[1603] 精神科における身体的リハビリテーションの需要と実施状況に関する調査
Keywords:精神科, 身体, 実施状況
【はじめに,目的】現在,精神科在院患者の45.5%が高齢者であり,身体的リハビリテーション(以下,身体的リハ)の必要性が高まっているが,実施状況は不明である。そこで,精神科における身体的リハの需要と実施状況を明らかにし,理学療法介入の可能性を探ることを目的に全国調査を実施した。
【方法】対象は精神科病院協会に所属する1209病院中,精神科作業療法の施設基準を持ち,ホームページから施設概要が閲覧可能な934施設の精神科作業療法責任者である。方法は郵送自記式質問紙調査法であり,2013年8月に実施した。調査項目は精神科に身体的リハを導入する必要性,実施状況,算定方法,導入上の問題点などである。また,本調査における身体的リハとは日常的な散歩や体操,レクリエーションなどは含まない,とした上で回答してもらった。
【倫理的配慮,説明と同意】書面にて個人名,施設名が特定できないよう処理する旨を明記し,了承を得た。
【結果】449施設から返信があり,回収率は48.1%であった。入院患者の高齢者の割合について10%刻みで尋ねた結果,中央値は60%であった。同様に身体的リハが必要と思われる方の割合を尋ねた結果,中央値は30%であった。「精神科にも身体的リハを導入するべきか?」との設問には,449名中430名,96%の方が「はい」と回答し,その理由を複数回答を許して選択してもらったところ「歩行が不安定な方が多いから」が最も多く355名,次いで「高齢者が多いから」を312名,「転倒事故が多いから」を272名が選択していた。この設問の自由記述では,「高齢化が進み必要性が高い」という回答が最も多く,次に「一般科で十分なリハビリが受けられないから」が多かった。実際に身体疾患発症後,一般科の病院に転院し,十分な身体的リハを受けずに精神科に再入院となるケースについて,「ほとんどいない」「少しはある」「かなり多い」「ほとんど全例」の4件法で尋ねたところ「かなり多い」と答えた方が45%と最も多く,「ほとんど全例」と答えた方が15%もおり,一般科で精神疾患患者に対して十分な身体的リハが提供されていない事が示唆された。身体的リハの実施状況では80%の病院で実施されていた。算定方法は「精神科OTが実施し,算定していない」が38.6%と最も多く,「精神科OTが実施し,精神科作業療法として算定」が35.7%,「施設基準を持ち,疾患別リハビリで算定」は13.3%,「PT,STが実施し算定していない」が7.1%であった。無償で提供している割合は計45.7%であり,多くの病院でボランティア的なサービスとして身体的リハが実施されている実態が明らかとなり,実施している職種はOT78.1%,PT18.3%,ST3.6%であった。導入上の問題点について複数回答を許して選択してもらったところ,「人員がいない」が最も多く,次いで「場所・設備がない」「収益を上げられるか疑問」の順であった。この設問の自由記述では,「制度上の問題」を挙げた方が最も多く,次いで「人員と時間の不足」「精神科作業療法以外に身体的リハを行い算定できる施設基準が必要」とした意見が多かった。
【考察】精神科医療現場では身体的リハの必要性を感じつつも,制度上の問題で実施しにくい状況にあり,制度の改革を期待していることが窺えた。精神科に勤務するPTは全体の0.7%と非常に少ないが,日本精神科病院協会所属の1209病院中,1102病院では精神科作業療法が実施されており,すでに大半の病院にOTがいる。そのため,まずは精神科OTを中心に身体的リハを実施してもらうことが現実的である。しかし,精神科作業療法は精神科専門療法の一つであり,1人のセラピストが1単位2時間25人を1日2単位まで算定でき,1日に25人の集団を2つ診ることが最も収益性が高い。そのため集団療法が主体で,個別に関わることは困難であり,今後は精神科OTが個別に身体的リハを実施しやすい基準作りが必要である。そこで私は疾患別リハビリに精神科リハビリテーション料を創設することを提言したい。他の疾患別リハと同様に,1単位20分,同一対象者に一日6単位まで,OTだけでなく,PT,STが実施しても同じ点数が算定できることとし,従来の集団療法は1単位30分のような形として残す。こうすることで,例えばADLの低下した高齢の統合失調症患者に,1単位は身体面,もう1単位は精神面へのアプローチといったように心身両面からの介入が可能であり,集団での対応が適した方には集団療法で算定する,といったように対象者に必要なリハビリテーションを必要なだけ提供することが可能になり,PT,STも介入しやすくなると考える。
