[1498] 当院における軟性装具を使用したアキレス腱断裂術後の早期リハビリテーション
Keywords:アキレス腱断裂術後, 軟性装具, 足底圧
【はじめに,目的】
アキレス腱断裂後の機能的装具療法はリハビリテーション(以下リハビリ)の進行を円滑にする。なかでも早期荷重,早期可動を基本とするリハビリを行う際,機能的装具は欠かすことができない。そこで我々はアキレス腱断裂用軟性装具を考案・作成し,早期リハビリに合わせて臨床で使用している。今回,軟性装具を使用した早期リハビリが順調な機能回復に対し有用であることを足底圧分析で証明し報告する。
【方法】
対象は当院で腱縫合術を施行したアキレス腱断裂術後患者21名(男性14名,女性7名)とした。平均年齢41.52±14.01歳,平均体重66.76±12.46kgであった。当院の術後プロトコルは術後1週で軟性装具を装着し松葉杖歩行開始,術後3週で踵補高なしでの独歩獲得,術後6週で装具除去としている。足底圧の測定項目は歩行,片脚踵上げ,片脚Hoppingの3項目とし,術後3ヶ月時と6ヶ月時で足底圧分布システムF-scanII(ニッタ株式会社製)を使用して計測した。分析は前足部と踵部のピーク荷重値を算出し,術後3ヶ月時と術後6ヶ月時の患健側間でそれぞれ比較検討を行った。統計学的検討は対応のない差の検定を用い,有意水準は5%とした。また患者の自覚的評価としてAchilles Tendon Total Rupture Score(以下ATRS)を用い,点数化した。ATRSは術後3ヶ月時と術後6ヶ月時で,対応のある差の検定を用い比較検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究を実施するにあたり当院倫理委員会の承認と,各患者へ研究目的や方法を十分に説明し同意を得た。
【結果】
歩行時のピーク荷重値は術後3ヶ月時で健側/患側の順に前足部で79.35±21.69kg/64.73±12.07kg,踵部で63.30±16.26kg/71.87±15.83kgであった。術後6ヶ月では前足部は79.94±20.74kg/75.28±17.32kg,踵部は69.80±16.38kg/72.36±17.32kgであった。片脚踵上げのピーク荷重値は術後3ヶ月で前足部は102.65±36.80kg/73.83±19.33kg,踵部は36.80±45.22kg/42.37±21.20kgであった。術後6ヶ月では前足部は97.73±36.23kg/88.30±25.15kg,踵部は28.82±20.78kg/39.40±25.32kgであった。Hoppingのピーク荷重値は術後3ヶ月で前足部は189.97±57.06kg/101.62±48.76kg,踵部は17.40±23.04kg/51.63±41.13kgであった。術後6ヶ月では前足部は189.72±65.97kg/149.13±60.64kg,踵部は21.28±32.75kg/37.36±39.92kgであった。前足部は術後3ヶ月時では歩行,片脚踵上げ,Hoppingの全項目で健側に対して患側は有意に低値を示した。術後6ヶ月時ではHoppingのみ有意に低値を示した。また踵部は術後3ヶ月時ではHoppingのみ健側に対して患側は有意に高値を示したが,術後6ヶ月時では全項目の患健側間で有意差を認めなかった。ATRSは100点満点中,術後3ヶ月で66.43±15.71点,術後6ヶ月で81.95±12.14点であり,術後6ヶ月で有意に高値を示した。
【考察】
術後3ヶ月では歩行,片脚踵上げ,Hoppingのいずれの運動においても,アキレス腱断裂後の足底圧に特徴的な,前足部荷重低下と踵荷重増加を認めた。術後6ヶ月になると歩行と片脚踵上げの前足部ピーク荷重値は患健差がないまでに回復したが,Hoppingのような筋腱が,強く伸張や収縮を伴う負荷の高い運動では異常足底圧が残存していた。しかし6ヶ月時点のHoppingでは,踵荷重は軽減し,前足部ピーク荷重値も患健比80%程度まで回復しており,今後底屈筋力や修復腱の粘弾性の回復により,残存している異常足底圧はさらに改善する可能性があると考えられた。また,ATRSによる患者の自覚的評価は術後3ヶ月から6ヶ月にかけて改善を認めた。異常足底圧の改善に合わせて,患者自身も機能回復を自覚することができていた。今後は症例数を増やすとともに,フォロー期間を延長して術後中期・長期での臨床成績を報告していく予定である。なお,本研究の対象患者は,全例片脚踵上げ,ジョギングが可能となった術後3ヶ月でリハビリの通院を終了した。再断裂例は認めなかった。
【理学療法学研究としての意義】
