[1502] 大腿骨頭壊死に対しての自己骨髄由来間葉系幹細胞を用いた再生医療治療後にリハビリテーションを施行した一事例
Keywords:大腿骨頭壊死, リハビリテーション, 再生医療
【はじめに,目的】我が国の再生医療は現在各方面で積極的に検討され,数々の臨床試験報告も目にするようになった。難病を有する患者やさまざまな障害を有する障害者にとって,再生医療は自らの今後の人生を左右する取り組みであり,その期待も大変大きい。こうした時代背景の中で今後は理学療法士が再生医療患者のリハビリテーション(リハ)に積極的に関わる時代は遠い未来ではない。今回,臨床試験「大腿骨頭無腐性壊死患者に対する骨髄間葉系幹細胞を用いた骨再生治療の検討」を実際に施行された症例を担当し,リハアプローチの中で,再生医療における理学療法(PT)の必要性を認識するとともに若干の知見を得る事ができたので報告する。
【方法】患者は20代の男性でBody Mass Indexは18.3であった。治療前は患側股関節に疼痛を認め,杖を常用し,疼痛のため就職が困難であった。大腿骨頭壊死症の病期は厚生労働省素案X線グレードstage3Aであり,自己骨随由来間葉系幹細胞とベータリン酸三カルシウムを血管柄付き腸骨と共に移植術を施行された。術後1ヶ月は急性期リハを実施し,回復期病院に転院後,2ヶ月間回復期リハを実施し,退院後は2ヶ月の外来リハを実施した。術側荷重は術後6週間までは完全免荷とし,1/3荷重後は2週毎に荷重量を増加し,術後12週で全荷重とした。術側の関節可動域(ROM)エクササイズは術後2週より開始した。術側の筋力強化は術後6週から実施した。理学療法(PT)評価は,運動機能として筋力はIsoForce GT-330(OG技研社製)を用いて股関節伸展,屈曲,外転及び膝関節伸展,屈曲を測定し,ROMは股関節屈曲,伸展,外転,外旋を測定した。大腿周径は膝裂隙から15cmを計測し,疼痛はNumerical Rating Scale(NRS)を用いた。複合運動機能としてTimed up and go test(TUG),日常生活活動の指標はFunctional Independence Measure(FIM)を用いた。評価は術前及び術後1年で行った。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者へ本研究の目的と方法,個人情報の保護について十分説明を行い,同意を得て所属施設の倫理委員会に承諾を得た後に実施した。
【結果】筋力は股関節伸展(0.81→1.71Nm/kg),屈曲(2.19→2.11 Nm/kg),外転(1.61→1.82 Nm/kg),及び膝関節伸展(4.57→4.68 Nm/kg),屈曲(1.97→2.57 Nm/kg)と全てにおいて改善を示し,ROMは股関節屈曲が110度から120度と改善した。TUGは4.87秒が4.31秒に,大腿周径は39.0cmが38.5cmに,NRSは6から0に,FIMは102点が126点に改善した。股関節の荷重時痛は術後3ヵ月で消失し,杖の使用を必要とせず,走行も可能となった。本症例は外来リハビリテーション終了後に某大学の理学療法学科に再入学し,卒後は臨床現場で理学療法士として活躍している。
【考察】弓削は,再生医療とは失われた身体の細胞・組織・臓器の再生や機能回復を図る根治療法であると述べている。この言葉から解釈をすると,再生医療においては二つの段階が必要と考えられる。すなわち移植した細胞が移植母床に生着することと,移植部位で機能を担うことである。これらを達成するためにはリハは必須である。今回の症例においては術後3日からは健側,および上肢の筋力強化を行い,8週からはエルゴメーターを用いた有酸素運動を行った。これは廃用予防という観点のみならず,代謝回転を向上する事で細胞の生着を促し,生着が達成できたと考えられた以後は筋力強化やROMエクササイズに加えて大腿骨頭に徐々に負荷を加えた。これらと従来のリハプログラムの差異を示すことは現時点では難しいが,本症例に対するリハ実施するうえでは上記のような考え方でリハプログラムを構築し,実施した。再生医療に特化したリハプログラムは,今後基礎研究や様々な臨床研究を通じて構築していく必要がある。再生医療が実用化されるためには移植された細胞の生着し,機能を獲得し,患者がその機能を使いこなす必要がある。今回の症例では細胞移植後からリハをシームレスに提供する事で,単に大腿骨頭壊死の治療成績を向上するだけでなく,社会復帰というリハの原点に関われたと考えている。