【理学療法学研究としての意義】精神科における身体的リハの需要と実施状況を明らかにしたことで,理学療法士の職域拡大に寄与するものと考える。
【方法】対象は精神科病院協会に所属する1209病院中,精神科作業療法の施設基準を持ち,ホームページから施設概要が閲覧可能な934施設の精神科作業療法責任者である。方法は郵送自記式質問紙調査法であり,2013年8月に実施した。調査項目は精神科に身体的リハを導入する必要性,実施状況,算定方法,導入上の問題点などである。また,本調査における身体的リハとは日常的な散歩や体操,レクリエーションなどは含まない,とした上で回答してもらった。
【倫理的配慮,説明と同意】書面にて個人名,施設名が特定できないよう処理する旨を明記し,了承を得た。
【結果】449施設から返信があり,回収率は48.1%であった。入院患者の高齢者の割合について10%刻みで尋ねた結果,中央値は60%であった。同様に身体的リハが必要と思われる方の割合を尋ねた結果,中央値は30%であった。「精神科にも身体的リハを導入するべきか?」との設問には,449名中430名,96%の方が「はい」と回答し,その理由を複数回答を許して選択してもらったところ「歩行が不安定な方が多いから」が最も多く355名,次いで「高齢者が多いから」を312名,「転倒事故が多いから」を272名が選択していた。この設問の自由記述では,「高齢化が進み必要性が高い」という回答が最も多く,次に「一般科で十分なリハビリが受けられないから」が多かった。実際に身体疾患発症後,一般科の病院に転院し,十分な身体的リハを受けずに精神科に再入院となるケースについて,「ほとんどいない」「少しはある」「かなり多い」「ほとんど全例」の4件法で尋ねたところ「かなり多い」と答えた方が45%と最も多く,「ほとんど全例」と答えた方が15%もおり,一般科で精神疾患患者に対して十分な身体的リハが提供されていない事が示唆された。身体的リハの実施状況では80%の病院で実施されていた。算定方法は「精神科OTが実施し,算定していない」が38.6%と最も多く,「精神科OTが実施し,精神科作業療法として算定」が35.7%,「施設基準を持ち,疾患別リハビリで算定」は13.3%,「PT,STが実施し算定していない」が7.1%であった。無償で提供している割合は計45.7%であり,多くの病院でボランティア的なサービスとして身体的リハが実施されている実態が明らかとなり,実施している職種はOT78.1%,PT18.3%,ST3.6%であった。導入上の問題点について複数回答を許して選択してもらったところ,「人員がいない」が最も多く,次いで「場所・設備がない」「収益を上げられるか疑問」の順であった。この設問の自由記述では,「制度上の問題」を挙げた方が最も多く,次いで「人員と時間の不足」「精神科作業療法以外に身体的リハを行い算定できる施設基準が必要」とした意見が多かった。
【考察】精神科医療現場では身体的リハの必要性を感じつつも,制度上の問題で実施しにくい状況にあり,制度の改革を期待していることが窺えた。精神科に勤務するPTは全体の0.7%と非常に少ないが,日本精神科病院協会所属の1209病院中,1102病院では精神科作業療法が実施されており,すでに大半の病院にOTがいる。そのため,まずは精神科OTを中心に身体的リハを実施してもらうことが現実的である。しかし,精神科作業療法は精神科専門療法の一つであり,1人のセラピストが1単位2時間25人を1日2単位まで算定でき,1日に25人の集団を2つ診ることが最も収益性が高い。そのため集団療法が主体で,個別に関わることは困難であり,今後は精神科OTが個別に身体的リハを実施しやすい基準作りが必要である。そこで私は疾患別リハビリに精神科リハビリテーション料を創設することを提言したい。他の疾患別リハと同様に,1単位20分,同一対象者に一日6単位まで,OTだけでなく,PT,STが実施しても同じ点数が算定できることとし,従来の集団療法は1単位30分のような形として残す。こうすることで,例えばADLの低下した高齢の統合失調症患者に,1単位は身体面,もう1単位は精神面へのアプローチといったように心身両面からの介入が可能であり,集団での対応が適した方には集団療法で算定する,といったように対象者に必要なリハビリテーションを必要なだけ提供することが可能になり,PT,STも介入しやすくなると考える。
【理学療法学研究としての意義】精神科における身体的リハの需要と実施状況を明らかにしたことで,理学療法士の職域拡大に寄与するものと考える。