[2004] 社会保障制度改革国民会議の報告書からみる医療・介護の方向性について
少子高齢化社会へ突き進む日本は,2025年には高齢者人口のピークを迎えるとともに,団塊の世代の後期高齢化により,当該年代層人口比率が増大します。つまり2025年には入院受療率が高い「75歳以上」人口が増加し,入院を必要とする高齢者が増加することから,平均在院日数を短縮する施策が必要となり,回復期過程での退院も考えられるため,理学療法士は効果的かつ適切な退院支援プロセスに積極的に関与することが求められています。また,2040年以後には,入院や入所リスクの高い通院困難者である「85歳以上」人口の急増により,在宅医療を必要とする者が急増,さらに介護サービス受給率の最も高い同年齢層人口の急増により,介護サービス受給率も急増することが予想され,要介護者を増やさない,重度化を遅らせる「介護予防」の施策がより重要となります。
このように,私たち理学療法士に関係する課題が山積することが予想される超高齢化時代を迎えるにあたって,社会貢献すべき専門家(プロフェッショナル)として,理学療法士はどういった役割が求められているのか,そして何をすべきか,そのためにどのような実践力を身につけなければならないかを理解し,行動することが喫緊の課題であります。
今回の講演では,「社会保障と税の一体改革」のキーパーソンである内閣官房社会保障改革担当室の中村秀一室長※をお迎えして,「社会保障制度改革国民会議の報告書からみる医療・介護の方向性について」のテーマで,この会議報告書作成の背景にある「社会保障と税の一体改革」の骨子,つまり高齢者の増加に伴い,増加する年金・医療・介護の社会保障費が社会保障制度の維持を困難にするという大きな懸念がある一方で,国の債務残高が対GDP比で219%(2012年末)と,先進諸国のなかで突出して高い数字を示しているという非常に深刻な状況にある国家財政,この2つを同時に改善しようという取り組みについて明解に述べていただくとともに,2025年以後も見据えた超高齢社会における社会保障の姿,特に医療・介護の方向性について明示していただくことにしています。
その話の中から,私たち理学療法士は,以下の事項についてより深く理解し,今後の取り組みのあり方,行動すべき指針をしっかり確認し,理学療法のプロフェッショナルとして,また日本理学療法士協会は職能団体として,社会貢献できる実効的な行動をしていかなければなりません。
理解すべき事項:
1.社会保障制度改革国民会議報告書作成の背景
社会保障制度改革推進法の基本的な考え方(2012年8月10日成立)として,「日本の社会保障制度は,自助・共助・公助の最適な組み合わせに留意して形成すべきとされている。これは,国民の生活は,自らが働いて自らの生活を支え,自らの健康は自ら維持するという「自助」を基本としながら,高齢や疾病・介護を始めとする生活上のリスクに対しては,社会連帯の精神に基づき,共同してリスクに備える仕組みである「共助」が自助を支え,自助や共助では対応できない困窮などの状況については,受給要件を定めた上で必要な生活保障を行う公的扶助や社会福祉などの「公助」が補完する仕組みとするものである。」とする自助・共助・公助の最適な組み合わせに基づき改革されていくべきであるとしてながらも,自助に対する個々の積極的取り組みが求められている。
2.報告書内容から理解しておくべきポイント
・現行政においてバラバラになっている都道府県の医療計画と市町村の介護保険医療計画を統一的に策定しようとしている「地域包括ケア計画」
・「治す医療」から「治し・支える医療」へ
・「病院完結型」から「地域完結型」の医療へ転換
・急性期医療への資源の集中投入と早期の家庭復帰・社会復帰
・健康の維持増進,疾病の予防,早期発見等の促進
・チーム医療の確立
・在宅リハビリテーション,特に訪問リハビリテーションの重視
・職能団体の社会適応力の向上
3.以上の社会保障制度改革に伴う今後の医療・介護保険法の改正の方向性と医療・介護連携事業の展開・動向
・地域包括ケアシステム構築において医療・介護の一体改革は必須である。
・在宅医療と介護の連携を推進するためには,市町村が実施する地域支援事業の包括的支援事業に医療・介護連携事業を新たに位置付けることが示された。
4.理学療法士への社会的な期待と今後の課題
・地域包括ケアシステム構築における理学療法士などリハビリテーション専門職の活用の明記
・地域包括ケアシステムにおける理学療法士の知識,技術的専門性,差別化,優位性としては,①自立を支援するための引き出し(様々な手段)が多い,②生活機能維持向上の予後評価ができることの自覚とその役割の実践力が期待されている。
すなわち,
日本理学療法士協会では基本理念として,「私たちは理学療法士として,すべてのひとの健康と幸福を実現するために・・・」ということで以下を決めています。
一,「尊厳ある自立」と,その「くらし」を守ります。
一,真に求められる理学療法科学の探究と創造,そして自らの技能と資質の向上に努力します。
