[1608] 体幹運動適正化を目的とした運動補助具が若年腰痛者の腰痛症状改善に及ぼす効果:無作為化対照研究
Keywords:腰痛, アライメント, 運動療法
【はじめに,目的】
腰痛症の有病率は非常に高く,日本において2007年に報告された国民生活基礎調査によると有訴者数は10.3%で各種疾患を押さえて最多である。この傾向は世界的にみても同様であり,米国では45歳以下の国民の活動制限理由のトップとして挙げられている(Taylor1994,Hart1995)。社会経済的影響の大きさからも,腰痛の治療は臨床的重要性が高い。腰痛症の発生原因の一つとして,骨盤非対称性による慢性的な腰椎異常運動が胸郭拡張制限による胸椎可動性低下により増強されることで生じる機械的ストレスが考えられる(Kawaguchi2005,Al-Eisa2006)。我々は,この胸郭拡張性制限および骨盤非対称性の改善を目的とした運動補助具(リアライン・コア,GLAB社製)を開発した。本研究ではこの運動補助具の試作機を用いたエクササイズが腰痛を有する者の胸郭拡張性,骨盤対称性,体幹可動性,および疼痛に及ぼす効果を示すことを目的とした。
【方法】
対象者は腰痛を有する高校生アスリート11名(男性6名,女性5名)であった。無作為に割付を行った結果,介入群5名(男性3名,女性2名),コントロール群6名(男性3名,女性2名)となった。
介入群はリアライン・コア試作器着用下で,コントロール群は非装着下でスクワット,ニーベントウォーク,フロントランジ,体幹屈曲&伸展,体幹回旋の5種目を実施した。介入は全て10分間程で終了した。
測定は骨盤アライメント(骨盤ローリングテスト,仙骨傾斜角度,骨盤非対称性比率),胸郭拡性(安静立位・体幹最大伸展位における胸郭縦径・横径),体幹可動性(指床間距離,体幹伸展角度),腰部痛(安静立位時・体幹屈曲時・体幹伸展時・体幹回旋時におけるVisual Analog Scale(VAS))を介入前後に実施した。
統計学的検定には対応のあるt検定,カイ二乗検定,Wilcoxon順位和検定を用い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,貞松病院倫理委員会の承認を得た後,研究内容を説明して同意を得られた者を対象とした。
【結果】
骨盤アライメントに関して,骨盤ローリングテスト(P=0.03),仙骨傾斜角度(P=0.02),骨盤非対称性比率(P=0.02)の3項目すべてにおいて有意な改善が認められた。胸郭拡張性に関して,安静立位における縦径(P=0.09),横径(P=0.85),最大伸展位における縦径(P=0.86),横径(P=0.83)すべてにおいて有意な変化は認められなかった。体幹可動性に関して,指床間距離(P=0.52)においては有意な変化は認められなかったが,体幹伸展角度(P<0.01)において有意な増加が認められた。VASに関して,体幹回旋時(P<0.01)においては有意な軽減が認められた。安静立位時(P=0.07),体幹屈曲時(P=0.47),体幹伸展時(P=0.06)の3項目においては有意な変化は認められなかったが,改善の傾向がみられた。
【考察】
リアライン・コア試作器を用いたエクササイズにより,骨盤アライメントの対称化が得られた。また同時に体幹伸展角度,体幹回旋時の疼痛についても改善が得られたことから本器具が腰痛症状の改善に有効であることが示唆された。
NSLBPにおける病態のひとつと考えられる筋・筋膜性疼痛は過剰な筋活動に伴う一次性疼痛と,靭帯や関節への機械的刺激に異常筋活動が誘発されることで生じる二次性疼痛がある(Borg-Stein2002)。臨床的にも腰痛患者において筋の過緊張は散見される。特に腰痛患者における脊柱起立筋の過緊張は複数の研究で報告されている(Kaigle1998,Cholewicki2002,Olson2004)。脊柱起立筋は多裂筋とともに胸腰筋膜を緊張させ,胸腰筋膜を介して仙腸関節を安定化する大殿筋や後背筋,腹横筋などの働きを補助している(Bogduk1984,Vleeming1995,Wingerden2004)。また,脊椎は中間位の状態で屈曲・伸展の運動を行う場合と比べ,回旋が付加した状態では骨や靭帯,椎間板などの脊椎構成帯への応力が増加することが報告されている(Panjabi1992)。この腰椎運動はその下部に位置する骨盤帯において,一側で寛骨前方回旋が生じると仙骨は対側に傾斜・回旋し(Mens1999),腰椎における異常運動の原因となりうる。本研究ではアライメントの改善により骨盤が安定化し,筋に対する負担が減少したことに加え,腰椎運動が正常化したことで腰部痛が軽減した可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
スポーツ現場などにおいて体幹のコンディショニングを継続的に行うことは容易ではない。リアライン・コアは通常行っているウォーミングアップやトレーニングの際に装着するだけで既に生じている腰部痛も現場において即時的に改善することができる可能性を有しており,体幹のコンディショニングに広く活用することができると考えられる。
