[1507] 簡易型動作解析システムの開発と精度検証について
Keywords:加速度, 動作解析, スマートフォン
【はじめに】
理学療法士・作業療法士に必要な動作分析は,三次元動作解析装置の登場により,定量的な評価が可能になったが,導入コストや計測場所,稼働の手間など,臨床のセラピスト及び症例が容易に使用することが困難なのが現状である。臨床のセラピストが手軽に介入前後の動作分析が行えるシステムに焦点を置き,市販のスマートフォンに実装されている加速度センサーモジュールを使用した解析システムを開発し,既存の動作解析機器と比較し精度検証を行ったのでここに報告する。
【方法】
1)検証機器
計測機器は我々が開発した簡易動作解析システム(市販スマートフォン端末を中心に計測・解析アプリケーション,同期信号ユニット,端末固定ベルトにて構成。現在,特許出願中)を用いた。端末は市販Android OS搭載 スマートフォン端末(SAMSUNG社製SC-06D)を使用し,加速度記録・解析アプリケーションである「トリガー版 シンプル加速度ロガー」を用いた。アプリケーションの機能は加速度の表示・計測,高速フーリエ変換による周波数パワースペクトル解析,同期信号の表示・記録,振動パワーの計測,それらを表計算ソフトにて解析できるよう,CSVファイルにて記録できる。サンプリング周波数は機種に依存するが,最新機種では最大200Hzで動作を確認している。
比較検討機器はVICON社製 三次元動作解析装置VICON MX,解析ソフトはVICON NEXUS 1.8.1を用いた。
2)対象・方法
対象は既往の疾患を認めない成人男性6名(平均年齢27.0歳(±SD5.37)。動作課題は10mの歩行路を設け,直線自由歩行とした。
簡易動作解析システムでは,左右(X)・前後(Y)・垂直(Z)の3軸加速度と周波数パワースペクトルを測定した。歩行周期を確実に同定するために,感圧センサーを使用した同期信号ユニットを用い,歩行のタイミングを計測した。センサーは踵接地(以下,IC)場所(踵外側)とつま先離地場所(母趾先端)へ設置した。端末の固定は端末固定ベルトを用い,先行文献より第3腰椎突起部とした。端末は通信出来ないよう,SIMカードは抜去した。
三次元動作解析装置は,計測点である赤外線反射マーカーをスマートフォンの加速度センサーモジュールの推定位置の表面に設置し,左右(X)・前後(Y)・垂直(Z)の変位座標を測定し,その後加速度へ変換した。歩行のタイミングはAMTI社製フォースプレートを用いて測定し同定した。
サンプリング周波数はそれぞれ100Hzに統一し,機器で得られた歩行同定信号をもとに,右下肢の踵接地より,次右下肢の踵接地までを1周期として加速度数値を切り出し,時間正規化を行った上で加算平均値を算出した。周波数パワースペクトル解析により,動作計測に関連のない振動周波数(12Hz)を判断し,加速度へバタワースフィルタにてフィルタリング処理を行った。
3)統計解析
統計解析にはFreeJSTATを用い,Spearmanの順位相関検定を行い,有意水準は1%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,筆者所属機関の倫理委員会の承認を得た上で,対象者には研究内容について十分な説明を行い,同意を得て行った。
【結果】
左右(X軸):r=0.833(P<0.01),前後(Y軸):r=0.969(P<0.01),垂直(Z軸):r=0.936(P<0.01)
3軸すべてにおいて強い相関関係を認めた。
【考察】
結果から,本システムにおける計測データはヒトの歩行動作において,三次元動作解析装置と高い相関を認めた。よって,手のひらサイズのスマートフォンにて,既存の機器の機能の一部を担うことができる可能性が示唆された。このシステムのメリットは,使用場所を選ばない可搬性と設置しやすさ,何より普及したスマートフォンを用い手軽に使用し,動作分析が可能なことである。セラピストは知識とセンスを元に,目視で動作分析を行うのが主であり,具体的な評価が困難である。従って,身体部位の加速度を計測することによって,特に治療介入前後の動作の変化や効果判定をこれまで以上に簡便に正確に行うことが可能と考える。しかしながら,端末の振動などによる計測数値のドリフト対策や,操作性の向上など課題は残されており,今後も継続して開発を進める必要がある。
【理学療法研究としての意義】
スマートフォン内蔵の加速度センサーモジュールを用いた加速度計測についてはいくつかの先行研究を認めるが,本システムは特許出願中であり,アプリケーションと同期信号ユニット,端末固定ベルト等を開発し,歩行などの動作の基点から加速度数値と動作を同定できることは新規性があると考える。さらなる精度の保証がなされれば,臨床のセラピストが手軽に場所を選ばずに理学療法の効果判定が出来ると考える。また,理学療法士として他職種と協業し,モノづくりが出来たことも意義があると考える。
