[1571] Gustilo分類typeIIIb下腿骨幹部開放骨折4例の機能成績
Keywords:Gustilo分類typeⅢb, 下腿骨幹部骨折, 機能成績
【はじめに,目的】
Gustilo分類typeIIIb(以下,GAIIIb)脛骨開放骨折は骨軟部組織の広範な欠損を伴う高エネルギー外傷であり,治療では骨接合,骨移植,軟部組織再建等の高度な骨折治療技術とマイクロサージャリー技術が必要となる。また,GAIIIbは通常高度な創汚染を伴い切断に至る症例も多い。そのため患肢を温存し骨軟部組織の再建を完遂できたかどうかが議論になることが多く,再建後の機能的帰結について言及している報告は少ない。今回,当院で骨軟部組織再建を行ったGAIIIb下腿骨幹部開放骨折症例の機能成績を調査したので報告する。
【方法】
対象は2011年8月から2013年11月の間に当院で治療を行ったGAIIIb下腿骨幹部開放骨折8例のうち,切断に至った2例と経過を追えなかった2例を除外した4例である。
症例1は40代男性で職業は農業である。芝刈り機のキャタピラに巻き込まれ左下腿骨幹部開放骨折を受傷。脛骨は1cm欠損,皮膚欠損14×7cmであった。受傷後7日で逆行性腓腹動脈皮弁を行い,23日で脛骨外側plating+腸骨移植を行い再建した。
症例2は60代女性で職業は農業である。除雪機に左下腿を巻き込まれ左下腿骨幹部開放骨折を受傷。脛骨は5cm欠損,皮膚欠損27×13cm,前脛骨筋,長趾伸筋,深腓骨神経は受傷時にえぐりとられ欠損した。受傷後15日で広背筋皮弁+肩甲骨移植+脛骨内側platingを行い再建した。
症例3は60代男性で職業は農業である。融雪剤散布機のキャタピラに巻き込まれ右下腿近位骨幹部開放骨折を受傷。脛骨は10cm部分欠損,皮膚欠損8×4cm,前脛骨筋,後脛骨筋は部分欠損していた。受傷後2日で前外側大腿皮弁+脛骨外側platingを行い,12週で腸骨移植を行い再建した。
症例4は30代男性で職業は接客業である。バイク事故で左下腿遠位骨幹部開放骨折を受傷。脛骨は2.5cm欠損,皮膚欠損24×13cm,長母趾屈筋は断裂していた。受傷後7日で広背筋皮弁+脛骨内側plating,9週で腸骨移植を行い再建した。
理学療法は皮弁が安定する約1週までは患肢の安静挙上を保つため患部外運動を行い,皮弁安定後より足関節ROM運動を開始した。荷重開始以降は歩行指導と荷重位筋力トレーニングを行った。荷重開始まではPTB装具を作製し装具歩行は早期から開始した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本調査はヘルシンキ宣言に沿って実施した。当院倫理委員会の承認を得て,対象に口頭と文書で説明し同意を得た。
【結果】
症例1は受傷後6か月で,ROMは足関節背屈20°底屈45°,足関節底屈MMT5,独歩獲得し歩行時痛なし,階段昇降1足1段可能,患者満足度はVAS77/100mm,日本足の外科学会足関節・後足部判定基準(以下,JSSF scale)90/100点,農業復帰を果たしている。
症例2は受傷後1年で,ROMは足関節背屈5°底屈45°,足関節底屈MMT3,独歩獲得し歩行時痛なし,階段昇降1足1段可能,患者満足度はVAS65/100mm,JSSF scale93/100点,農業復帰を果たしている。
症例3は受傷後6か月で,足関節背屈25°底屈45°,足関節底屈MMT2+,VAS12mmの歩行時痛がありADLはT-cane歩行,階段昇降1足1段可能,患者満足度はVAS60/100mm,JSSF scale64/100点,農業復帰を果たしている。
症例4は受傷後7か月で,ROMは足関節背屈15°底屈40°,足関節底屈MMT4,独歩獲得しているがVAS22mmの歩行時痛あり,階段昇降1足1段可能,患者満足度はVAS80/100mm,JSSF scale79/100点,接客業に復帰している。
【考察】
重度四肢外傷では少なからず後遺障害は残る。理学療法では後遺障害を予測し,障害を最小限にするための予防的アプローチが重要である。当院では受傷後早期から理学療法介入を行い,廃用予防としての患部外運動,拘縮予防のためのROM運動や装具療法等を実施している。Lee(2012)は前外側大腿皮弁で再建したGAIIIb下腿開放骨折の臨床成績を報告し,成績良好例と不良例の割合はほぼ同じであった。当院におけるGAIIIb下腿骨幹部開放骨折の4例は全例復職し概ね良好な機能を獲得できた。
症例1はROM,筋力,JSSF scaleともに良好な成績を得た。これは他の症例より受傷時の軟部組織損傷が少なかったことが影響している。症例2は前方コンパートメントの筋欠損や深腓骨神経欠損により下垂足を呈したため足関節背屈ROM制限が残ったと考えられるが,JSSF scaleは高値であった。症例3は良好なROMを獲得したがJSSF scaleは低値であり歩行時痛が遺残していた。症例4も歩行時痛が遺残しておりJSSF scaleも症例1,2より低かった。機能outcome向上においては疼痛軽減が必要である可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