腰痛症の有病率は非常に高く,日本において2007年に報告された国民生活基礎調査によると有訴者数は10.3%で各種疾患を押さえて最多である。この傾向は世界的にみても同様であり,米国では45歳以下の国民の活動制限理由のトップとして挙げられている(Taylor1994,Hart1995)。社会経済的影響の大きさからも,腰痛の治療は臨床的重要性が高い。腰痛症の発生原因の一つとして,骨盤非対称性による慢性的な腰椎異常運動が胸郭拡張制限による胸椎可動性低下により増強されることで生じる機械的ストレスが考えられる(Kawaguchi2005,Al-Eisa2006)。我々は,この胸郭拡張性制限および骨盤非対称性の改善を目的とした運動補助具(リアライン・コア,GLAB社製)を開発した。本研究ではこの運動補助具の試作機を用いたエクササイズが腰痛を有する者の胸郭拡張性,骨盤対称性,体幹可動性,および疼痛に及ぼす効果を示すことを目的とした。
【方法】
対象者は腰痛を有する高校生アスリート11名(男性6名,女性5名)であった。無作為に割付を行った結果,介入群5名(男性3名,女性2名),コントロール群6名(男性3名,女性2名)となった。
介入群はリアライン・コア試作器着用下で,コントロール群は非装着下でスクワット,ニーベントウォーク,フロントランジ,体幹屈曲&伸展,体幹回旋の5種目を実施した。介入は全て10分間程で終了した。
測定は骨盤アライメント(骨盤ローリングテスト,仙骨傾斜角度,骨盤非対称性比率),胸郭拡性(安静立位・体幹最大伸展位における胸郭縦径・横径),体幹可動性(指床間距離,体幹伸展角度),腰部痛(安静立位時・体幹屈曲時・体幹伸展時・体幹回旋時におけるVisual Analog Scale(VAS))を介入前後に実施した。
統計学的検定には対応のあるt検定,カイ二乗検定,Wilcoxon順位和検定を用い,有意水準は5%とした。
【倫理的配慮,説明と同意】
本研究はヘルシンキ宣言に基づき,貞松病院倫理委員会の承認を得た後,研究内容を説明して同意を得られた者を対象とした。
【結果】
骨盤アライメントに関して,骨盤ローリングテスト(P=0.03),仙骨傾斜角度(P=0.02),骨盤非対称性比率(P=0.02)の3項目すべてにおいて有意な改善が認められた。胸郭拡張性に関して,安静立位における縦径(P=0.09),横径(P=0.85),最大伸展位における縦径(P=0.86),横径(P=0.83)すべてにおいて有意な変化は認められなかった。体幹可動性に関して,指床間距離(P=0.52)においては有意な変化は認められなかったが,体幹伸展角度(P<0.01)において有意な増加が認められた。VASに関して,体幹回旋時(P<0.01)においては有意な軽減が認められた。安静立位時(P=0.07),体幹屈曲時(P=0.47),体幹伸展時(P=0.06)の3項目においては有意な変化は認められなかったが,改善の傾向がみられた。
【考察】
リアライン・コア試作器を用いたエクササイズにより,骨盤アライメントの対称化が得られた。また同時に体幹伸展角度,体幹回旋時の疼痛についても改善が得られたことから本器具が腰痛症状の改善に有効であることが示唆された。
NSLBPにおける病態のひとつと考えられる筋・筋膜性疼痛は過剰な筋活動に伴う一次性疼痛と,靭帯や関節への機械的刺激に異常筋活動が誘発されることで生じる二次性疼痛がある(Borg-Stein2002)。臨床的にも腰痛患者において筋の過緊張は散見される。特に腰痛患者における脊柱起立筋の過緊張は複数の研究で報告されている(Kaigle1998,Cholewicki2002,Olson2004)。脊柱起立筋は多裂筋とともに胸腰筋膜を緊張させ,胸腰筋膜を介して仙腸関節を安定化する大殿筋や後背筋,腹横筋などの働きを補助している(Bogduk1984,Vleeming1995,Wingerden2004)。また,脊椎は中間位の状態で屈曲・伸展の運動を行う場合と比べ,回旋が付加した状態では骨や靭帯,椎間板などの脊椎構成帯への応力が増加することが報告されている(Panjabi1992)。この腰椎運動はその下部に位置する骨盤帯において,一側で寛骨前方回旋が生じると仙骨は対側に傾斜・回旋し(Mens1999),腰椎における異常運動の原因となりうる。本研究ではアライメントの改善により骨盤が安定化し,筋に対する負担が減少したことに加え,腰椎運動が正常化したことで腰部痛が軽減した可能性がある。
【理学療法学研究としての意義】
スポーツ現場などにおいて体幹のコンディショニングを継続的に行うことは容易ではない。リアライン・コアは通常行っているウォーミングアップやトレーニングの際に装着するだけで既に生じている腰部痛も現場において即時的に改善することができる可能性を有しており,体幹のコンディショニングに広く活用することができると考えられる。