[1504] 小型三軸加速度センサを用いた歩行分析の有用性
キーワード:加速度, 歩行, 床反力
【はじめに】近年,ジャイロセンサ,加速度センサ,地磁気センサといった計測機器の発展は目覚ましく小型化,高性能化,低価格化が進展している。その中もで小型加速度計を用いた歩行分析は,装着が容易で計測場所の制限もなく,臨床において簡便な評価ツールとして注目されている。そこで,本研究の目的は当該センサを用いた歩行分析の有用性について検討するものである。
【方法】対象は神経学的,整形外科的障害のない健常成人16名(男性13名,女性3名,平均年齢:30.7±6.1歳,平均身長:169.5±6.4 cm,平均体重:60.0±7.3 kg)であった。歩行時3軸加速度データの計測には,歩行分析計MG-M1100-HW(三菱化学メディエンス社製)を用いた。歩行分析計の装着位置は,被検者の第3腰椎棘突起部に位置するよう固定用バンドで体幹に巻き付けた。次に歩行時の踵接地のタイミングを計測するため,足底踵部にフットスイッチ圧センサーを貼付した。その後,10 m自由歩行を3回行わせ,歩行時のフットスイッチ信号をマーク用フォトカプラーアンプ(メディエリアサポート企業組合社製)を経由して歩行分析計MG-M1100-HWに取り込んだ。得られたフットスイッチ信号から1歩行周期時間を算出し,各被検者の歩行周期時間を100%に換算し正規化した。各被検者の歩行時の加速度データは,3回の歩行から任意に5ヶ所の歩行周期を抽出し,その加算平均値を代表値とした。サンプリング周波数は1 kHzとした。歩行時床反力・身体重心軌跡の計測は,赤外線カメラ8台を備えた三次元動作解析装置Vicon MX(Vicon-Peak社製)と6枚の床反力計(AMTI社製)を用いた歩行分析を実施した。マーカーは木藤らのモデルを採用した。被検者には最初の床反力を右側で踏むよう指示し10 m自由歩行を行わせた。三次元動作解析装置と床反力計で得られたデータに各被検者の身長・体重を加味して,三次元床反力ベクトル(z:垂直成分,y:前後成分,x:左右成分)及び身体重心(center of gravity:以下,COG)位置を算出した。得られた右側床反力z成分から1歩行周期時間を算出し各被検者の歩行周期時間を100%に換算し正規化した。サンプリング周波数は1 kHzとした。統計学的分析にはIBM SPSS Statistics 22(日本IBM社製)を使用し以下の統計処理を実施した。再現性,信頼性の評価としては桑原らの基準に従い,級内相関係数が0.9以上を優秀,0.8以上を良好,0.7以上を普通,0.6以上を可能,0.6未満を要再考とした。3軸加速度波形の再現性については,同一被検者の3回の自由歩行から任意に抽出した5カ所の歩行周期の波形の再現性について級内相関係数ICC(1,1)を算出した。さらに,x軸方向,y軸方向,z軸方向のICCを比較するため一元配置分散分析後,多重比較検定(Tukey検定)を実施した。有意水準は5%未満とした。次に三軸加速度波形から推定した床反力の妥当性については,三軸加速度データに被検者の体重を乗して床反力ベクトルを推定した波形と床反力計から得られた床反力波形について相互相関係数(CC)を用いて検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿ったものであり,被検者には研究の目的および方法を十分説明し,研究に参加することに対する同意を得て実施した。
【結果】3軸方向の加速度波形におけるICCの平均値は,x軸,y軸,z軸でそれぞれ平均0.74±0.09,0.83±0.07,0.88±0.06であり,再現性の評価としてはy,z軸が0.8以上で“良好”であった。また,多重比較検定の結果,z軸はy,x軸に比べ,それぞれ有意(p<0.05,p<0.01)に高値を示し,次に3軸加速度波形から推定した床反力波形と床反力計から得られた波形のCCはx軸,y軸,z軸でそれぞれ平均0.46±0.13,0.78±0.10,0.74±0.14であった。多重比較検定の結果,y,z軸はx軸に比べ有意(p<0.01)に高値を示した。
【考察】3軸加速度波形のy,z軸方向の再現性が高いことは,これまでの先行研究結果と一致するものであった。さらに,y,z軸方向の加速度波形から推定した床反力波形は,CCの結果から,y,z軸方向の妥当性は高いが,x軸方向の妥当性はそれほど高くないと考えられる。これは歩行動作の左右方向速度変化特性が,垂直,前後方向に比べ小さいため,歩行時の体幹軟部組織の振動や,回旋運動等の影響を大きく受けたものと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】小型3軸加速度センサを用いた歩行分析は,y,z軸方向の波形の再現性は高く,さらに,同方向の床反力推定にも妥当性があり,臨床において有用な評価手段になり得ると考えられる。
