[1546] 在宅パーキンソン病患者の介護保険サービス利用状況と運動療法の実施状況に関するアンケート調査
キーワード:パーキンソン病, 運動療法, アンケート
【はじめに,目的】薬物療法が主体のパーキンソン病(以下,PD)患者は,在宅療養の割合が高く,その数は増加傾向にある。在宅PD患者にとって重要な運動療法を行う場として,介護保険サービスの利用やホームエクササイズ(以下,自主練習)の習慣化が重要である。しかし,自主練習が安全に遂行可能な軽症例レベルのPD患者であれば,介護保険サービスの利用頻度に制限があったり,逆に重症例では自主練習の遂行が困難となる。自主練習を継続的に実施するためには,過去に指導を受けた経験や継続して運動療法を行う機会の確保など何らかの支援・機会が重要と考える。そこで,在宅PD患者の運動療法実施状況に着目して,介護保険サービスの利用状況,運動療法実施経験,および自主練習の実施状況についてアンケート調査を行った。
【方法】全国PD友の会M県支部会員159名に対し,介護保険利用や運動療法実施の動機となり得るPD症状や動作障害に関する主訴,介護保険の認定およびサービス利用状況,運動療法の実施状況について無記名式・郵送法によるアンケート調査を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には本研究の趣旨,得られたデータは研究の目的以外には使用しないことなどに関する十分な説明を書面にて行い,アンケート用紙の返信をもって同意を得た。なお,所属機関の倫理委員会の承認(整理番号:2010-121)を受けて実施した。
【結果】得られた有効回答数は91件(回収率57.2%)であった。日常生活における主訴では「動きが鈍い」「とっさの動作が困難」「力が出せない」などの回答率が60%以上であり,食事や整容といった身辺動作に関する主訴よりも高かった。対象者の75.8%が要介護認定を受け,介護保険サービスを利用していた者は67.0%であった。なお,要介護認定の有無について各主訴の有無とカイ二乗検定を行った結果,「とっさの動作が困難」「力が出せない」について有意差を認め(p<0.05),この2つの主訴に該当するPD患者の要介護認定率が高かった。これまで医療機関において運動療法の経験があったとの回答は44名(48.4%),そのうち,現在まで継続して実施しているのは11名(12.1%)であった。医療機関以外での運動療法も含め,まったく定期的な運動をしていないと回答したPD患者が34名(37.4%)存在した。自主練習の実施率は57名(62.6%)であったが,専門職からの指導を受けた経験があるPD患者は44名(48.4%)であった。自主練習の実施内容は,一日平均14.5±12.5分,ストレッチングや歩行,下肢筋力増強といった種目が多く,二重認知課題の回避や運動開始前のイメージといったPDの運動障害特性に焦点を当てたプログラムは極少数に限られていた。なお,自主練習実施の有無について,医療機関での運動療法経験の有無,および介護保険サービス利用の有無とカイ二乗検定を行ったが,有意差は認められなかった。
【考察】今回の調査結果から,疾患に対する理解や意識が最も高いと考えられるPD友の会会員であっても運動療法を実施する機会の確保がなされていないPD患者が存在すること,自主練習の実施率は60%以上であったが,十分にPDの運動障害特性に対応した内容ではないことが示唆された。また,要介護保険認定の有無については,「とっさの動作が困難」「力が出せない」という主訴が影響していることが示唆されたものの,自主練習の習慣化には,これまでの医療機関での運動療法経験の有無,ならびに介護保険サービス利用の有無が影響していない可能性が考えられる。そのため,機能維持や廃用防止を効果的に行うため,自主練習によって過用や誤用に陥ることを予防するためにも,在宅PD患者に対する適切な自主練習の指導と習慣化に向けた更なる取り組みが必要と考えられる。
【理学療法学研究としての意義】在宅PD患者の介護保険サービス利用状況と自主練習の実施状況の把握を通じて,問題点が明らかとなった。これら結果から,適切で効果的な自主練習の習慣化に向けた取り組みの検討が必要であると示唆された。
【方法】全国PD友の会M県支部会員159名に対し,介護保険利用や運動療法実施の動機となり得るPD症状や動作障害に関する主訴,介護保険の認定およびサービス利用状況,運動療法の実施状況について無記名式・郵送法によるアンケート調査を行った。
【倫理的配慮,説明と同意】対象者には本研究の趣旨,得られたデータは研究の目的以外には使用しないことなどに関する十分な説明を書面にて行い,アンケート用紙の返信をもって同意を得た。なお,所属機関の倫理委員会の承認(整理番号:2010-121)を受けて実施した。
【結果】得られた有効回答数は91件(回収率57.2%)であった。日常生活における主訴では「動きが鈍い」「とっさの動作が困難」「力が出せない」などの回答率が60%以上であり,食事や整容といった身辺動作に関する主訴よりも高かった。対象者の75.8%が要介護認定を受け,介護保険サービスを利用していた者は67.0%であった。なお,要介護認定の有無について各主訴の有無とカイ二乗検定を行った結果,「とっさの動作が困難」「力が出せない」について有意差を認め(p<0.05),この2つの主訴に該当するPD患者の要介護認定率が高かった。これまで医療機関において運動療法の経験があったとの回答は44名(48.4%),そのうち,現在まで継続して実施しているのは11名(12.1%)であった。医療機関以外での運動療法も含め,まったく定期的な運動をしていないと回答したPD患者が34名(37.4%)存在した。自主練習の実施率は57名(62.6%)であったが,専門職からの指導を受けた経験があるPD患者は44名(48.4%)であった。自主練習の実施内容は,一日平均14.5±12.5分,ストレッチングや歩行,下肢筋力増強といった種目が多く,二重認知課題の回避や運動開始前のイメージといったPDの運動障害特性に焦点を当てたプログラムは極少数に限られていた。なお,自主練習実施の有無について,医療機関での運動療法経験の有無,および介護保険サービス利用の有無とカイ二乗検定を行ったが,有意差は認められなかった。
【考察】今回の調査結果から,疾患に対する理解や意識が最も高いと考えられるPD友の会会員であっても運動療法を実施する機会の確保がなされていないPD患者が存在すること,自主練習の実施率は60%以上であったが,十分にPDの運動障害特性に対応した内容ではないことが示唆された。また,要介護保険認定の有無については,「とっさの動作が困難」「力が出せない」という主訴が影響していることが示唆されたものの,自主練習の習慣化には,これまでの医療機関での運動療法経験の有無,ならびに介護保険サービス利用の有無が影響していない可能性が考えられる。そのため,機能維持や廃用防止を効果的に行うため,自主練習によって過用や誤用に陥ることを予防するためにも,在宅PD患者に対する適切な自主練習の指導と習慣化に向けた更なる取り組みが必要と考えられる。
【理学療法学研究としての意義】在宅PD患者の介護保険サービス利用状況と自主練習の実施状況の把握を通じて,問題点が明らかとなった。これら結果から,適切で効果的な自主練習の習慣化に向けた取り組みの検討が必要であると示唆された。