[1523] 健常成人における新型足首用サポーター装着下での歩行解析
キーワード:D-Line Ankle, トレッドミル, 歩行
【はじめに】
足関節は,スポーツ活動中における傷害の発生頻度が高い部位であり,その中でも足関節内反捻挫受傷後は観血的・保存的治療の有無に関わらず,約10%の者において足関節に不安定性が残存すると報告されている。足関節不安定性は機能的不安定性と機械的不安定性の2つに分類され,機能的不安定性には神経・筋因子が影響しており,外反筋力の低下,バランス能の低下,固有感覚の低下などが生じると考えられている。機械的不安定性には軟部組織の損傷やアライメント異常が影響しており,関節の異常可動性を生じるものである。機能的不安定性に対しては筋力増強運動などの運動療法,機械的不安定性に対してはテーピングなどの装具療法が一般的である。新型足首用サポーター(以下:D-Line Ankle)は,足関節の不安定性に対して機能的・機械的の両面からアプローチすることを目的とした,足首に巻きつけるだけの画期的なサポーターである。本研究は,D-Line Ankleを装着することで歩行機能にどのような影響をもたらすかを検討することを目的とした。
【方法】
対象は,健常若年者30名(男性19名,女性11名),平均年齢20.9±0.2歳,身長169.0±3.8cm,体重61.8±5.0kgである。本研究では,ビデオ画像と同期した足圧分布計測機能を有したトレッドミル(ZebrisWinFDM-T,Zebris Medical GmbH)にて計測を行った。トレッドミル歩行は4.3±0.2km/hにて60秒間施行し,最初の60秒間は練習とし,歩行が安定したところで60秒間の歩行を計測した。計測された足圧は,1歩行周期中の30歩目を用いた。歩行解析データと重心軌跡データは,1歩行周期中に計測されたものを用いた。足底部を前足部,中足部,後足部に分割し,それぞれの部位の足圧を算出した。算出された足圧データは,足底接触面積と体重で正規化を行った。統計学的解析には,D-Line Ankle装着有無でトレッドミルにて算出される因子を対応あるt検定を用いて比較し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,吉備国際大学「人を対象とする研究」倫理規定,「ヘルシンキ宣言」あるいは「臨床研究に関する倫理指針」に従う。吉備国際大学倫理審査委員会に申請をし,審査を経て承認(吉備国際大学倫理審査委員会 受理番号:11-08)を得た。対象者に対し,臨床研究説明書と同意書にて研究の意義,目的,不利益および危険性,同意の撤回が可能であるということなどについて,口頭および書類にて十分に説明し,自由意志による参加の同意を同意書に署名を得て実施した。
【結果】
足圧は,D-Line Ankle非装着群と比較してD-Line Ankle装着群において後足部の足圧が低値を示し,前・中足部の足圧が高値を示した。また,足圧中心軌跡(COP)はD-Line Ankle非装着群と比較してD-Line Ankle装着群では,前後重心軌跡と左右重心軌跡において減少傾向が認められた。一方,歩行周期においては,D-Line Ankle非装着群と比較してD-Line Ankle装着群がStep LengthとPre-Swingにおいて高値を示した(P<0.01)。
【考察】
足圧の結果は,D-Line Ankle装着群の後足部の値が低値,前・中足部の値が高値を示した。また,足圧中心軌跡(COP)はD-Line Ankle装着群では,前後重心軌跡と左右重心軌跡において減少傾向が認められた。これは,D-Line Ankleを装着したことで下脛腓関節を圧迫し,内側に付属している成型パッドによって長腓骨筋腱を圧迫することで,外反筋力を効果的に伝達するようになったためと考えられた。それにより,立方骨の外反に繋がることで踵立方関節のロック機構が促進され,前後・左右方向への重心軌跡が減少傾向を認めたものと考えられた。足圧と重心軌跡の結果より,歩行周期におけるStep LengthとPre-Swingの高値に繋がったものと考えられ,D-Line Ankleを装着することでロコモーターシステムである足関節・足部複合体の機能の安定性が高まり推進力に繋がったものと推察された。
【理学療法学研究としての意義】
足圧機能解析機能を有するトレッドミルは,足圧,重心軌跡,歩行周期などの信頼性の高い多領域の解析が可能である。一方,D-Line Ankleの有用性が明らかになれば,関節不安定性の改善や衝撃緩衝によるオーバーユース症候群の予防につながることが期待でき,理学療法学研究としての意義は大きいと考える。
