[1591] がん患者の身体側面の健康関連QOLと日常生活動作項目の関連性
キーワード:がん, 健康関連QOL, 日常生活動作
【目的】がん患者の身体能力と精神的・役割/社会的側面の健康関連QOL(HRQOL)は関連しないが,身体的側面のHRQOLとは関連する(水澤ら,2012)。そこで身体的側面のHRQOLを上位,身体能力を下位として階層構造を検討した結果,身体的側面のHRQOLにはPerformance Status(PS)が影響し,PSには日常生活動作(ADL)が影響していた(水澤ら,2013)。したがって身体的側面のHRQOLを向上させるにはPSを向上させればよいと考えられるが,病的骨折や運動麻痺などによって活動性が制限されると,全身状態が良好でもPSは低くなってしまう。それゆえ何らかの機能障害を有する場合,PSにはADLが影響しているため,ADLを向上させることで間接的にHRQOLを向上させなければならない。そのような場面で効率的にHRQOLを向上させるには,HRQOLと特に関連性の強いADL項目を同定しておく必要がある。そこで本研究では,がん患者の身体的側面のHRQOLと各ADL項目の関連性について検討した。
【方法】対象はがん患者20名(男性8名,女性12名)とし,年齢は62.9±13.1歳であった。がんリハのステージは予防的0名,回復的9名,維持的9名,緩和的2名であった。がんの種類は癌腫9名,肉腫9名,造血器由来が2名であった。ADLはFunctional Independence Measureの運動項目(mFIM),QOLはSF-36v2TMによって評価した。なおSF-36v2TMの8下位項目からは身体的側面のサマリースコア(PCS)を算出した。統計解析としては,まず各ADL項目とPCSのSpearmanの順位相関係数を求めた。mFIMは13項目と多いため,多重検定の問題を危惧し,False Discovery Rate(FDR)によって有意確率を補正した。さらに各ADL項目の交絡を考慮し,PCSを従属変数,各ADL項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)も行った。統計ソフトにはR2.8.1(CRAN)を使用し,有意水準はp=0.05とした。
【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。なお本研究は観察研究であり,いずれの使用データる。しかし対象者には書面・口頭にて十分な説明を行い,書面にて同意を得た。
【結果】FDRによる有意水準の補正の有無にかかわらず,清拭・更衣(下衣)・トイレ動作・排尿管理・移乗(車椅子)・移乗(トイレ)・移乗(浴室)・移動・階段昇降の項目はPCSと有意な相関を認めた(rs=0.49~0.71)。重回帰分析の結果,移乗動作(入浴)が有意な変数として選択された(R2=0.47,ANOVA:p<0.01)。
【考察】身体的側面のHRQOLの向上には移乗(入浴)の向上が適当と考えられるが,ADLには難易度が存在する。そのため身体的側面のHRQOLの向上を目指すのであれば,移乗(入浴)以外の相関を認めたADL項目も考慮したうえで理学療法を効率的に実施する必要がある。なお食事・整容・更衣(上衣)は身体的側面のHRQOLとの関連が弱かった。これは何らかの機能障害によって活動性が制限された症例でも比較的保たれ,自立しやすいADL項目であったことが考えられる。ただし本研究は横断研究であるため,縦断的調査による確認が今後の課題である。
【理学療法研究としての意義】がん患者は多様な病態を呈するため,様々な機能障害によって活動性が制限される。そのような症例に対するHRQOL向上を目的とした治療方針の参考となる基礎的知見である。
【方法】対象はがん患者20名(男性8名,女性12名)とし,年齢は62.9±13.1歳であった。がんリハのステージは予防的0名,回復的9名,維持的9名,緩和的2名であった。がんの種類は癌腫9名,肉腫9名,造血器由来が2名であった。ADLはFunctional Independence Measureの運動項目(mFIM),QOLはSF-36v2TMによって評価した。なおSF-36v2TMの8下位項目からは身体的側面のサマリースコア(PCS)を算出した。統計解析としては,まず各ADL項目とPCSのSpearmanの順位相関係数を求めた。mFIMは13項目と多いため,多重検定の問題を危惧し,False Discovery Rate(FDR)によって有意確率を補正した。さらに各ADL項目の交絡を考慮し,PCSを従属変数,各ADL項目を独立変数とした重回帰分析(ステップワイズ法)も行った。統計ソフトにはR2.8.1(CRAN)を使用し,有意水準はp=0.05とした。
【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施した。なお本研究は観察研究であり,いずれの使用データる。しかし対象者には書面・口頭にて十分な説明を行い,書面にて同意を得た。
【結果】FDRによる有意水準の補正の有無にかかわらず,清拭・更衣(下衣)・トイレ動作・排尿管理・移乗(車椅子)・移乗(トイレ)・移乗(浴室)・移動・階段昇降の項目はPCSと有意な相関を認めた(rs=0.49~0.71)。重回帰分析の結果,移乗動作(入浴)が有意な変数として選択された(R2=0.47,ANOVA:p<0.01)。
【考察】身体的側面のHRQOLの向上には移乗(入浴)の向上が適当と考えられるが,ADLには難易度が存在する。そのため身体的側面のHRQOLの向上を目指すのであれば,移乗(入浴)以外の相関を認めたADL項目も考慮したうえで理学療法を効率的に実施する必要がある。なお食事・整容・更衣(上衣)は身体的側面のHRQOLとの関連が弱かった。これは何らかの機能障害によって活動性が制限された症例でも比較的保たれ,自立しやすいADL項目であったことが考えられる。ただし本研究は横断研究であるため,縦断的調査による確認が今後の課題である。
【理学療法研究としての意義】がん患者は多様な病態を呈するため,様々な機能障害によって活動性が制限される。そのような症例に対するHRQOL向上を目的とした治療方針の参考となる基礎的知見である。