一,必要な提言や社会的行動を精力的に行います。
これらを念頭におきながら,私たち理学療法士協会は職能団体として,社会の求めに応じながら,理学療法士が社会に貢献できる可能性を広げていくための具体的な行動目標を,理学療法士個人会員と協会が共有し,実現行動を起こしていく必要があります。そのことを怠れば,2025年までの改革から取り残される運命が待っていることを強く認識すべきであります。大きなチャンスは大きなピンチです。
このように,私たち理学療法士に関係する課題が山積することが予想される超高齢化時代を迎えるにあたって,社会貢献すべき専門家(プロフェッショナル)として,理学療法士はどういった役割が求められているのか,そして何をすべきか,そのためにどのような実践力を身につけなければならないかを理解し,行動することが喫緊の課題であります。
今回の講演では,「社会保障と税の一体改革」のキーパーソンである内閣官房社会保障改革担当室の中村秀一室長※をお迎えして,「社会保障制度改革国民会議の報告書からみる医療・介護の方向性について」のテーマで,この会議報告書作成の背景にある「社会保障と税の一体改革」の骨子,つまり高齢者の増加に伴い,増加する年金・医療・介護の社会保障費が社会保障制度の維持を困難にするという大きな懸念がある一方で,国の債務残高が対GDP比で219%(2012年末)と,先進諸国のなかで突出して高い数字を示しているという非常に深刻な状況にある国家財政,この2つを同時に改善しようという取り組みについて明解に述べていただくとともに,2025年以後も見据えた超高齢社会における社会保障の姿,特に医療・介護の方向性について明示していただくことにしています。
その話の中から,私たち理学療法士は,以下の事項についてより深く理解し,今後の取り組みのあり方,行動すべき指針をしっかり確認し,理学療法のプロフェッショナルとして,また日本理学療法士協会は職能団体として,社会貢献できる実効的な行動をしていかなければなりません。
理解すべき事項:
1.社会保障制度改革国民会議報告書作成の背景
社会保障制度改革推進法の基本的な考え方(2012年8月10日成立)として,「日本の社会保障制度は,自助・共助・公助の最適な組み合わせに留意して形成すべきとされている。これは,国民の生活は,自らが働いて自らの生活を支え,自らの健康は自ら維持するという「自助」を基本としながら,高齢や疾病・介護を始めとする生活上のリスクに対しては,社会連帯の精神に基づき,共同してリスクに備える仕組みである「共助」が自助を支え,自助や共助では対応できない困窮などの状況については,受給要件を定めた上で必要な生活保障を行う公的扶助や社会福祉などの「公助」が補完する仕組みとするものである。」とする自助・共助・公助の最適な組み合わせに基づき改革されていくべきであるとしてながらも,自助に対する個々の積極的取り組みが求められている。
2.報告書内容から理解しておくべきポイント
・現行政においてバラバラになっている都道府県の医療計画と市町村の介護保険医療計画を統一的に策定しようとしている「地域包括ケア計画」
・「治す医療」から「治し・支える医療」へ
・「病院完結型」から「地域完結型」の医療へ転換
・急性期医療への資源の集中投入と早期の家庭復帰・社会復帰
・健康の維持増進,疾病の予防,早期発見等の促進
・チーム医療の確立
・在宅リハビリテーション,特に訪問リハビリテーションの重視
・職能団体の社会適応力の向上
3.以上の社会保障制度改革に伴う今後の医療・介護保険法の改正の方向性と医療・介護連携事業の展開・動向
・地域包括ケアシステム構築において医療・介護の一体改革は必須である。
・在宅医療と介護の連携を推進するためには,市町村が実施する地域支援事業の包括的支援事業に医療・介護連携事業を新たに位置付けることが示された。
4.理学療法士への社会的な期待と今後の課題
・地域包括ケアシステム構築における理学療法士などリハビリテーション専門職の活用の明記
・地域包括ケアシステムにおける理学療法士の知識,技術的専門性,差別化,優位性としては,①自立を支援するための引き出し(様々な手段)が多い,②生活機能維持向上の予後評価ができることの自覚とその役割の実践力が期待されている。
すなわち,
日本理学療法士協会では基本理念として,「私たちは理学療法士として,すべてのひとの健康と幸福を実現するために・・・」ということで以下を決めています。
一,「尊厳ある自立」と,その「くらし」を守ります。
一,真に求められる理学療法科学の探究と創造,そして自らの技能と資質の向上に努力します。
一,必要な提言や社会的行動を精力的に行います。
これらを念頭におきながら,私たち理学療法士協会は職能団体として,社会の求めに応じながら,理学療法士が社会に貢献できる可能性を広げていくための具体的な行動目標を,理学療法士個人会員と協会が共有し,実現行動を起こしていく必要があります。そのことを怠れば,2025年までの改革から取り残される運命が待っていることを強く認識すべきであります。大きなチャンスは大きなピンチです。