第49回日本理学療法学術大会

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発表演題 ポスター » 生活環境支援理学療法 ポスター

福祉用具・地域在宅14

Sun. Jun 1, 2014 12:15 PM - 1:05 PM ポスター会場 (生活環境支援)

座長:山田幸信(独立行政法人地域医療機能推進機構登別病院リハビリテーション室)

生活環境支援 ポスター

[1597] 入院中高齢者の歩行補助具の選択時における2ステップテストの有用性の検討

横井和晃1, 村永信吾2 (1.医療法人鉄蕉会亀田総合病院リハビリテーション室, 2.医療法人鉄蕉会亀田メディカルセンターリハビリ事業管理部)

Keywords:2ステップテスト, 高齢者, 歩行補助具

【はじめに,目的】
高齢者では,加齢や運動器の障害により移動能力の低下を来たし,必要に応じて「杖」や「歩行器」等の歩行補助具の選択と指導が行われる。歩行補助具の選択において下肢筋力や歩行速度,バランス能力を指標とした報告は多いが,測定機器や測定可能な空間を確保する必要があることが難点である。
歩行の最小単位である1歩行周期を最大歩幅で実施する2ステップテストは簡便に測定可能であり,測定値を身長で除した値(以下,2ステップ値)から歩行能力を推定することができると報告されている(村永,2003)。歩行補助具の選択において2ステップ値を指標とした報告はない。
本研究の目的は,入院中高齢者の歩行補助具の選択と2ステップ値の特徴を調査し,歩行補助具選択時における2ステップテストの有用性を検討することである。
【方法】
対象は当院入院中に理学療法を処方された運動器外傷のない65歳以上の高齢者104名とした。除外基準は,認知機能低下により口頭指示に対する理解力の低い者,人工股関節全置換術後,腰椎固定術後等で測定によるリスクが高いとセラピストが判断した者,安静度制限(免荷,患肢挙上等)により測定が困難な者,疼痛や拘縮等による著明な運動制限で測定が困難な者とした。
評価項目は2ステップテストと歩行補助具とした。2ステップテストの測定は,安全面を配慮し平行棒内もしくは手すりにつかまれる位置で,セラピストによる監視下で実施した。測定値を身長で除した値を2ステップ値とした。測定は当院退院時に実施した。歩行補助具は無杖,杖,歩行器・シルバーカーの3種類から,本人が最適だと判断した歩行補助具(以下,本人判断)とセラピストが最適だと判断した歩行補助具(以下,セラピスト判断)をそれぞれ情報収集した。
本人判断とセラピスト判断の2群,各群で無杖,杖,歩行器・シルバーカーの3群,計6群に分類し,各群の2ステップ値を比較した。本人判断,セラピスト判断における歩行補助具間の比較と,各歩行補助具における本人判断とセラピスト判断の比較を実施した。
統計解析は一元配置分散分析,Bonferroni法による多重比較検定を用いた。それぞれ有意水準は5%未満とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に沿って実施し,研究に使用したデータは個人情報が特定できないよう十分配慮した。
【結果】
各群での2ステップ値は,本人判断の無杖群では1.02±0.19(mean±SD,n=62),杖群では0.87±0.25(n=33),歩行器・シルバーカー群では0.61±0.23(n=9)であった。セラピスト判断の無杖群では1.05±0.17(n=58),杖群では0.86±0.24(n=34),歩行器・シルバーカー群では0.61±0.21(n=12)であった。
歩行補助具間の比較の結果,本人判断,セラピスト判断ともに無杖群と杖群と歩行器・シルバーカー群の間にそれぞれ有意差を認めた(p<0.05)。
各歩行補助具における比較の結果,無杖群,杖群,歩行器・シルバーカー群のそれぞれで本人判断とセラピスト判断の間に有意差を認めなかった(p>0.05)。
【考察】
本研究の結果では,本人,セラピストともに2ステップ値が低くなるにつれてより安定性の高い歩行補助具を選択する特徴を示した。先行研究では,2ステップ値は歩行能力を推定する指標であり,2ステップ値と転倒リスクの関係では,2ステップ値1.0以下で転倒リスクが高くなると報告している(村永,2003)。本研究においても,2ステップ値が1.0を下回ると何らかの歩行補助具が必要だと判断し,2ステップ値が低くなるにつれてより安定性の高い歩行補助具を選択していたことから,2ステップ値は高齢者の歩行能力を反映しており,各々の歩行能力に応じた歩行補助具の選択に有用であると考える。
各歩行補助具の選択において,本人判断とセラピスト判断に有意な差が認められなかったことから,本人による主観的な判断とセラピストによる客観的な判断が一致していたと考える。歩行補助具の選択において2ステップ値を活用することで,他覚的身体能力に応じた,かつ対象者の自覚的に納得できる歩行補助具の選択が可能となると考える。
【理学療法学研究としての意義】
本研究の結果,2ステップ値が低くなるにつれてより安定性の高い歩行補助具を選択する特徴がみられ,高齢者の歩行補助具選択時における指標としての2ステップテストの有用性が示唆された。