第49回日本理学療法学術大会

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生体評価学7

2014年6月1日(日) 12:15 〜 13:05 ポスター会場 (基礎)

座長:今田健(錦海リハビリテーション病院リハビリテーション技術部)

基礎 ポスター

[1587] 動的バランス評価としての足踏み動作の有効性の検討

河西謙吾1, 小澤拓也2, 政田純兵1, 河合あづさ1 (1.社会医療法人協和会加納総合病院リハビリテーション科, 2.社会医療法人協和会)

キーワード:足踏み動作, 動的バランス評価, 下肢荷重計

【目的】
力学的に不安定な二足歩行で移動する人間にとってバランスを保持することは重要である。バランスは一般的に静的・動的に分けられ,移動動作にとっては動的バランスがより重要であると報告されている。静的バランスは姿勢での評価や重心動揺計を用いた客観的な評価も可能である一方,動的バランスはTimed Up and Go Test・Berg Balance Scale(以下TUG・BBS)といった課題指向型の評価が用いられる。これらの動的バランスの評価は特別な器具を要さないもののTUGは転倒リスクがあり,BBSは評価に時間を要することが問題である。これらの問題点を解決するために,安全且つ簡便なテストとして我々は足踏み動作を用いた動的バランス評価を実施している。足踏みを用いた動的バランス評価についての先行研究は回数を指標として敏捷性を評価するステッピングテスト(池添ら2009)や支助の有無など足踏みが安定して行えるか否かといった点を評価する足踏みバランステスト(今泉1999)がある。しかし,これらの足踏みテストも足踏み動作の回数やそれが出来るか否かという指標のみであり,足踏み動作を実施する上での観察点が不十分と考えられる。そこで本研究では下肢荷重計を用いて足踏み動作における質的な側面から足踏み動作を分析し,その有効性を検討することを目的とする。
【対象と方法】
対象は平成25年7月から平成25年9月の間に当院へ入院し,上肢支持なく足踏みが可能な患者52名(平均年齢:65.5±15.5)とした。足踏み動作は測定板上に16cmの間隔で貼付されたマーカー(直径15mm,厚さ2mm)を足底中央で踏み,前方の目印を注視する姿勢を開始肢位とした。測定時の条件は任意の速さとし,出来る限りその場での足踏みを行わせた。測定項目は足踏み動作時の動揺や足部接地位置の変位を評価する指標として総合COP総軌跡長・総合COP外周面積・総合COP左右幅・総合COP前後幅(以下総軌跡長・外周面積・左右幅・前後幅とする),下肢の支持性や立脚期から遊脚期の移行を評価する指標として総合立脚期平均(両脚支持期も含む)・総合遊脚期平均・総合両脚支持期平均(以下立脚期・遊脚期・両脚支持期とする)を測定した。これらの測定項目はアニマ社製ツイングラビコーダーGP-6000を使用し,3歩目から左右各々15歩(合計で30歩)を取り込み周期100Hzでデータを採取した。また足踏み動作の動的バランス評価としての検証は,BBSの総合得点との対応させることとし,スピアマンの順位相関検定を用い,有意水準は1%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
対象者にはヘルシンキ宣言に基づいて本研究の主旨を説明し,同意を得た上で研究を行った。
【結果】
BBSの総合得点と各々の足踏み動作項目との相関係数は外周面積(r=-0.61),前後幅(r=-0.51),立脚期(r=-0.62),遊脚期(r=0.62),両脚支持期(r=-0.62)であり,有意な相関関係を認めた。総軌跡長と左右幅に関しては有意な相関関係を認めなかった。
【考察】
BBSの総合得点が低く,動的バランス能力が低下していると考えられる症例ほど立脚期が長く,遊脚期が短い,そして両脚支持期が長いという結果になった。今回のデータは立脚期に両脚支持期も含まれるといった特性上,両脚支持期が延長し,遊脚期が短縮するという結果から単脚支持期も短縮していることが導かれる。両脚支持期の延長は,足の踏み替え時間の増大と関連すると考えられため,このことは限られた時間の中での足踏み回数の減少に繋がり,池添らのステッピングテストの結果を支持するものと考えられた。またBBSの総合得点が低いものほど外周面積と前後幅が増大しており,バランス能力の低い症例ほどその場での足踏みが困難であり,特に前後への動揺が大きいことが要因と考えられた。以上より,バランス能力の高い症例ほど単脚支持期が安定し,遊脚期との踏み替えがスムーズで,開始位置から変位することなく足踏み動作が可能であることが分かった。これらより足踏みテストの実施にはこれらの視点からの評価を加える必要があると考えられた。今後はBBSの詳細項目での足踏み動作との関連性や下肢筋力の関係,また足踏み動作を実施する際のリズムなどの課題設定について調査が必要と考えられた。その上で,足踏み動作の特性を加味した基準を詳細に検討し,足踏みテストの確立を目指したい。
【理学療法学研究としての意義】
動的バランス評価として安全で簡易な足踏み動作を検査として確立させることは,理学療法における新たな動的バランスの客観的評価法を創造することに繋がり,理学療法研究としての意義は高いものと考えられる。