[1518] 終末期癌患者のQOLと身体機能の変化
キーワード:終末期, がん, QOL
【はじめに,目的】
世界保健機構は「緩和ケアの目標は患者とその家族にとって最高のQuality of Life(QOL)を実現することである」としており,緩和ケアは患者や家族のQOLを向上させることが求められる。近年,ホスピスや緩和ケアの増大とともに,リハビリテーションも緩和ケアチームの一員として重要な役割を果たすようになってきており,理学療法士は患者のQOLや身体機能を向上させる役割を担う。癌患者に対する運動療法がQOLを向上させることは報告されているが,終末期の癌患者に対しリハビリテーションを行い,QOLや身体項目の変化を調査した報告は散見する程度である。そのため終末期癌患者のリハビリテーション開始時と終了時のQOLと身体機能の変化を調査した。
【方法】
対象は当院の緩和ケア科に入院しており,主治医よりリハビリテーションの指示が出た患者であり,研究に同意が得られた11名とした。対象の平均年齢は70.4±8.3歳で,男性が4名,女性が7名であった。対象の疾患は乳がんが3名,膣がん,肝がん,食道がん,胃がん,膵臓がん,大腸がん,肺がん,卵巣がんがそれぞれ1名であった。QOLの評価はMcGill Quality of Life Questionnaire(MQOL)日本語版,動作能力の評価はBarthel Index(BI),身体能力の評価は握力測定,10m歩行時間,Performance Status(PS)を行った。MQOLは合計点と,全体,身体面,心理面,実存的,サポートの各項目についても点数化した。評価はリハビリテーション開始時から毎週行い,医師からリハビリテーション終了の指示があるまで行った。統計解析はリハビリテーション開始時と終了時の各評価項目をwilcoxonの符号順位検定で比較した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究ではヘルシンキ宣言の基本原則および追加原則を鑑み,主治医,国保中央病院倫理委員会の承認を得た上で症例に対し本研究の概要について説明し,文書による同意を得てから評価を実施した。
【結果】
リハビリテーションの平均介入期間は26.7±11.2日であった。リハビリテーション終了の理由は2名が自宅退院,9名が全身状態の悪化によるものであった。リハビリテーション開始時のMQOL合計点の平均は6.7±2.2点で終了時は5.8±1.4点であった。MQOL合計点は低下する傾向であったが統計学的に有意な差はみられなかった。その他の項目もMQOL全体,MQOL心理面,10m歩行時間,握力,BI,PSと低下する傾向にあったが統計学的に有意な差はみられなかった。MQOLの身体項目は開始時6.3±2.5点であったが,終了時は3.5±2.4点となり有意に低下がみられた(p<0.05)。一方でMQOLの自己存在とサポートは改善する傾向にあったが,統計学的に有意な差はみられなかった。
【考察】
Paulinaは癌の進行とともにQOLは低下すると述べている。本研究ではMQOLの身体項目以外は有意な低下がみられなかったことより,包括的な緩和ケアで維持されていたことが示唆された。MQOLの身体項目はリハビリテーション開始時に比べ,終了時が有意に低下していた。垣藤は末期がん患者は97.6%に全身倦怠感,94.7%に食欲不振,76.7%に痛みがあると報告しており,症状の進行がMQOLの身体項目を低下させたことが示唆された。身体機能に関して,Oldervollは生命予後が短いがん患者に対し運動療法を行い,身体機能の改善を報告している。今回,身体機能はBI,握力,10m歩行時間,PS全ての項目が有意に低下していなかったことより,理学療法介入によって身体機能が維持されたことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法で行う一般的な身体機能項目の評価は有意に低下していなかったが,MQOLの身体項目が有意に低下していたことより,終末期のがん患者の身体機能の評価は多方面から行う必要があることが示唆された。
世界保健機構は「緩和ケアの目標は患者とその家族にとって最高のQuality of Life(QOL)を実現することである」としており,緩和ケアは患者や家族のQOLを向上させることが求められる。近年,ホスピスや緩和ケアの増大とともに,リハビリテーションも緩和ケアチームの一員として重要な役割を果たすようになってきており,理学療法士は患者のQOLや身体機能を向上させる役割を担う。癌患者に対する運動療法がQOLを向上させることは報告されているが,終末期の癌患者に対しリハビリテーションを行い,QOLや身体項目の変化を調査した報告は散見する程度である。そのため終末期癌患者のリハビリテーション開始時と終了時のQOLと身体機能の変化を調査した。
【方法】
対象は当院の緩和ケア科に入院しており,主治医よりリハビリテーションの指示が出た患者であり,研究に同意が得られた11名とした。対象の平均年齢は70.4±8.3歳で,男性が4名,女性が7名であった。対象の疾患は乳がんが3名,膣がん,肝がん,食道がん,胃がん,膵臓がん,大腸がん,肺がん,卵巣がんがそれぞれ1名であった。QOLの評価はMcGill Quality of Life Questionnaire(MQOL)日本語版,動作能力の評価はBarthel Index(BI),身体能力の評価は握力測定,10m歩行時間,Performance Status(PS)を行った。MQOLは合計点と,全体,身体面,心理面,実存的,サポートの各項目についても点数化した。評価はリハビリテーション開始時から毎週行い,医師からリハビリテーション終了の指示があるまで行った。統計解析はリハビリテーション開始時と終了時の各評価項目をwilcoxonの符号順位検定で比較した。有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
研究ではヘルシンキ宣言の基本原則および追加原則を鑑み,主治医,国保中央病院倫理委員会の承認を得た上で症例に対し本研究の概要について説明し,文書による同意を得てから評価を実施した。
【結果】
リハビリテーションの平均介入期間は26.7±11.2日であった。リハビリテーション終了の理由は2名が自宅退院,9名が全身状態の悪化によるものであった。リハビリテーション開始時のMQOL合計点の平均は6.7±2.2点で終了時は5.8±1.4点であった。MQOL合計点は低下する傾向であったが統計学的に有意な差はみられなかった。その他の項目もMQOL全体,MQOL心理面,10m歩行時間,握力,BI,PSと低下する傾向にあったが統計学的に有意な差はみられなかった。MQOLの身体項目は開始時6.3±2.5点であったが,終了時は3.5±2.4点となり有意に低下がみられた(p<0.05)。一方でMQOLの自己存在とサポートは改善する傾向にあったが,統計学的に有意な差はみられなかった。
【考察】
Paulinaは癌の進行とともにQOLは低下すると述べている。本研究ではMQOLの身体項目以外は有意な低下がみられなかったことより,包括的な緩和ケアで維持されていたことが示唆された。MQOLの身体項目はリハビリテーション開始時に比べ,終了時が有意に低下していた。垣藤は末期がん患者は97.6%に全身倦怠感,94.7%に食欲不振,76.7%に痛みがあると報告しており,症状の進行がMQOLの身体項目を低下させたことが示唆された。身体機能に関して,Oldervollは生命予後が短いがん患者に対し運動療法を行い,身体機能の改善を報告している。今回,身体機能はBI,握力,10m歩行時間,PS全ての項目が有意に低下していなかったことより,理学療法介入によって身体機能が維持されたことが示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
理学療法で行う一般的な身体機能項目の評価は有意に低下していなかったが,MQOLの身体項目が有意に低下していたことより,終末期のがん患者の身体機能の評価は多方面から行う必要があることが示唆された。