重度下肢外傷症例は単一施設で経過を追うことが難しい。そのため術後理学療法について比較検討することは困難であり,今回のように数例の症例報告を蓄積することは重要である。
Gustilo分類typeIIIb(以下,GAIIIb)脛骨開放骨折は骨軟部組織の広範な欠損を伴う高エネルギー外傷であり,治療では骨接合,骨移植,軟部組織再建等の高度な骨折治療技術とマイクロサージャリー技術が必要となる。また,GAIIIbは通常高度な創汚染を伴い切断に至る症例も多い。そのため患肢を温存し骨軟部組織の再建を完遂できたかどうかが議論になることが多く,再建後の機能的帰結について言及している報告は少ない。今回,当院で骨軟部組織再建を行ったGAIIIb下腿骨幹部開放骨折症例の機能成績を調査したので報告する。
【方法】
対象は2011年8月から2013年11月の間に当院で治療を行ったGAIIIb下腿骨幹部開放骨折8例のうち,切断に至った2例と経過を追えなかった2例を除外した4例である。
症例1は40代男性で職業は農業である。芝刈り機のキャタピラに巻き込まれ左下腿骨幹部開放骨折を受傷。脛骨は1cm欠損,皮膚欠損14×7cmであった。受傷後7日で逆行性腓腹動脈皮弁を行い,23日で脛骨外側plating+腸骨移植を行い再建した。
症例2は60代女性で職業は農業である。除雪機に左下腿を巻き込まれ左下腿骨幹部開放骨折を受傷。脛骨は5cm欠損,皮膚欠損27×13cm,前脛骨筋,長趾伸筋,深腓骨神経は受傷時にえぐりとられ欠損した。受傷後15日で広背筋皮弁+肩甲骨移植+脛骨内側platingを行い再建した。
症例3は60代男性で職業は農業である。融雪剤散布機のキャタピラに巻き込まれ右下腿近位骨幹部開放骨折を受傷。脛骨は10cm部分欠損,皮膚欠損8×4cm,前脛骨筋,後脛骨筋は部分欠損していた。受傷後2日で前外側大腿皮弁+脛骨外側platingを行い,12週で腸骨移植を行い再建した。
症例4は30代男性で職業は接客業である。バイク事故で左下腿遠位骨幹部開放骨折を受傷。脛骨は2.5cm欠損,皮膚欠損24×13cm,長母趾屈筋は断裂していた。受傷後7日で広背筋皮弁+脛骨内側plating,9週で腸骨移植を行い再建した。
理学療法は皮弁が安定する約1週までは患肢の安静挙上を保つため患部外運動を行い,皮弁安定後より足関節ROM運動を開始した。荷重開始以降は歩行指導と荷重位筋力トレーニングを行った。荷重開始まではPTB装具を作製し装具歩行は早期から開始した。
【倫理的配慮,説明と同意】
本調査はヘルシンキ宣言に沿って実施した。当院倫理委員会の承認を得て,対象に口頭と文書で説明し同意を得た。
【結果】
症例1は受傷後6か月で,ROMは足関節背屈20°底屈45°,足関節底屈MMT5,独歩獲得し歩行時痛なし,階段昇降1足1段可能,患者満足度はVAS77/100mm,日本足の外科学会足関節・後足部判定基準(以下,JSSF scale)90/100点,農業復帰を果たしている。
症例2は受傷後1年で,ROMは足関節背屈5°底屈45°,足関節底屈MMT3,独歩獲得し歩行時痛なし,階段昇降1足1段可能,患者満足度はVAS65/100mm,JSSF scale93/100点,農業復帰を果たしている。
症例3は受傷後6か月で,足関節背屈25°底屈45°,足関節底屈MMT2+,VAS12mmの歩行時痛がありADLはT-cane歩行,階段昇降1足1段可能,患者満足度はVAS60/100mm,JSSF scale64/100点,農業復帰を果たしている。
症例4は受傷後7か月で,ROMは足関節背屈15°底屈40°,足関節底屈MMT4,独歩獲得しているがVAS22mmの歩行時痛あり,階段昇降1足1段可能,患者満足度はVAS80/100mm,JSSF scale79/100点,接客業に復帰している。
【考察】
重度四肢外傷では少なからず後遺障害は残る。理学療法では後遺障害を予測し,障害を最小限にするための予防的アプローチが重要である。当院では受傷後早期から理学療法介入を行い,廃用予防としての患部外運動,拘縮予防のためのROM運動や装具療法等を実施している。Lee(2012)は前外側大腿皮弁で再建したGAIIIb下腿開放骨折の臨床成績を報告し,成績良好例と不良例の割合はほぼ同じであった。当院におけるGAIIIb下腿骨幹部開放骨折の4例は全例復職し概ね良好な機能を獲得できた。
症例1はROM,筋力,JSSF scaleともに良好な成績を得た。これは他の症例より受傷時の軟部組織損傷が少なかったことが影響している。症例2は前方コンパートメントの筋欠損や深腓骨神経欠損により下垂足を呈したため足関節背屈ROM制限が残ったと考えられるが,JSSF scaleは高値であった。症例3は良好なROMを獲得したがJSSF scaleは低値であり歩行時痛が遺残していた。症例4も歩行時痛が遺残しておりJSSF scaleも症例1,2より低かった。機能outcome向上においては疼痛軽減が必要である可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
重度下肢外傷症例は単一施設で経過を追うことが難しい。そのため術後理学療法について比較検討することは困難であり,今回のように数例の症例報告を蓄積することは重要である。