理学療法士・作業療法士に必要な動作分析は,三次元動作解析装置の登場により,定量的な評価が可能になったが,導入コストや計測場所,稼働の手間など,臨床のセラピスト及び症例が容易に使用することが困難なのが現状である。臨床のセラピストが手軽に介入前後の動作分析が行えるシステムに焦点を置き,市販のスマートフォンに実装されている加速度センサーモジュールを使用した解析システムを開発し,既存の動作解析機器と比較し精度検証を行ったのでここに報告する。
【方法】
1)検証機器
計測機器は我々が開発した簡易動作解析システム(市販スマートフォン端末を中心に計測・解析アプリケーション,同期信号ユニット,端末固定ベルトにて構成。現在,特許出願中)を用いた。端末は市販Android OS搭載 スマートフォン端末(SAMSUNG社製SC-06D)を使用し,加速度記録・解析アプリケーションである「トリガー版 シンプル加速度ロガー」を用いた。アプリケーションの機能は加速度の表示・計測,高速フーリエ変換による周波数パワースペクトル解析,同期信号の表示・記録,振動パワーの計測,それらを表計算ソフトにて解析できるよう,CSVファイルにて記録できる。サンプリング周波数は機種に依存するが,最新機種では最大200Hzで動作を確認している。
比較検討機器はVICON社製 三次元動作解析装置VICON MX,解析ソフトはVICON NEXUS 1.8.1を用いた。
2)対象・方法
対象は既往の疾患を認めない成人男性6名(平均年齢27.0歳(±SD5.37)。動作課題は10mの歩行路を設け,直線自由歩行とした。
簡易動作解析システムでは,左右(X)・前後(Y)・垂直(Z)の3軸加速度と周波数パワースペクトルを測定した。歩行周期を確実に同定するために,感圧センサーを使用した同期信号ユニットを用い,歩行のタイミングを計測した。センサーは踵接地(以下,IC)場所(踵外側)とつま先離地場所(母趾先端)へ設置した。端末の固定は端末固定ベルトを用い,先行文献より第3腰椎突起部とした。端末は通信出来ないよう,SIMカードは抜去した。
三次元動作解析装置は,計測点である赤外線反射マーカーをスマートフォンの加速度センサーモジュールの推定位置の表面に設置し,左右(X)・前後(Y)・垂直(Z)の変位座標を測定し,その後加速度へ変換した。歩行のタイミングはAMTI社製フォースプレートを用いて測定し同定した。
サンプリング周波数はそれぞれ100Hzに統一し,機器で得られた歩行同定信号をもとに,右下肢の踵接地より,次右下肢の踵接地までを1周期として加速度数値を切り出し,時間正規化を行った上で加算平均値を算出した。周波数パワースペクトル解析により,動作計測に関連のない振動周波数(12Hz)を判断し,加速度へバタワースフィルタにてフィルタリング処理を行った。
3)統計解析
統計解析にはFreeJSTATを用い,Spearmanの順位相関検定を行い,有意水準は1%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,筆者所属機関の倫理委員会の承認を得た上で,対象者には研究内容について十分な説明を行い,同意を得て行った。
【結果】
左右(X軸):r=0.833(P<0.01),前後(Y軸):r=0.969(P<0.01),垂直(Z軸):r=0.936(P<0.01)
3軸すべてにおいて強い相関関係を認めた。
【考察】
結果から,本システムにおける計測データはヒトの歩行動作において,三次元動作解析装置と高い相関を認めた。よって,手のひらサイズのスマートフォンにて,既存の機器の機能の一部を担うことができる可能性が示唆された。このシステムのメリットは,使用場所を選ばない可搬性と設置しやすさ,何より普及したスマートフォンを用い手軽に使用し,動作分析が可能なことである。セラピストは知識とセンスを元に,目視で動作分析を行うのが主であり,具体的な評価が困難である。従って,身体部位の加速度を計測することによって,特に治療介入前後の動作の変化や効果判定をこれまで以上に簡便に正確に行うことが可能と考える。しかしながら,端末の振動などによる計測数値のドリフト対策や,操作性の向上など課題は残されており,今後も継続して開発を進める必要がある。
【理学療法研究としての意義】
スマートフォン内蔵の加速度センサーモジュールを用いた加速度計測についてはいくつかの先行研究を認めるが,本システムは特許出願中であり,アプリケーションと同期信号ユニット,端末固定ベルト等を開発し,歩行などの動作の基点から加速度数値と動作を同定できることは新規性があると考える。さらなる精度の保証がなされれば,臨床のセラピストが手軽に場所を選ばずに理学療法の効果判定が出来ると考える。また,理学療法士として他職種と協業し,モノづくりが出来たことも意義があると考える。