【方法】対象は神経学的,整形外科的障害のない健常成人16名(男性13名,女性3名,平均年齢:30.7±6.1歳,平均身長:169.5±6.4 cm,平均体重:60.0±7.3 kg)であった。歩行時3軸加速度データの計測には,歩行分析計MG-M1100-HW(三菱化学メディエンス社製)を用いた。歩行分析計の装着位置は,被検者の第3腰椎棘突起部に位置するよう固定用バンドで体幹に巻き付けた。次に歩行時の踵接地のタイミングを計測するため,足底踵部にフットスイッチ圧センサーを貼付した。その後,10 m自由歩行を3回行わせ,歩行時のフットスイッチ信号をマーク用フォトカプラーアンプ(メディエリアサポート企業組合社製)を経由して歩行分析計MG-M1100-HWに取り込んだ。得られたフットスイッチ信号から1歩行周期時間を算出し,各被検者の歩行周期時間を100%に換算し正規化した。各被検者の歩行時の加速度データは,3回の歩行から任意に5ヶ所の歩行周期を抽出し,その加算平均値を代表値とした。サンプリング周波数は1 kHzとした。歩行時床反力・身体重心軌跡の計測は,赤外線カメラ8台を備えた三次元動作解析装置Vicon MX(Vicon-Peak社製)と6枚の床反力計(AMTI社製)を用いた歩行分析を実施した。マーカーは木藤らのモデルを採用した。被検者には最初の床反力を右側で踏むよう指示し10 m自由歩行を行わせた。三次元動作解析装置と床反力計で得られたデータに各被検者の身長・体重を加味して,三次元床反力ベクトル(z:垂直成分,y:前後成分,x:左右成分)及び身体重心(center of gravity:以下,COG)位置を算出した。得られた右側床反力z成分から1歩行周期時間を算出し各被検者の歩行周期時間を100%に換算し正規化した。サンプリング周波数は1 kHzとした。統計学的分析にはIBM SPSS Statistics 22(日本IBM社製)を使用し以下の統計処理を実施した。再現性,信頼性の評価としては桑原らの基準に従い,級内相関係数が0.9以上を優秀,0.8以上を良好,0.7以上を普通,0.6以上を可能,0.6未満を要再考とした。3軸加速度波形の再現性については,同一被検者の3回の自由歩行から任意に抽出した5カ所の歩行周期の波形の再現性について級内相関係数ICC(1,1)を算出した。さらに,x軸方向,y軸方向,z軸方向のICCを比較するため一元配置分散分析後,多重比較検定(Tukey検定)を実施した。有意水準は5%未満とした。次に三軸加速度波形から推定した床反力の妥当性については,三軸加速度データに被検者の体重を乗して床反力ベクトルを推定した波形と床反力計から得られた床反力波形について相互相関係数(CC)を用いて検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】本研究はヘルシンキ宣言に沿ったものであり,被検者には研究の目的および方法を十分説明し,研究に参加することに対する同意を得て実施した。
【結果】3軸方向の加速度波形におけるICCの平均値は,x軸,y軸,z軸でそれぞれ平均0.74±0.09,0.83±0.07,0.88±0.06であり,再現性の評価としてはy,z軸が0.8以上で“良好”であった。また,多重比較検定の結果,z軸はy,x軸に比べ,それぞれ有意(p<0.05,p<0.01)に高値を示し,次に3軸加速度波形から推定した床反力波形と床反力計から得られた波形のCCはx軸,y軸,z軸でそれぞれ平均0.46±0.13,0.78±0.10,0.74±0.14であった。多重比較検定の結果,y,z軸はx軸に比べ有意(p<0.01)に高値を示した。
【考察】3軸加速度波形のy,z軸方向の再現性が高いことは,これまでの先行研究結果と一致するものであった。さらに,y,z軸方向の加速度波形から推定した床反力波形は,CCの結果から,y,z軸方向の妥当性は高いが,x軸方向の妥当性はそれほど高くないと考えられる。これは歩行動作の左右方向速度変化特性が,垂直,前後方向に比べ小さいため,歩行時の体幹軟部組織の振動や,回旋運動等の影響を大きく受けたものと考えられる。
【理学療法学研究としての意義】小型3軸加速度センサを用いた歩行分析は,y,z軸方向の波形の再現性は高く,さらに,同方向の床反力推定にも妥当性があり,臨床において有用な評価手段になり得ると考えられる。