第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 内部障害理学療法 ポスター

その他3

2014年6月1日(日) 11:20 〜 12:10 ポスター会場 (内部障害)

座長:田仲勝一(香川大学医学部附属病院リハビリテーション部)

内部障害 ポスター

[1517] 緩和ケア病棟における終末期患者へのリハビリテーションの介入が移動動作に及ぼす影響について

小野淳子, 福島綾子, 大工谷新一 (岸和田盈進会病院リハビリテーション部)

キーワード:緩和ケア, 終末期, performance status

【目的】緩和ケアにおけるリハビリテーションを実施する上での目標は,患者とその家族にとってできる限り可能なQOLを実現することである。QOLを保つために必要な要素は各患者によって異なるが,「排泄動作は自分でしたい,自分で動きたい」といわれることが多く,特に排泄動作とそれに関連する移動動作能力の維持と向上はQOLの視点から考えて重要となってくる。当院では緩和ケア病棟に入院されている患者に対して,積極的にリハビリテーション(理学療法と鍼灸治療)を実施し,移動動作を含むQOLの維持と向上に取り組んでいる。その経験の中で,リハビリテーション開始時のperformance status(以下,PS)のgradeがその後の移動動作に大きく関与している傾向がみられた。そこで,リハビリテーション開始時点のPSのgradeと移動動作における特徴について報告する。
【方法】平成23年4月から平成24年3月までの1年間で当院の緩和ケア病棟に入院した患者118名を対象とした。対象の入院時におけるPS gradeの内訳と平均年齢は,2(以下,PS2)が18名;70.6歳,3(以下,PS3)が50名;72.5歳,4(以下,PS4)が50名;70.5歳であった。リハビリテーションは入院と同時に開始し,原則として1週間に6日実施した。すべての対象者について,移動動作が自身で不可能となった時期を調査し,その平均期間をPS grade別に比較した。なお,移動動作が自身で不可能となった時期は死亡日から逆算して抽出した。
【倫理的配慮】対象のデータの処理については個人が特定されないように配慮した。
【結果】PS gradeごとのリハビリテーション実施率は,PS2では100%,PS3では92%,PS4では72%であった。また,平均入院日数は,PS2,PS3,PS4の順に33.6日,38.8日,21.5日であった。移動動作が不可能となった時期の平均はPS2では1.7日,PS3では7.8日であり,これらには有意な差が認められた(対応のないt検定,p<0.01)。また,PS4では寝たきりであり,自立での移動動作は不可であったが,介助または見守りで歩行器を使用した歩行が可能となった症例が21名(42%)みられ,そのうち死亡日から9.3日前まで自身で移動できていた症例が6名みられた。
【考察】PS2の時期にリハビリテーションを開始した場合,PS3で開始した場合よりも移動が自身で不可能になる期間が短縮していたことが明らかとなった。これは,PS gradeが低い段階からリハビリテーションを実施することにより,下肢の筋力や呼吸機能の向上と維持が可能となり,移動能力を保つ期間が長くなり患者のQOL維持につながると考えられる。また,PS4でも寝たきりから歩行が可能となる症例がみられた。これはリハビリテーションの介入時のPS gradeが高くても,リハビリテーションを実施することにより歩行器などの補助具を使用しながら患者の残された能力を発揮できたことが移動動作能力の向上につながったと考えられる。これらの結果から,終末期患者へリハビリテーションを実施することは,患者の移動能力を維持または向上させ,QOLの維持と向上につながることからリハビリテーションの有効性と重要性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】本研究は,緩和ケアにおける終末期患者へのリハビリテーションの効果について介入時のPS gradeと介入後の移動能力の維持・向上と患者のQOLに着目した研究である。残された時間が少ない緩和ケア病棟の終末期患者に対してもリハビリテーションを実施することで,移動能力が維持または向上が可能となり,患者のQOLを維持または向上につながることが期待できることから,終末期患者におけるリハビリテーションの実施は有効で重要であることが考えられる。