相関関係は,全て不可群でr=0.59(P<0.01),OLS群でr=0.56(P<0.01),OLC群でr=0.62(P<0.01),OLJ群でr=0.19(P=0.41)であった。OLJ群を除く全ての群でジョグ開始時期と練習完全復帰時期の間に有意な正の相関を認めた。
【考察】
ジョグ開始時期は,OLS群とOLC群の間でのみ差を認めなかった。また,練習完全復帰時期においても同様にOLS群とOLC群の間でのみ差を認めなかった。よって,OLSとOLCは同レベルの足関節機能をテストしていることが分かった。そのため,足関節捻挫後のAFTテストとしては,全て不可,OLS,OLJの3つをテストすることである程度の復帰時期を予測できることが示された。
AFTレベル別のジョグ開始時期と練習完全復帰時期の相関関係は,OLJ群でのみ有意な相関を認めなかった。これは,ジャンプができる程度の軽傷の足関節靭帯損傷でありながら練習完全復帰に時間を要する選手がいることを表していると考えられた。この理由として,軽傷の靭帯損傷であるが故に受傷後も練習を部分的に行っており,結果として練習完全復帰するのに時間を要してしまっていると考えられた。初診時に片脚ジャンプが可能な選手の中にも練習完全復帰に時間を要する選手がおり,ジョグから練習部分復帰させる際の指標として片脚ジャンプよりもより高いレベルの足関節機能を反映するテストを行う必要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
ジョグから練習部分復帰させる際の足関節機能を評価するテストの必要性が示された。また,初診時の足関節機能テストの結果から,受傷後の復帰時期を設定する基準となる値を提示することができた。
足関節靭帯損傷はスポーツやレクリエーションで多く発生する外傷である。足関節外傷は全スポーツ外傷の10-30%を占め,足関節靭帯損傷は足関節外傷の70%以上を占める。そのため,足関節靭帯損傷は全スポーツ外傷からみても非常に発生頻度の高い外傷であり,スポーツ現場において頻繁に遭遇する外傷である。選手が怪我をした後,我々は復帰目標を設定する必要がある。また,団体競技であればチーム編成,個人競技でも出場試合の再設定が必要となる。そのため,初診時の所見からいつ頃復帰可能かを予測できることは我々医療従事者だけではなくチーム,選手にとっても非常に有用な情報になり得る。臨床において経験的に復帰時期を予測可能な場合もあるが,数値としてそれを提示したものは我々が渉猟し得た限りみられない。
そこで今回,当院で行っている初診時の足関節機能テスト(Ankle Functional Test:AFT)とジョグ開始時期,練習完全復帰時期の関係,およびAFTにおけるレベル別のジョグ開始時期と練習完全復帰時期の相関関係を分析した。
【方法】
対象は,20011年1月から2013年9月までに当院を受診し足関節靭帯損傷と診断され足関節機能テストを行った9歳から23歳までの561件,そのうち最後までフォロー可能であった251件とした。AFTは,片脚立ち(One Leg Standing:OLS),片脚カーフレイズ(One Leg Calf raise:OLC),片脚ジャンプ(One Leg Jump:OLJ)を行った。どのレベルのAFTまで可能であったかにより対象を全て不可群(65件),OLS群(81件),OLC群(41件),OLJ群(64件)の4群に分類した。ジョグ開始時期は片脚ジャンプ可能となった時点,練習完全復帰時期は疼痛の有無に関わらず全て練習を行えた時点とした。単位は週(W)とした。
統計学的検定は,各群間のAFT,ジョグ開始時期,練習復帰時期の検討は一元配置分散分析法を用い,多重比較検定はTukey-Kramer法を用いた。ジョグ開始時期と練習完全復帰時期の関係にはスピアマン順位相関係数検定を用いた。それぞれ有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
当院倫理委員会の承認を得,各被験者には本研究の趣旨と方法について説明し同意のうえ実施した。
【結果】
ジョグ開始時期の平均期間(平均±標準偏差)は,全て不可群,OLS群,OLC群,OLS群それぞれで1.9±1.2,1.3±1.0,1.0±0.6,0.3±0.5であった。OLS群とOLC群では有意な差はなかったが,他の全ての群間で有意な差を認めた。練習完全復帰時期の平均期間は,全て不可群,OLS群,OLC群,OLS群それぞれで3.8±2.0,2.6±1.4,2.5±1.7,1.6±1.0であった。練習完全復帰時期においてもOLS群とOLC群では有意な差はなかったが,他の全ての群間で有意な差を認めた。
AFTレベル別のジョグ開始時期と練習完全復帰時期の相関関係は,全て不可群でr=0.59(P<0.01),OLS群でr=0.56(P<0.01),OLC群でr=0.62(P<0.01),OLJ群でr=0.19(P=0.41)であった。OLJ群を除く全ての群でジョグ開始時期と練習完全復帰時期の間に有意な正の相関を認めた。
【考察】
ジョグ開始時期は,OLS群とOLC群の間でのみ差を認めなかった。また,練習完全復帰時期においても同様にOLS群とOLC群の間でのみ差を認めなかった。よって,OLSとOLCは同レベルの足関節機能をテストしていることが分かった。そのため,足関節捻挫後のAFTテストとしては,全て不可,OLS,OLJの3つをテストすることである程度の復帰時期を予測できることが示された。
AFTレベル別のジョグ開始時期と練習完全復帰時期の相関関係は,OLJ群でのみ有意な相関を認めなかった。これは,ジャンプができる程度の軽傷の足関節靭帯損傷でありながら練習完全復帰に時間を要する選手がいることを表していると考えられた。この理由として,軽傷の靭帯損傷であるが故に受傷後も練習を部分的に行っており,結果として練習完全復帰するのに時間を要してしまっていると考えられた。初診時に片脚ジャンプが可能な選手の中にも練習完全復帰に時間を要する選手がおり,ジョグから練習部分復帰させる際の指標として片脚ジャンプよりもより高いレベルの足関節機能を反映するテストを行う必要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
ジョグから練習部分復帰させる際の足関節機能を評価するテストの必要性が示された。また,初診時の足関節機能テストの結果から,受傷後の復帰時期を設定する基準となる値を提示することができた。