第49回日本理学療法学術大会

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大会企画 » 理学療法士の生活を支える ―仕事を続けていくための問題について考えよう―

第Ⅱ部:ライフスタイルの変化と就業継続に関する問題―様々な立場からの問題提起―

Sat. May 31, 2014 2:40 PM - 4:10 PM 第9会場 (4F 413)

司会:大槻かおる(大和市立病院), 大島奈緒美(ふれあい平塚ホスピタルリハビリテーション科)

ライフサポートセミナー

[2022] 管理職的立場から就業継続の問題点

相川浩一 (介護老人保健施設アゼリアリハビリテーション科)

スタッフのライフスタイルの変化に伴い,就業継続が困難となるケースを経験する。結果的に退職となる場合もあり,組織として大きな損失をする。ライフスタイルの変化は「出産」「育児」「介護」「進学」等,様々なことが考えられる。これらは個人の価値観として人生を送る上で非常に重要な出来事となり,それ故に本人やその周囲の人たちにも多くの課題を提示することになる。管理職の立場からとあるが,私自身もその重要な出来事が起こりうる状態にあることを常日頃より考えている。今回は出産と育児,介護によるライフスタイルの変化に対して管理職の立場から考えを述べる。
管理職としてスタッフのライフスタイルの変化により業務に何らかの変化がもたらされた場合にはリスクとして捉えることができる。リスクとして考える例として出産や家族の介護により年度途中で急遽職を離れる状況になる(原因)。今までの提供していた医療やサービスの量が減る(状況分析)。そのため患者や利用者に対してのリハビリテーションの提供量を調整する(対応策)。患者や利用者は施設の状況の変化によりリハビリテーションを受ける量が減り,施設への不信感となる(結果)。この流れになってしまうと施設は収入の減少を招き,新たな改善策を見出さない限りは悪循環に陥り,立ち直ることが時間の経過とともに難しくなる。そこで管理職としてはリスクとして対応し,なおかつリスクマネジメントを行う視点で考えることが必要となる。リスクマネジメントと位置づけることにより原因を予測できる課題として考え,事前に対応策を準備しリスクを最小限に留めることができる。
実際の場面での管理職はライフスタイルの変化に対する課題に対して「当事者との調整」「業務内容の調整」「組織内上長との調整」の三点を行っていくと考えている。調整を行うに当たっては該当事例に関する社会制度と職場内の就業規則について当たり前ではあるが知っておくべきである。また,組織内の風土や上長の考え方,他部署の対応も常日頃から情報として収集することにより課題解決の一助になる。当事者はライフスタイルの変化がはじめての経験になることが多い。そのため,戸惑いを強く感じていることを念頭に置き話をしなければならない。管理職は必要な範囲で本人の置かれている状況を把握し,組織として就業を継続するために何ができるか一緒に考える。しかし,当事者から就業の継続についての意思が明確になっていない場合は非常に苦慮することになる。ゆえに相談の段階では当事者の状況をしっかりと把握する姿勢を示すことが管理職との信頼関係に大きく関係する。当事者との間で築いた信頼関係をもとに管理職は就業条件がお互いに一致する方法を実行するための環境の整備を行うことになる。業務内容の調整については当事者以外のスタッフとのコミュニケーションの要素が大きい。管理職は一人のスタッフが抜けることによって,他のスタッフがどのような協力すればよいのか,それはいつまで続くものなのかを提示する役割がある。課題の提示によりスタッフは組織の課題としての共有がなされる。その上で管理職は実務の中での課題をスタッフとともに明確にし,協力体制を確立していく作業を行うことになる。組織内上長との調整については経営上の視点を踏まえた報告が必要になる。当事者の組織における必要性,減収の金額,組織内の課題を簡潔にまとめ報告する。また,報告とともに課題に対する改善策を提示し,上長の理解と承諾を得るまでの調整が必要になる。これはスタッフの職場環境を守る上で,大変重要な作業になる。状況によっては一時的な休業に対して増員の提案を必要とする場合もある。その場合はリスクマネジメントの視点で,組織の利益に結び付ける方向で上長に説明できれば理解が得やすくなる。日頃から上長に対して組織内の状況報告を継続し,情報を共有できる環境作りが必要である。
より良いリハビリテーションを地域の住民に届けるためには経験を積んだスタッフは組織にとっての財産である。その財産をより大きなものにしていくことも管理職としての役割であると思う。三つの視点からスタッフのライフスタイルの変化の対応について考えを述べた。どの視点でも重要なのがコミュニケーションである。管理職もコミュニケーション力をつける必要があり,それは管理職として組織の運営に対しての必要と選択に応じたコミュニケーション力である。また,リスクマネジメントとして捉え,視点を分けることにより就業継続ができなかった場合の問題の整理にもなる。このようなプロセスの継続が今後の働きやすい就業環境の構築につながると考えている。