第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 運動器理学療法 ポスター

スポーツ6

2014年6月1日(日) 11:20 〜 12:10 ポスター会場 (運動器)

座長:加賀谷善教(昭和大学保健医療学部理学療法学科)

運動器 ポスター

[1531] バレーボールにおける膝前十字靭帯損傷受傷機転に関するアンケート調査

濱崎圭祐1, 佐藤謙次2, 妹尾賢和1 (1.船橋整形外科病院理学診療部, 2.船橋整形外科病院スポーツリハビリテーション部)

キーワード:前十字靭帯損傷, バレーボール, アンケート

【はじめに,目的】
膝前十字靭帯(ACL)損傷はスポーツ外傷の中でも重篤な外傷のひとつであり,当院の調査によるとACL損傷受傷スポーツ種目ではバスケットボール,サッカー,バレーボールの順に多い。ACL受傷の発生メカニズムには未知の部分があり,受傷メカニズムに関する研究が多数報告されている。健常被験者を対象としたバイオメカニクス的な研究や,コンピューターシュミレーション,屍体膝の実験,ビデオ解析などが行われており受傷メカニズムに対して一定の知見をもたらしている。受傷機転に関する研究はこれまで,バスケットボールやハンドボールにおいて報告されており,膝外反が最も典型的であることがわかっている。しかし,バレーに関する報告は渉猟し得ない。
本研究の目的は,バレーボール選手におけるACL損傷の受傷機転を明らかにするため,アンケート調査を行うことである。
【方法】
対象はバレーボール競技中にACL損傷を受傷し,2005年7月から2013年10月の期間内に当院を受診しACL再建術を施行した患者30名(30膝)とした。内訳は女性30名,平均年齢22.9歳(16-47歳),競技年数6.8±2.2年であった。方法は質問紙法による選択法と,自由記述を用いたACL損傷に関するアンケート調査を行った。質問紙は郵送および手渡しにて配布した。質問紙の内容は,身体的特徴について,質問1「利き手は右ですか?左ですか?」,質問2「怪我をしたのは左右どちらの足ですか?」,受傷機転原因について,質問3「怪我をしたときに誰かと接触しましたか?」,質問4「どのような動作で怪我をしましたか?」,受傷した環境について,質問5「受傷した場所はコート内のどこですか?」の5項目を選択法とした。また質問6「怪我した原因について思い当たる事はありますか?」に対しては自由記述を用いて回答してもらった。分析方法は回収した質問紙データーを入力し,各項目が全体に占める割合を求めた。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究は,船橋整形外科倫理委員会の承認を得て(承認番号2013022),ヘルシンキ宣言に基づき対象者に人権擁護がなされていることを説明し同意を得て実施した。
【結果】
質問1について,右利き90.3%(28件),左利き9.7%(3件),質問2について,右膝受傷35.5%(11件),左膝受傷64.5%(20件)であった。また,非利き手側膝の損傷が74.2%(23件),利き手側膝の損傷が25.8%(8件)であり,利き手側とは反対側膝の損傷が多い傾向がみられた。質問3については,非接触型74.2%(23件),接触型19.4%(6件),不明6.5%(2件)であり非接触型損傷が多い傾向がみたれた。質問については,スパイク着地71%(22件),レシーブ9.7%(3件),ブロック着地6.5%(2件),トス6.5%(2件),その他ネット際のプレー6.5%(2件)でありスパイクの着地が多い傾向がみられた。質問5について,アタックラインよりも前93.6%(29件)で内訳はレフト61.3%(19件),センター12.9%(4件),ライト19.4%(6件)。アタックラインよりも後ろ6.4%(2件)で内訳はレフト3.2%(1件),ライト3.2%(1件)であった。受傷原因について自由記述の回答では「トスが流れた」5件,「トスがネットに近かった」6件とまとまった回答が得られた。
【考察】
受傷原因について非接触型が74.2%であった。動作ではスパイクの着地が71%と多く,利き手側と反対側膝の受傷が74.2%と多い結果となった。これは,右利き選手のスパイク動作では両足でジャンプし,左足で着地する事が多いためと考えられる。またセンターラインよりも前のレフトポジション周辺での受傷が多いのも特徴である。自由記述の回答では「トスが流れた」,「トスがネットに近かった」とまとまった回答が得られた。この事からバランスを崩した体制でスパイクを打っていた可能性がある。バレーボール選手におけるACL損傷受傷は,アタックラインよりも前のレフト周辺で,スパイクの着地動作による受傷リスクが高くなるのではないかと考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は,バレーボール選手におけるACL損傷受傷の実態を明らかにするため,アンケート調査を実施した。これらの調査結果からACL損傷要因について検討することにより,指導者・選手の双方がACL損傷予防への意識を高めるための基礎資料となりうる。今後さらなる調査を進め,バレーボールの競技特性を考慮し,発生メカニズムを克服するトレーニングの作成をしていきたい。