[1576] 地域少年野球に所属する児童における肥満度と体格・体力・運動能力の関係について
キーワード:地域少年野球, 運動能力, 肥満度
【はじめに】近年,小児肥満の問題が深刻化し,メタボリックシンドロームとの関連が問題視されている。地域少年野球に所属する児童の中にも,小児肥満傾向の児童が見受けられる。肥満傾向の児童は,運動実施に当たり様々な要因により制限を受けることが予測されるため,野球指導を行う上で個々の身体機能を把握することは重要である。肥満児の運動能力ついての報告は散見されるが,習慣的に運動を行っている少年野球に所属する肥満傾向児における体格・体力・運動能力に関する報告は少ない。そこで本研究の目的は地域少年野球に所属する児童における肥満度と体格・体力・運動能力の関係を明らかにすることを目的とした。
【方法】対象者は,地域少年野球チームに所属する小学5,6年生(10~12歳)の男子20名を対象とした。肥満度は文部科学省が推奨している「身長別標準体重」を用い,20%以上を肥満傾向児とした。測定項目は身長,体重,握力,長距離走(2.5km),50m走,片脚立位(60秒を上限とした),立位体前屈,膝伸展筋力(体重比),軟式球投げ,上体起こし(30秒間),腹囲,投球側肩関節屈曲関節可動域(肩ROM),投球時ステップ脚の股関節屈曲可動域(股ROM)とした。体力テストの方法は文部科学省の「新体力テスト実施要項」に準じて行った。膝伸展筋力はμ-tas(アニマ社製)を用い椅子座位にて投球時体重支持側下肢(利き足)にて2回行った値の最大値を採用し体重比(%)を算出した。腹囲の測定は立位呼気時,臍高位で測定した。統計解析には,各測定間の関係を検討するためにPearsonの相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】すべての児童に対して研究の趣旨,内容,それに伴う危険性について事前に口頭で説明し,保護者に対しては書面にて十分な説明を行い,署名を以って同意を得た。
【結果】肥満度20%以上の肥満傾向児であった者は全体の20%で4名であった。各測定値は,身長146.4±6.3cm,体重42.8±10.8kg,肥満度3.57±18.0%(範囲-15.9~47.7%),握力22.7±3.5kg,長距離走810.6±111.3秒,50m走9.6±1.0秒,片側立位59.6±1.5秒,立位体前屈0.6±8.1cm,膝伸展筋力0.4±0.1%,軟式球投げ47±7.6m,上体起こし18.9±6.0回,腹囲69.8±12.4cm,肩ROM 180.0±0.0°,股ROM 122.5±3.7°であった。肥満度と有意な相関が認められた項目は,50m走(r=0.67),握力(r=0.62),長距離走(r=0.83),膝伸展筋力(r=-0.44),上体起こし(r=-0.55),腹囲(r=0.92),股ROM(r=-0.91)であった。
【考察】本研究では,地域少年野球に所属する肥満傾向児の体格・体力・運動能力の特徴を明らかにすることを目的に肥満度と体格・体力・運動能力の関係について検討を行った。本研究の結果,地域少年野球チームに所属する児童において,肥満度が高いほど,腹囲が大きく,50m走,長距離走,膝伸展筋力,上体起こしの能力が低く,股関節屈曲角度が低かったが,握力は強い結果となった。肥満児の運動能力に関して,長距離走などを含む全身持久力や筋力,柔軟性,バランス能力などの低下が報告されている。しかし一方で,握力,上体起こし,立位体前屈の体力因子は,局所的な身体機能の影響を受けていると報告されている。本研究においても,握力を除いた多種の体力・運動能力は,肥満度が高い者ほど低下していた点で,これらの報告と同様の結果となった。一般的に小児肥満への対策としては,食習慣の改善とともに,運動の習慣化や身体活動量の増加が推奨されている。今回の対象である地域少年野球チームに所属する児童は,運動を定期的(週2回程度)に行っているものの,全体の20%が肥満傾向児であった。地域少年野球では,運動が苦手な子供が体力づくりや,運動の習慣化を目的に入部することもあり,野球の技術面の向上以外の効果も期待されている。肥満児は運動を実施するにあたり体格的,体力的,運動能力的に様々な制限を受けることが予測されることから,肥満度を低下させるよう働きかけると共に,肥満傾向児の運動能力を把握した上で指導を行う事が重要であると考える。肥満傾向児が,成長とともに健全な身体的,精神的発育を遂げるよう,また障害発生予防の面からも,我々理学療法士による専門性を生かした運動指導の対応が求められる。
