[1539] 物理療法と徒手療法の組み合わせがハムストリングスに与える影響について
キーワード:ハムストリングス, 超音波療法, 徒手療法
【はじめに,目的】
内側ハムストリングスの短縮は,骨盤の自由度を低下させ,日常生活において腰部へのストレスを徐々に高めてしまう要因の一つである。超音波療法やコントラクトリラックス(以下CR法)の単独での内側ハムストリングスに対する治療効果は数多く報告されているが,複数の治療を組み合わせ,それらの有効性を比較検討した報告はない。そこで本研究では,複数の治療の組み合わせによる比較を筋硬度および関節可動域を測定し行い,より有効な治療の組み合わせを明らかにすることを目的とした。
【方法】
被験者は健常成人男性13名(平均年齢21.6±0.6歳 平均身長172.7±6.5cm 平均体重65.6±8.2kg)で,整形外科的な既往がないことに加え,指床間距離が0cm以上である本学生とした。筋硬度計による測定と超音波療法の照射およびモビライゼーションによる横断マッサージ部位を,利き足の内側ハムストリングスの筋腱移行部(停止部から25%)とした。また,対象者には,実験の二日前から適度な運動やストレッチは控えるよう指導した。同一被験者は①コントロール,②超音波療法,③超音波療法とCR法,④超音波療法と軟部組織モビライゼーションの4つの施行を全て行った。各施行の間隔は1日以上あけ,順番はランダムに設定した。超音波療法は移動法を用い,照射時間は6分間,超音波強度は0.5~1.2W/cm2とした。CR法は伸張時の強度を自制内痛,伸張持続時間を30秒とし,収縮時の強度は主観的最大努力,収縮時間を8秒とした。軟部組織モビライゼーションは横断マッサージを用い,その時の圧は強度,施行時間を3分とし,同一検者が実施した。室温は24°に設定した。実験は2分間の安静腹臥位をとり,各施行前に,内側ハムストリングスに対する筋伸張性検査として筋硬度とSLRの測定を行った。その3分後に再度腹臥位となり,各施行(上記の①,②,③,④)いずれ一つを行った。各施行終了1分後,5分後,に筋硬度・SLRの順で測定を行った。解析方法は,筋硬度,SLR,の角度を介入前後の測定値をSPSSにて二元配置分散分析,多重比較Bonferroni法を用いて分析した。
【倫理的配慮,説明と同意】
大学倫理審査委員会の承認を得てから実施した(承認番13-Io-97)。被験者には本研究の目的と方法を説明し研究協力の賛同を得た。対象者に事前に,アンケート調査を実施し,利き足,スポーツ歴(種類,期間),下肢膝伸展挙上位(以下SLR)時の伸張時自制内痛部位を確認した。
【結果】
4群間すべてにおいて筋硬度の変化に有意差は認められなかったが,SLRではコントロール群(56.5±2.6°)と比較して超音波療法とCR法の組み合わせ(60.4±2.8°)に有意差(p<0.05)が認められた。
【考察】
今回の研究より,超音波療法とCR法の組み合わせが内側ハムストリングスの伸張状態を表すSLRを改善させる効果があることが明らかとなった。超音波療法は筋組織へ直接加温する効果があり,これが筋緊張の緩和に繋がる。このリラックスした状態で,CR法で筋を伸張し,最大収縮後の最大弛緩を利用することで,SLR拡大に繋がったと推測される。原田らによると,対象筋を伸張するとゴルジ腱器官が刺激され,Ib抑制が発生し対象筋のリラクゼーションによってROMが拡大すると報告されている。超音波の施行により,より伸張効果が増加したものと考えられた。
筋硬度に関しては先行研究でも,ストレッチにより股関節屈曲可動域は変化したが,有意な変化ではなかったと報告しており,今回の研究においても僅かな変動がみられたものの,有意差がみられないという先行研究と同様の結果が示された。
本研究では,コントロール群との比較において超音波療法・CR法の組み合わせによる治療がSLRを拡大させる可能性を示唆した。しかし,本研究においてはストレッチ単体での筋硬度・SLRの確認を行っていないため,超音波療法単独での効果か,またはこの組み合わせの効果かははっきりと明らかにすることができなかった。今後,単体の治療ではどのような変化が認められるか検討し,より効果的な治療法を明らかにしていきたい。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は内側ハムストリングスを対象に物理療法と徒手療法の組み合わせによる伸張効果を検証しており,腰痛患者や高齢患者など臨床的に応用の容易な基礎データとして有用な研究であると考える。