足関節は,スポーツ活動中における傷害の発生頻度が高い部位であり,その中でも足関節内反捻挫受傷後は観血的・保存的治療の有無に関わらず,約10%の者において足関節に不安定性が残存すると報告されている。足関節不安定性は機能的不安定性と機械的不安定性の2つに分類され,機能的不安定性には神経・筋因子が影響しており,外反筋力の低下,バランス能の低下,固有感覚の低下などが生じると考えられている。機械的不安定性には軟部組織の損傷やアライメント異常が影響しており,関節の異常可動性を生じるものである。機能的不安定性に対しては筋力増強運動などの運動療法,機械的不安定性に対してはテーピングなどの装具療法が一般的である。新型足首用サポーター(以下:D-Line Ankle)は,足関節の不安定性に対して機能的・機械的の両面からアプローチすることを目的とした,足首に巻きつけるだけの画期的なサポーターである。本研究は,D-Line Ankleを装着することで歩行機能にどのような影響をもたらすかを検討することを目的とした。
【方法】
対象は,健常若年者30名(男性19名,女性11名),平均年齢20.9±0.2歳,身長169.0±3.8cm,体重61.8±5.0kgである。本研究では,ビデオ画像と同期した足圧分布計測機能を有したトレッドミル(ZebrisWinFDM-T,Zebris Medical GmbH)にて計測を行った。トレッドミル歩行は4.3±0.2km/hにて60秒間施行し,最初の60秒間は練習とし,歩行が安定したところで60秒間の歩行を計測した。計測された足圧は,1歩行周期中の30歩目を用いた。歩行解析データと重心軌跡データは,1歩行周期中に計測されたものを用いた。足底部を前足部,中足部,後足部に分割し,それぞれの部位の足圧を算出した。算出された足圧データは,足底接触面積と体重で正規化を行った。統計学的解析には,D-Line Ankle装着有無でトレッドミルにて算出される因子を対応あるt検定を用いて比較し,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,吉備国際大学「人を対象とする研究」倫理規定,「ヘルシンキ宣言」あるいは「臨床研究に関する倫理指針」に従う。吉備国際大学倫理審査委員会に申請をし,審査を経て承認(吉備国際大学倫理審査委員会 受理番号:11-08)を得た。対象者に対し,臨床研究説明書と同意書にて研究の意義,目的,不利益および危険性,同意の撤回が可能であるということなどについて,口頭および書類にて十分に説明し,自由意志による参加の同意を同意書に署名を得て実施した。
【結果】
足圧は,D-Line Ankle非装着群と比較してD-Line Ankle装着群において後足部の足圧が低値を示し,前・中足部の足圧が高値を示した。また,足圧中心軌跡(COP)はD-Line Ankle非装着群と比較してD-Line Ankle装着群では,前後重心軌跡と左右重心軌跡において減少傾向が認められた。一方,歩行周期においては,D-Line Ankle非装着群と比較してD-Line Ankle装着群がStep LengthとPre-Swingにおいて高値を示した(P<0.01)。
【考察】
足圧の結果は,D-Line Ankle装着群の後足部の値が低値,前・中足部の値が高値を示した。また,足圧中心軌跡(COP)はD-Line Ankle装着群では,前後重心軌跡と左右重心軌跡において減少傾向が認められた。これは,D-Line Ankleを装着したことで下脛腓関節を圧迫し,内側に付属している成型パッドによって長腓骨筋腱を圧迫することで,外反筋力を効果的に伝達するようになったためと考えられた。それにより,立方骨の外反に繋がることで踵立方関節のロック機構が促進され,前後・左右方向への重心軌跡が減少傾向を認めたものと考えられた。足圧と重心軌跡の結果より,歩行周期におけるStep LengthとPre-Swingの高値に繋がったものと考えられ,D-Line Ankleを装着することでロコモーターシステムである足関節・足部複合体の機能の安定性が高まり推進力に繋がったものと推察された。
【理学療法学研究としての意義】
足圧機能解析機能を有するトレッドミルは,足圧,重心軌跡,歩行周期などの信頼性の高い多領域の解析が可能である。一方,D-Line Ankleの有用性が明らかになれば,関節不安定性の改善や衝撃緩衝によるオーバーユース症候群の予防につながることが期待でき,理学療法学研究としての意義は大きいと考える。