【理学療法学研究としての意義】本研究より,地域少年野球に所属する児童において,肥満度の高い者は,多種の体力・運動能力が低下していることが明らかになった。肥満傾向児の運動能力を把握した上で,個々の運動指導を行うことが大切であり,今後,我々理学療法士による専門性を生かした運動指導が期待される。
【方法】対象者は,地域少年野球チームに所属する小学5,6年生(10~12歳)の男子20名を対象とした。肥満度は文部科学省が推奨している「身長別標準体重」を用い,20%以上を肥満傾向児とした。測定項目は身長,体重,握力,長距離走(2.5km),50m走,片脚立位(60秒を上限とした),立位体前屈,膝伸展筋力(体重比),軟式球投げ,上体起こし(30秒間),腹囲,投球側肩関節屈曲関節可動域(肩ROM),投球時ステップ脚の股関節屈曲可動域(股ROM)とした。体力テストの方法は文部科学省の「新体力テスト実施要項」に準じて行った。膝伸展筋力はμ-tas(アニマ社製)を用い椅子座位にて投球時体重支持側下肢(利き足)にて2回行った値の最大値を採用し体重比(%)を算出した。腹囲の測定は立位呼気時,臍高位で測定した。統計解析には,各測定間の関係を検討するためにPearsonの相関係数を用いた。有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】すべての児童に対して研究の趣旨,内容,それに伴う危険性について事前に口頭で説明し,保護者に対しては書面にて十分な説明を行い,署名を以って同意を得た。
【結果】肥満度20%以上の肥満傾向児であった者は全体の20%で4名であった。各測定値は,身長146.4±6.3cm,体重42.8±10.8kg,肥満度3.57±18.0%(範囲-15.9~47.7%),握力22.7±3.5kg,長距離走810.6±111.3秒,50m走9.6±1.0秒,片側立位59.6±1.5秒,立位体前屈0.6±8.1cm,膝伸展筋力0.4±0.1%,軟式球投げ47±7.6m,上体起こし18.9±6.0回,腹囲69.8±12.4cm,肩ROM 180.0±0.0°,股ROM 122.5±3.7°であった。肥満度と有意な相関が認められた項目は,50m走(r=0.67),握力(r=0.62),長距離走(r=0.83),膝伸展筋力(r=-0.44),上体起こし(r=-0.55),腹囲(r=0.92),股ROM(r=-0.91)であった。
【考察】本研究では,地域少年野球に所属する肥満傾向児の体格・体力・運動能力の特徴を明らかにすることを目的に肥満度と体格・体力・運動能力の関係について検討を行った。本研究の結果,地域少年野球チームに所属する児童において,肥満度が高いほど,腹囲が大きく,50m走,長距離走,膝伸展筋力,上体起こしの能力が低く,股関節屈曲角度が低かったが,握力は強い結果となった。肥満児の運動能力に関して,長距離走などを含む全身持久力や筋力,柔軟性,バランス能力などの低下が報告されている。しかし一方で,握力,上体起こし,立位体前屈の体力因子は,局所的な身体機能の影響を受けていると報告されている。本研究においても,握力を除いた多種の体力・運動能力は,肥満度が高い者ほど低下していた点で,これらの報告と同様の結果となった。一般的に小児肥満への対策としては,食習慣の改善とともに,運動の習慣化や身体活動量の増加が推奨されている。今回の対象である地域少年野球チームに所属する児童は,運動を定期的(週2回程度)に行っているものの,全体の20%が肥満傾向児であった。地域少年野球では,運動が苦手な子供が体力づくりや,運動の習慣化を目的に入部することもあり,野球の技術面の向上以外の効果も期待されている。肥満児は運動を実施するにあたり体格的,体力的,運動能力的に様々な制限を受けることが予測されることから,肥満度を低下させるよう働きかけると共に,肥満傾向児の運動能力を把握した上で指導を行う事が重要であると考える。肥満傾向児が,成長とともに健全な身体的,精神的発育を遂げるよう,また障害発生予防の面からも,我々理学療法士による専門性を生かした運動指導の対応が求められる。
【理学療法学研究としての意義】本研究より,地域少年野球に所属する児童において,肥満度の高い者は,多種の体力・運動能力が低下していることが明らかになった。肥満傾向児の運動能力を把握した上で,個々の運動指導を行うことが大切であり,今後,我々理学療法士による専門性を生かした運動指導が期待される。