第49回日本理学療法学術大会

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人体構造・機能情報学8

2014年6月1日(日) 11:20 〜 12:10 ポスター会場 (基礎)

座長:齋藤昭彦(杏林大学保健学部理学療法学科)

基礎 ポスター

[1501] 下肢変形性関節症患者における足部形態の特徴

冬部拓海1, 粟野宏志1, 土居健次朗1, 遠藤辰明1, 河原常郎1, 大森茂樹1, 倉林準2, 門馬博2, 八並光信2 (1.医療法人社団鎮誠会, 2.杏林大学)

キーワード:足部形態, 変形性股関節症, 変形性膝関節症

【はじめに,目的】
足部形態は,ある意味で生活史を示しており,性別,年齢,生活様式,疾病の既往は,足部形態に表れると考えられた。中でも,疾病の既往は,活動様式や活動量,荷重量などを変化させ,足部形態に大きな特徴を与えるものと考えられた。足部形態は,母趾への注目から近年内反小趾の検討もされるようになった。本報告では,足部形態に影響を与えることが多い下肢変形性関節症の股関節,膝関節に着目した。本研究は変形性股関節症,変形性膝関節症患者の足部形態の特徴を抽出することで,病態と機能を明らかにすることを目的とした。
【方法】
対象は当院で変形性股関節症(H群)と診断された9名13肢(男1名,女8名,65.7歳±12歳),変形性膝関節症(K群)と診断された33名56肢とした。(男6名,女27名,64.2歳±12歳),コントロール群は健常成人(N群)30名60肢(男28名,女2名,26歳±5歳)とした。
計測装置はINFOOT USB Standard type(型番IFU-S-01,I-Ware Laboratory社製)を用いた。計測項目は①インステップ囲最高点高,②第1趾側角度,③第5趾側角度,④舟状骨点高,⑤かかとの傾斜角度とした。各項目は非荷重位(座位)と荷重位(立位)で検証した。解析方法は上記計測項目の各群間差の有無を二元配置分散分析にて検証し,多重比較はBonferroni法を用いた。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
所属施設における倫理委員会の許可を得た。対象には,ヘルシンキ宣言をもとに,保護・権利の優先,参加・中止の自由,研究内容,身体への影響などを口頭および文書にて説明し同意が得られた者のみを対象に計測を行った。
【結果】
1)非荷重位による検討インステップ最高点高はH群(62.7±3.35),K群(63.13±5.41),N群(67.51±4.13)でH群とN群,K群とN群に有意差を認めた。(P<0.05)舟状骨点高はH群(41.61±5.36),K群(42.91±6.92),N群(48.12±4.96)でH群とN群,K群とN群に有意差を認めた。(P<0.05)2)荷重位による検討第1趾側角度はH群(13.6±9.01),K群(8.68±7.51),N群(10.92±3.52)でH群とK群,H群とN群,K群とN群に有意差を認めた。(P<0.05)舟状骨点高はH群(38.11±6.01),K群(39.79±6.56),N群(44.33±6.27)でH群とN群,K群とN群に有意差を認めた。(P<0.05)踵骨傾斜角度はH群(3.29±1.79),K群(-0.13±3.64),N群(3.10±2.88)でH群とK群,K群とN群に有意差を認めた。(P<0.05)
【考察】
本研究は変形性股関節症患者と変形性膝関節症患者の足部形態の特徴を抽出することを目的とした。今回,検討した足部形態は第一趾側角度と第5趾側角度が前足部,インステップ高と舟状骨点高が中足部,踵骨傾斜角度が後足部を反映していた。また,足部形態は荷重により変化を呈することから,非荷重位の場合と荷重位の場合でそれぞれ検討した。非荷重位では変形性疾患群においてN群と比較して中足部のパラメータが低値を示した。荷重位では中足部の差に加え,後足部と前足部においても変形性疾患群とN群で有意差が認められた。特に踵傾斜角と第一趾側角度においてはH群とK群の疾患群同士での間で有意な差が見られた。踵骨と足部第一列の運動は運動連鎖による関係が言われており,踵骨回内は外反母趾のリスクとなる。変形性膝関節症患者の多くは膝関節内反変形を呈していたため,踵骨傾斜が他群と比較し回外傾向にあった。それに伴い,第一趾側角度は他群と比較し低値を示したと考えた。榎本らは外反母趾角度と変形性膝関節症の重症度が軽度の場合はN群との有意差な差はなく,中等度以上の場合はN群と比較し有意に高値を示すと述べた。本報告は重症度の分類はしていないため,その点では同様の結果となった。今後は重症度の検討も含め,病態と足部形態との詳細な関係性を検証する予定である。
【理学療法学研究としての意義】
下肢変形は長期に渡って加わるストレスにより誘発されると考えられる。足部は唯一地面と直接接するため,荷重下において膝関節や股関節は足部の影響を受ける。今回,変形性股関節症と変形性膝関節症を呈した患者の足部形態に違いがあることを見出すことができた。これは,それぞれの変形性疾患予防や治療に対して足部へのアプローチが有効であることが示唆された。