軟性装具を使用したアキレス腱断裂術後の早期リハビリは,順調な機能回復に十分寄与すると考えられる。
アキレス腱断裂後の機能的装具療法はリハビリテーション(以下リハビリ)の進行を円滑にする。なかでも早期荷重,早期可動を基本とするリハビリを行う際,機能的装具は欠かすことができない。そこで我々はアキレス腱断裂用軟性装具を考案・作成し,早期リハビリに合わせて臨床で使用している。今回,軟性装具を使用した早期リハビリが順調な機能回復に対し有用であることを足底圧分析で証明し報告する。
【方法】
対象は当院で腱縫合術を施行したアキレス腱断裂術後患者21名(男性14名,女性7名)とした。平均年齢41.52±14.01歳,平均体重66.76±12.46kgであった。当院の術後プロトコルは術後1週で軟性装具を装着し松葉杖歩行開始,術後3週で踵補高なしでの独歩獲得,術後6週で装具除去としている。足底圧の測定項目は歩行,片脚踵上げ,片脚Hoppingの3項目とし,術後3ヶ月時と6ヶ月時で足底圧分布システムF-scanII(ニッタ株式会社製)を使用して計測した。分析は前足部と踵部のピーク荷重値を算出し,術後3ヶ月時と術後6ヶ月時の患健側間でそれぞれ比較検討を行った。統計学的検討は対応のない差の検定を用い,有意水準は5%とした。また患者の自覚的評価としてAchilles Tendon Total Rupture Score(以下ATRS)を用い,点数化した。ATRSは術後3ヶ月時と術後6ヶ月時で,対応のある差の検定を用い比較検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究を実施するにあたり当院倫理委員会の承認と,各患者へ研究目的や方法を十分に説明し同意を得た。
【結果】
歩行時のピーク荷重値は術後3ヶ月時で健側/患側の順に前足部で79.35±21.69kg/64.73±12.07kg,踵部で63.30±16.26kg/71.87±15.83kgであった。術後6ヶ月では前足部は79.94±20.74kg/75.28±17.32kg,踵部は69.80±16.38kg/72.36±17.32kgであった。片脚踵上げのピーク荷重値は術後3ヶ月で前足部は102.65±36.80kg/73.83±19.33kg,踵部は36.80±45.22kg/42.37±21.20kgであった。術後6ヶ月では前足部は97.73±36.23kg/88.30±25.15kg,踵部は28.82±20.78kg/39.40±25.32kgであった。Hoppingのピーク荷重値は術後3ヶ月で前足部は189.97±57.06kg/101.62±48.76kg,踵部は17.40±23.04kg/51.63±41.13kgであった。術後6ヶ月では前足部は189.72±65.97kg/149.13±60.64kg,踵部は21.28±32.75kg/37.36±39.92kgであった。前足部は術後3ヶ月時では歩行,片脚踵上げ,Hoppingの全項目で健側に対して患側は有意に低値を示した。術後6ヶ月時ではHoppingのみ有意に低値を示した。また踵部は術後3ヶ月時ではHoppingのみ健側に対して患側は有意に高値を示したが,術後6ヶ月時では全項目の患健側間で有意差を認めなかった。ATRSは100点満点中,術後3ヶ月で66.43±15.71点,術後6ヶ月で81.95±12.14点であり,術後6ヶ月で有意に高値を示した。
【考察】
術後3ヶ月では歩行,片脚踵上げ,Hoppingのいずれの運動においても,アキレス腱断裂後の足底圧に特徴的な,前足部荷重低下と踵荷重増加を認めた。術後6ヶ月になると歩行と片脚踵上げの前足部ピーク荷重値は患健差がないまでに回復したが,Hoppingのような筋腱が,強く伸張や収縮を伴う負荷の高い運動では異常足底圧が残存していた。しかし6ヶ月時点のHoppingでは,踵荷重は軽減し,前足部ピーク荷重値も患健比80%程度まで回復しており,今後底屈筋力や修復腱の粘弾性の回復により,残存している異常足底圧はさらに改善する可能性があると考えられた。また,ATRSによる患者の自覚的評価は術後3ヶ月から6ヶ月にかけて改善を認めた。異常足底圧の改善に合わせて,患者自身も機能回復を自覚することができていた。今後は症例数を増やすとともに,フォロー期間を延長して術後中期・長期での臨床成績を報告していく予定である。なお,本研究の対象患者は,全例片脚踵上げ,ジョギングが可能となった術後3ヶ月でリハビリの通院を終了した。再断裂例は認めなかった。
【理学療法学研究としての意義】
軟性装具を使用したアキレス腱断裂術後の早期リハビリは,順調な機能回復に十分寄与すると考えられる。