[1568] 神奈川県立特別支援学校における内部,外部専門家導入の取り組み
Keywords:特別支援学校, 連携, 協働
【はじめに,目的】
神奈川県では,「自立活動医事相談」として自立活動の指導をより向上させるため神奈川県立総合療育相談センターから県立特別支援学校にリハビリテーション科医師(以下MD),理学療法士(以下PT),作業療法士(以下OT),言語聴覚士(以下ST)からなるリハチームを派遣する制度が始まった。これら外部専門家の助言指導が有効であることや児童生徒の指導に関する専門性をさらに高めるため2008年6月から県立特別支援学校にPT,OT,ST,臨床心理士(以下心理)を自立活動教諭(専門職)として正規採用し,2013年4月現在22校に35名(PT8,OT10,ST7,心理10)を配置している。神奈川県立総合療育相談センター(旧ゆうかり園)は,早期発見,早期療育システムの確立や地域への巡回訪問相談,特別支援学校訪問など脳性まひ児等障害児への長期的支援を行い,神奈川県の肢体不自由児療育の中心的役割を担ってきた。本発表では,PT配置校全教員へのアンケートを通し,内部PTの役割を明確にするとともに,現状での課題を検討し,今後特別支援学校に関わるPTに求められる実践について報告すると共に,ある特別支援学校を例として,PT配置前後の自立活動医事相談(MD)における相談内容の質的・量的変化を比較し,医療連携についても考察する。
【方法】
[1]PTが配置されている特別支援学校8校における全教員に対しアンケートを実施し,内部PTとの連携・協働における①きっかけ②相談方法③相談内容④効果⑤PT配置への意見,感想等で現状と今後の課題についてまとめた。[2]PT配置前後における自立活動医事相談(MD)の内容等を比較し,これまでの成果,課題,今後の方向性について検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本発表にあたり,学校長ならびに神奈川県教育委員会で発表主旨,内容について承認を得た。
【結果】
特別支援学校の児童生徒の重度・重複,多様化への対応に対し,リハビリテーションチーム医療の学校支援は必須であり,学校生活に必要な医療的視点を得るために内部に専門職が配置された後も,外部専門家として自立活動医事相談を活用している。また医事相談を通して,児童生徒に応じて必要な医療機関を紹介し,医療機関も含め外部機関との連携が円滑になったことなどアンケート結果からは,内部PT配置への良好な結果を得た。
【考察】
2009年特別支援学校の学習指導要領が改訂され,重複障害児の指導にあたっては,専門的な技能を有する教員間で協力する指導や外部の専門家を活用するよう明記され,全国の特別支援学校でPTが活用されている。しかしPTを配置している特別支援学校は少なく,特別支援学校に関わっているのは,外部専門家が大半である。特別支援学校にPTが配置されたことで,(1)身体面における医療的見解(2)補装具作成時に介助側からの視点を情報提供(3)継続的に関わることで経過を把握し,学習課題等を教員と共につくる(4)外部専門家のアドバイスをさらに有効活用する等もできるようになった。このように内部専門家は,子ども達の学校生活に視点をあて,将来につながる支援を医療,福祉と連携しながら教員と共に教育計画を作り上げていくことができる。また今後は,長期的視点に立ち医療的モデル-社会的モデル-教育的モデルを含めた横断的,縦断的な内部専門家と外部専門家の連携,協働スタイルのシステム確立が特別支援学校に必要となってくる。神奈川県立特別支援学校においては,外部専門家導入10年,内部専門家導入5年が経過した。特別支援学校にPT(自立活動教諭)として,学校生活の流れや教育課程授業づくりなどの教育現場の基本と実情を理解した上で,具体的に取り入れやすい助言を提供できるようになった。今後の課題である個別教育計画への参画も含めた教員のチームアプローチの改善や教員が主体となって使える評価バッテリーの検討等,教員の指導力向上のための試みが必要となるだろう。
【理学療法学研究としての意義】
2012年「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」が中央教育審議会で報告され,さらに外部専門家を含むPTの活用が期待されている。今後はさらにPTが活躍できる新たなフィールドとして特別支援教育の現場で,PTとしての知識,技術を児童・生徒の教育支援に活かす時代となる事は確かである。