内側ハムストリングスの短縮は,骨盤の自由度を低下させ,日常生活において腰部へのストレスを徐々に高めてしまう要因の一つである。超音波療法やコントラクトリラックス(以下CR法)の単独での内側ハムストリングスに対する治療効果は数多く報告されているが,複数の治療を組み合わせ,それらの有効性を比較検討した報告はない。そこで本研究では,複数の治療の組み合わせによる比較を筋硬度および関節可動域を測定し行い,より有効な治療の組み合わせを明らかにすることを目的とした。
【方法】
被験者は健常成人男性13名(平均年齢21.6±0.6歳 平均身長172.7±6.5cm 平均体重65.6±8.2kg)で,整形外科的な既往がないことに加え,指床間距離が0cm以上である本学生とした。筋硬度計による測定と超音波療法の照射およびモビライゼーションによる横断マッサージ部位を,利き足の内側ハムストリングスの筋腱移行部(停止部から25%)とした。また,対象者には,実験の二日前から適度な運動やストレッチは控えるよう指導した。同一被験者は①コントロール,②超音波療法,③超音波療法とCR法,④超音波療法と軟部組織モビライゼーションの4つの施行を全て行った。各施行の間隔は1日以上あけ,順番はランダムに設定した。超音波療法は移動法を用い,照射時間は6分間,超音波強度は0.5~1.2W/cm2とした。CR法は伸張時の強度を自制内痛,伸張持続時間を30秒とし,収縮時の強度は主観的最大努力,収縮時間を8秒とした。軟部組織モビライゼーションは横断マッサージを用い,その時の圧は強度,施行時間を3分とし,同一検者が実施した。室温は24°に設定した。実験は2分間の安静腹臥位をとり,各施行前に,内側ハムストリングスに対する筋伸張性検査として筋硬度とSLRの測定を行った。その3分後に再度腹臥位となり,各施行(上記の①,②,③,④)いずれ一つを行った。各施行終了1分後,5分後,に筋硬度・SLRの順で測定を行った。解析方法は,筋硬度,SLR,の角度を介入前後の測定値をSPSSにて二元配置分散分析,多重比較Bonferroni法を用いて分析した。
【倫理的配慮,説明と同意】
大学倫理審査委員会の承認を得てから実施した(承認番13-Io-97)。被験者には本研究の目的と方法を説明し研究協力の賛同を得た。対象者に事前に,アンケート調査を実施し,利き足,スポーツ歴(種類,期間),下肢膝伸展挙上位(以下SLR)時の伸張時自制内痛部位を確認した。
【結果】
4群間すべてにおいて筋硬度の変化に有意差は認められなかったが,SLRではコントロール群(56.5±2.6°)と比較して超音波療法とCR法の組み合わせ(60.4±2.8°)に有意差(p<0.05)が認められた。
【考察】
今回の研究より,超音波療法とCR法の組み合わせが内側ハムストリングスの伸張状態を表すSLRを改善させる効果があることが明らかとなった。超音波療法は筋組織へ直接加温する効果があり,これが筋緊張の緩和に繋がる。このリラックスした状態で,CR法で筋を伸張し,最大収縮後の最大弛緩を利用することで,SLR拡大に繋がったと推測される。原田らによると,対象筋を伸張するとゴルジ腱器官が刺激され,Ib抑制が発生し対象筋のリラクゼーションによってROMが拡大すると報告されている。超音波の施行により,より伸張効果が増加したものと考えられた。
筋硬度に関しては先行研究でも,ストレッチにより股関節屈曲可動域は変化したが,有意な変化ではなかったと報告しており,今回の研究においても僅かな変動がみられたものの,有意差がみられないという先行研究と同様の結果が示された。
本研究では,コントロール群との比較において超音波療法・CR法の組み合わせによる治療がSLRを拡大させる可能性を示唆した。しかし,本研究においてはストレッチ単体での筋硬度・SLRの確認を行っていないため,超音波療法単独での効果か,またはこの組み合わせの効果かははっきりと明らかにすることができなかった。今後,単体の治療ではどのような変化が認められるか検討し,より効果的な治療法を明らかにしていきたい。
【理学療法学研究としての意義】
本研究は内側ハムストリングスを対象に物理療法と徒手療法の組み合わせによる伸張効果を検証しており,腰痛患者や高齢患者など臨床的に応用の容易な基礎データとして有用な研究であると考える。