[1549] 脳卒中患者の歩行能力と血清アルブミン値の検討
キーワード:脳卒中, 歩行, 血清アルブミン
【はじめに,目的】
脳卒中の歩行については,運動機能や認知機能との関連など様々な研究が行われている。また近年医療現場で栄養管理は重要とされ,脳卒中の栄養状態や運動機能に関する報告でも,低栄養がADL低下に関与する可能性が示唆されている。今回は,脳卒中の回復期リハビリテーション(以下,リハビリ)における栄養状態が歩行能力に及ぼす影響について,栄養状態の指標のひとつである血清アルブミン値(以下,ALB値)に着目して検討したため報告する。
【方法】
対象は,当院回復期リハビリ病棟より平成24年4月から平成25年9月に退院した脳卒中患者のうち,入院時歩行不能であった58名(男性31名,女性27名)とした。今回の検討での歩行能力の基準は,Functional Independence Measure(以下,FIM)の入院時歩行項目の採点が5点以上を歩行可能,4点以下を歩行不能とした。疾患内訳は脳内出血23名,脳梗塞34名,くも膜下出血1名であった。また,平均年齢は72.7±10.8歳,平均在院日数は142日であった。
評価項目は,入院時と退院時のFIM歩行項目,ALB値とし,当院で運用している患者データベースより後方視的に調査した。また,対象を退院時歩行能力別に退院時歩行可能群,退院時歩行不能群の2群に分類した。
検討1として,退院時歩行可能群と退院時歩行不能群それぞれにおいて入院時と退院時のALB値の差を検討した。検討2として,退院時歩行可能群と退院時歩行不能群の間におけるALB値の差を検討した。統計処理は,検討1には対応のあるt検定を,検討2には対応のないt検定を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言の基準に従い,データは研究以外の目的には使用せず,個人が特定されないよう匿名化した。また当院の規定に基づき個人情報の取り扱いには十分配慮して行った。
【結果】
退院時歩行可能群は24名(平均年齢67.4±9.0歳)で,退院時歩行不能群は34名(平均年齢76.4±10.4歳)であった。検討1の結果は,退院時歩行可能群の入院時ALB値は3.6±0.5g/dl,退院時ALB値は3.8±0.4であり,入院時と退院時のALB値に有意差が認められた(p<0.01)。また,退院時歩行不能群の入院時ALB値は3.3±0.5g/dl,退院時ALB値は3.4±0.5であり,入院時と退院時に有意差が認められなかった。検討2の結果は,退院時歩行可能群と退院時歩行不能群の間において,入院時ALB値には有意差が認められなかったが,退院時ALB値には有意差が認められた(p<0.01)。
【考察】
入院時に歩行不能であった脳卒中回復期リハビリ実施患者において,退院時歩行可能群と退院時歩行不能群の入院時と退院時のALB値を比較した結果,退院時歩行可能群では入院時より退院時のALB値が高く,また歩行不能群よりも退院時ALB値が高かった。若林らによるとALB値が3.6g/dl以上であれば栄養状態が良好であることが多いとされており,今回の退院時歩行可能群はこれに該当していた。これらより,栄養状態が歩行能力の向上に影響を及ぼしている可能性が示唆された。これまでの報告でも,脳卒中の歩行能力に下肢や体幹の運動機能は重要な因子として挙げられているため,これらの変化に栄養状態がどのように関連しているのか検討することが今後の検討課題である。
【理学療法学研究としての意義】
回復期の脳卒中患者において,栄養状態が歩行能力に影響を及ぼしている可能性が示唆されたため,歩行獲得を目的としたリハビリを行う際に栄養状態の評価や必要に応じて栄養改善を積極的に行うことで,歩行能力の改善につながる可能性を示すことができたと考える。
脳卒中の歩行については,運動機能や認知機能との関連など様々な研究が行われている。また近年医療現場で栄養管理は重要とされ,脳卒中の栄養状態や運動機能に関する報告でも,低栄養がADL低下に関与する可能性が示唆されている。今回は,脳卒中の回復期リハビリテーション(以下,リハビリ)における栄養状態が歩行能力に及ぼす影響について,栄養状態の指標のひとつである血清アルブミン値(以下,ALB値)に着目して検討したため報告する。
【方法】
対象は,当院回復期リハビリ病棟より平成24年4月から平成25年9月に退院した脳卒中患者のうち,入院時歩行不能であった58名(男性31名,女性27名)とした。今回の検討での歩行能力の基準は,Functional Independence Measure(以下,FIM)の入院時歩行項目の採点が5点以上を歩行可能,4点以下を歩行不能とした。疾患内訳は脳内出血23名,脳梗塞34名,くも膜下出血1名であった。また,平均年齢は72.7±10.8歳,平均在院日数は142日であった。
評価項目は,入院時と退院時のFIM歩行項目,ALB値とし,当院で運用している患者データベースより後方視的に調査した。また,対象を退院時歩行能力別に退院時歩行可能群,退院時歩行不能群の2群に分類した。
検討1として,退院時歩行可能群と退院時歩行不能群それぞれにおいて入院時と退院時のALB値の差を検討した。検討2として,退院時歩行可能群と退院時歩行不能群の間におけるALB値の差を検討した。統計処理は,検討1には対応のあるt検定を,検討2には対応のないt検定を用いて行い,有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言の基準に従い,データは研究以外の目的には使用せず,個人が特定されないよう匿名化した。また当院の規定に基づき個人情報の取り扱いには十分配慮して行った。
【結果】
退院時歩行可能群は24名(平均年齢67.4±9.0歳)で,退院時歩行不能群は34名(平均年齢76.4±10.4歳)であった。検討1の結果は,退院時歩行可能群の入院時ALB値は3.6±0.5g/dl,退院時ALB値は3.8±0.4であり,入院時と退院時のALB値に有意差が認められた(p<0.01)。また,退院時歩行不能群の入院時ALB値は3.3±0.5g/dl,退院時ALB値は3.4±0.5であり,入院時と退院時に有意差が認められなかった。検討2の結果は,退院時歩行可能群と退院時歩行不能群の間において,入院時ALB値には有意差が認められなかったが,退院時ALB値には有意差が認められた(p<0.01)。
【考察】
入院時に歩行不能であった脳卒中回復期リハビリ実施患者において,退院時歩行可能群と退院時歩行不能群の入院時と退院時のALB値を比較した結果,退院時歩行可能群では入院時より退院時のALB値が高く,また歩行不能群よりも退院時ALB値が高かった。若林らによるとALB値が3.6g/dl以上であれば栄養状態が良好であることが多いとされており,今回の退院時歩行可能群はこれに該当していた。これらより,栄養状態が歩行能力の向上に影響を及ぼしている可能性が示唆された。これまでの報告でも,脳卒中の歩行能力に下肢や体幹の運動機能は重要な因子として挙げられているため,これらの変化に栄養状態がどのように関連しているのか検討することが今後の検討課題である。
【理学療法学研究としての意義】
回復期の脳卒中患者において,栄養状態が歩行能力に影響を及ぼしている可能性が示唆されたため,歩行獲得を目的としたリハビリを行う際に栄養状態の評価や必要に応じて栄養改善を積極的に行うことで,歩行能力の改善につながる可能性を示すことができたと考える。