神奈川県では,「自立活動医事相談」として自立活動の指導をより向上させるため神奈川県立総合療育相談センターから県立特別支援学校にリハビリテーション科医師(以下MD),理学療法士(以下PT),作業療法士(以下OT),言語聴覚士(以下ST)からなるリハチームを派遣する制度が始まった。これら外部専門家の助言指導が有効であることや児童生徒の指導に関する専門性をさらに高めるため2008年6月から県立特別支援学校にPT,OT,ST,臨床心理士(以下心理)を自立活動教諭(専門職)として正規採用し,2013年4月現在22校に35名(PT8,OT10,ST7,心理10)を配置している。神奈川県立総合療育相談センター(旧ゆうかり園)は,早期発見,早期療育システムの確立や地域への巡回訪問相談,特別支援学校訪問など脳性まひ児等障害児への長期的支援を行い,神奈川県の肢体不自由児療育の中心的役割を担ってきた。本発表では,PT配置校全教員へのアンケートを通し,内部PTの役割を明確にするとともに,現状での課題を検討し,今後特別支援学校に関わるPTに求められる実践について報告すると共に,ある特別支援学校を例として,PT配置前後の自立活動医事相談(MD)における相談内容の質的・量的変化を比較し,医療連携についても考察する。
【方法】
[1]PTが配置されている特別支援学校8校における全教員に対しアンケートを実施し,内部PTとの連携・協働における①きっかけ②相談方法③相談内容④効果⑤PT配置への意見,感想等で現状と今後の課題についてまとめた。[2]PT配置前後における自立活動医事相談(MD)の内容等を比較し,これまでの成果,課題,今後の方向性について検討した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本発表にあたり,学校長ならびに神奈川県教育委員会で発表主旨,内容について承認を得た。
【結果】
特別支援学校の児童生徒の重度・重複,多様化への対応に対し,リハビリテーションチーム医療の学校支援は必須であり,学校生活に必要な医療的視点を得るために内部に専門職が配置された後も,外部専門家として自立活動医事相談を活用している。また医事相談を通して,児童生徒に応じて必要な医療機関を紹介し,医療機関も含め外部機関との連携が円滑になったことなどアンケート結果からは,内部PT配置への良好な結果を得た。
【考察】
2009年特別支援学校の学習指導要領が改訂され,重複障害児の指導にあたっては,専門的な技能を有する教員間で協力する指導や外部の専門家を活用するよう明記され,全国の特別支援学校でPTが活用されている。しかしPTを配置している特別支援学校は少なく,特別支援学校に関わっているのは,外部専門家が大半である。特別支援学校にPTが配置されたことで,(1)身体面における医療的見解(2)補装具作成時に介助側からの視点を情報提供(3)継続的に関わることで経過を把握し,学習課題等を教員と共につくる(4)外部専門家のアドバイスをさらに有効活用する等もできるようになった。このように内部専門家は,子ども達の学校生活に視点をあて,将来につながる支援を医療,福祉と連携しながら教員と共に教育計画を作り上げていくことができる。また今後は,長期的視点に立ち医療的モデル-社会的モデル-教育的モデルを含めた横断的,縦断的な内部専門家と外部専門家の連携,協働スタイルのシステム確立が特別支援学校に必要となってくる。神奈川県立特別支援学校においては,外部専門家導入10年,内部専門家導入5年が経過した。特別支援学校にPT(自立活動教諭)として,学校生活の流れや教育課程授業づくりなどの教育現場の基本と実情を理解した上で,具体的に取り入れやすい助言を提供できるようになった。今後の課題である個別教育計画への参画も含めた教員のチームアプローチの改善や教員が主体となって使える評価バッテリーの検討等,教員の指導力向上のための試みが必要となるだろう。
【理学療法学研究としての意義】
2012年「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」が中央教育審議会で報告され,さらに外部専門家を含むPTの活用が期待されている。今後はさらにPTが活躍できる新たなフィールドとして特別支援教育の現場で,PTとしての知識,技術を児童・生徒の教育支援に活かす時代となる事は確かである。