第49回日本理学療法学術大会

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モーニングセミナーⅣ

Sun. Jun 1, 2014 8:30 AM - 9:30 AM 第13会場 (5F 503)

司会:萩原章由(横浜市立脳血管医療センターリハビリテーション部)

[2026] 脳卒中後遺症者の生活を支える―回復期における理学療法―

大槻利夫 (上伊那生協病院リハビリテーション課)

養成校を卒業して30数年急性期病院で働いていました。ある時寝たきりの脳卒中患者さんが誤嚥性肺炎で入院され理学療法を担当しました。ベットサイドに伺うと左上下肢はすべての関節が屈曲し,特に曲がった手指が左顎にくっつきそうでした。拘縮が強く関節を緩める事が難しい状況でしたが,どうしてこのようになるのか不思議でした。付き添っている奥さんがなかなか伸びない指の間を丁寧に拭き取っている光景をよく覚えています。
3年前から回復期病棟で働くようになり,週に1回ですが訪問リハビリのスタッフに同行させてもらっています。そのなかで18年前に続けて2回発症され両片麻痺になられ,8年前から訪問リハを開始された女性の方を訪問しました。要介護3でしたが起居動作は見守りでなんとかでき,座位は自立,短下肢装具とサイドケインで介助歩行が出来ていた方が,」3年前くらいから日常活動の介助量が増え,私達の訪問時には装具使用にもかかわらず両下肢が床にきちんと着かず,立ち上がりと移乗動作が全介助になっていました。急性期や回復期の理学療法の目的は,質と量を兼ね備えた理学療法を可能な限り短い期間で提供してその後の生活を支えていく基盤を作る事だと思います。退院後は入院中に描いた通りの生活を送る事が出来ていたり,退院時の機能を上回る回復を得られた方もおられますが,一方では活動範囲が次第に狭まって負の方向に降りていっている方も確実におられます。
エビデンスのある理学療法を提供していく事が重要ですが,理学療法室や廊下で歩行練習をするために,あるいはトイレや食堂に食事に向かう時に一日何回となく行っている起居動作,立ち上がり動作それに努力して下肢を振り出している歩行練習の中に麻痺側の手が曲がり,足が床に着きにくくなっていく原因があるのではないかとこれまでの臨床経験から考えています。背臥位から端座位へ,端座位から立位へという最初の姿勢から次の姿勢へ移っていくその中間(過程)に非対称な姿勢や過活動に至る原因があり,日々の臨床ではそれぞれの動作が持つ特徴的な要素を観察・分析してこれを治療介入の対象とすることが機能的な移乗,移動動作の獲得には重要であると思います。この日々の臨床で意義ある実践していくためには,「同じ内容の理学療法を繰り返さない繰り返しの日々(repeat without repeat)」が必要です。「脳卒中は運動機能の障害ではなく脳の障害である」,「クライエントを中心に据えた理学療法を」というあたりまえのことを自身の脳にセッティングしながら回復期病棟で働いています,この日々実践している理学療法を理論的な背景を交えて紹介してみたいと思います。