【理学療法学研究としての意義】我が国の医療施策の中で,再生医療は成長戦略として位置づけられ,国民の期待もさらに高まっている。今回の報告は一例の報告ではあるが,本症例の経過を詳細に分析する事で,理学療法が再生医療の治療効果を高める可能性を示唆するとともに,理学療法の発展に貢献できると考えられる。
【方法】患者は20代の男性でBody Mass Indexは18.3であった。治療前は患側股関節に疼痛を認め,杖を常用し,疼痛のため就職が困難であった。大腿骨頭壊死症の病期は厚生労働省素案X線グレードstage3Aであり,自己骨随由来間葉系幹細胞とベータリン酸三カルシウムを血管柄付き腸骨と共に移植術を施行された。術後1ヶ月は急性期リハを実施し,回復期病院に転院後,2ヶ月間回復期リハを実施し,退院後は2ヶ月の外来リハを実施した。術側荷重は術後6週間までは完全免荷とし,1/3荷重後は2週毎に荷重量を増加し,術後12週で全荷重とした。術側の関節可動域(ROM)エクササイズは術後2週より開始した。術側の筋力強化は術後6週から実施した。理学療法(PT)評価は,運動機能として筋力はIsoForce GT-330(OG技研社製)を用いて股関節伸展,屈曲,外転及び膝関節伸展,屈曲を測定し,ROMは股関節屈曲,伸展,外転,外旋を測定した。大腿周径は膝裂隙から15cmを計測し,疼痛はNumerical Rating Scale(NRS)を用いた。複合運動機能としてTimed up and go test(TUG),日常生活活動の指標はFunctional Independence Measure(FIM)を用いた。評価は術前及び術後1年で行った。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者へ本研究の目的と方法,個人情報の保護について十分説明を行い,同意を得て所属施設の倫理委員会に承諾を得た後に実施した。
【結果】筋力は股関節伸展(0.81→1.71Nm/kg),屈曲(2.19→2.11 Nm/kg),外転(1.61→1.82 Nm/kg),及び膝関節伸展(4.57→4.68 Nm/kg),屈曲(1.97→2.57 Nm/kg)と全てにおいて改善を示し,ROMは股関節屈曲が110度から120度と改善した。TUGは4.87秒が4.31秒に,大腿周径は39.0cmが38.5cmに,NRSは6から0に,FIMは102点が126点に改善した。股関節の荷重時痛は術後3ヵ月で消失し,杖の使用を必要とせず,走行も可能となった。本症例は外来リハビリテーション終了後に某大学の理学療法学科に再入学し,卒後は臨床現場で理学療法士として活躍している。
【考察】弓削は,再生医療とは失われた身体の細胞・組織・臓器の再生や機能回復を図る根治療法であると述べている。この言葉から解釈をすると,再生医療においては二つの段階が必要と考えられる。すなわち移植した細胞が移植母床に生着することと,移植部位で機能を担うことである。これらを達成するためにはリハは必須である。今回の症例においては術後3日からは健側,および上肢の筋力強化を行い,8週からはエルゴメーターを用いた有酸素運動を行った。これは廃用予防という観点のみならず,代謝回転を向上する事で細胞の生着を促し,生着が達成できたと考えられた以後は筋力強化やROMエクササイズに加えて大腿骨頭に徐々に負荷を加えた。これらと従来のリハプログラムの差異を示すことは現時点では難しいが,本症例に対するリハ実施するうえでは上記のような考え方でリハプログラムを構築し,実施した。再生医療に特化したリハプログラムは,今後基礎研究や様々な臨床研究を通じて構築していく必要がある。再生医療が実用化されるためには移植された細胞の生着し,機能を獲得し,患者がその機能を使いこなす必要がある。今回の症例では細胞移植後からリハをシームレスに提供する事で,単に大腿骨頭壊死の治療成績を向上するだけでなく,社会復帰というリハの原点に関われたと考えている。
【理学療法学研究としての意義】我が国の医療施策の中で,再生医療は成長戦略として位置づけられ,国民の期待もさらに高まっている。今回の報告は一例の報告ではあるが,本症例の経過を詳細に分析する事で,理学療法が再生医療の治療効果を高める可能性を示唆するとともに,理学療法の発展に貢献できると考えられる。