[2076] II 卒前教育 3 職場教育と生涯教育
1.はじめに
理学療法士養成校が増え,卒業生が飛躍的に増加しています。臨床実習施設の確保が難しく,一方で,実習課題の軽減と思われるような現状があります。
卒業時の到達点が維持しにくく,受け入れる職場側の負担は増え続けているように思います。また,回復期リハビリテーション病棟という制度により,一度に多数の新人職員が入職して来ます。職員皆で一人の新人職員を見ていればよかった時代から大きく変わってしまいました。
職場教育の目的は,医療職としての資質を高め,理学療法士としての専門性を磨くとともに,職場全体の中でのその部署の役割,その部署の中での個人の役割を理解し,自ら意欲的に取り組む活動を支援すること,それが出来る環境を整えることにあると考えます。その目的に沿って,私の職場では,(1)新人教育カリキュラム,(2)経験年数による役割の遂行,(3)部署全体の目標設定と実行に取り組んでいます。
2.新人教育カリキュラムについて
改定をしながら10年近くかけて以下のようなカリキュラムが出来ました。
(1)~(3)は知識として講義やワークショップ形式で行い,各項目について,先輩職員が講師を担当し,半年ほどで終了します。(4)は,日常業務を通しての教育システムです。毎年振り返りをし,今年度の課題から次年度に向けて修正するよう心掛けています。
(1)社会人として ①オリエンテーション ②接遇について
(2)新人セラピストとして ①リスク管理 ②診療報酬について ③筋緊張 ④バランス ⑤移乗(機能的)⑥補装具 ⑦症例報告
(3)当院業務上必要なこととして ①回復期病棟について ②介護保険制度 ③家屋調査と住宅改修 ④訪問リハビリテーション ⑤介護予防事業
(4)患者の治療業務として ①1年間指導者をつける ②評価,治療,記録,マネージメント,プレゼンテ―ション,管理・運営に介入・指導する
職員数が25人,新人職員が5人になった昨年度は,すべての職員を5つのチームに分け,新人職員を指導することにしました。主指導者と副指導者を決め負担を分担することができました。また,指導者以外のチームメンバーも1人の新人職員を見守り,指導者に報告したり,直接指導することができるようになりました。このチーム制は他の業務にも有効に機能したと思います。
3.経験年数による役割の遂行
職場としては,職員一人一人がその経験に見合った能力を持ち,部署の中での役割を果たしてもらえることが理想です。そこで,経験年数による役割を明確化し実施できるよう取り組んできました。その結果,次年度は何をすべきか前もってわかり,心構えや準備ができるようになってきました。
経験年数役 割
1年目①業務を覚える②評価・治療ができる③マネージメントができる(利用者への計画的支援・他職種・他部門・他施設との連携)④プレゼンテーションができる(場面に応じた的確な説明や報告)
2年目①多様な臨床場面に対応できる②評価・治療を実施し,状態に応じて修正・変更できる ③学生教育Iができる(検査・測定)
3年目①研究・学術活動(リハ科内外での研究・学術活動への参加)②職員教育(1年目と患者を担当し指導,1年目の技術研修を実施)③学生教育IIIができる(評価実習)④管理・運営への参加
4年目①学生教育IIIができる(臨床実習)②対外業務ができる(介護予防・訪問・地域連携パス会議)③管理・運営への参加
5年目①新人教育ができる ②対外業務ができる(難病訪問)
4.部署全体の目標設定と実行
『患者様のニーズに応えられるリハビリテーションの提供を目指す』というリハビリテーション科の基本理念のもとに,毎年年度末に次年度の目標の担当者とテーマを決め,進めています。例えば,昨年度は「自宅退院後の転倒を減らすために」を目標にし,家屋改修のケーススタディや家族指導の徹底などを行ってきました。年度の初めに,各部署の目標の達成度と今後の課題について院内研修会で報告します。この活動の中で,都士会学会等に発表できたものもありますが,せっかくの取り組みを,そこまでの研究・学術活動へ引き上げられていないことが今後の課題だと考えています。
5.生涯教育へ向けて
生涯教育は,「その生涯にわたって,あらゆる機会に,あらゆる場所において学習することができ,その成果を適切に生かすことのできる社会の実現を図る」ための理念です。学校教育・職場教育はその中の一部分と思います。職場教育を充実させることで,生涯教育の実現に繋がるものと考えています。
理学療法士養成校が増え,卒業生が飛躍的に増加しています。臨床実習施設の確保が難しく,一方で,実習課題の軽減と思われるような現状があります。
卒業時の到達点が維持しにくく,受け入れる職場側の負担は増え続けているように思います。また,回復期リハビリテーション病棟という制度により,一度に多数の新人職員が入職して来ます。職員皆で一人の新人職員を見ていればよかった時代から大きく変わってしまいました。
職場教育の目的は,医療職としての資質を高め,理学療法士としての専門性を磨くとともに,職場全体の中でのその部署の役割,その部署の中での個人の役割を理解し,自ら意欲的に取り組む活動を支援すること,それが出来る環境を整えることにあると考えます。その目的に沿って,私の職場では,(1)新人教育カリキュラム,(2)経験年数による役割の遂行,(3)部署全体の目標設定と実行に取り組んでいます。
2.新人教育カリキュラムについて
改定をしながら10年近くかけて以下のようなカリキュラムが出来ました。
(1)~(3)は知識として講義やワークショップ形式で行い,各項目について,先輩職員が講師を担当し,半年ほどで終了します。(4)は,日常業務を通しての教育システムです。毎年振り返りをし,今年度の課題から次年度に向けて修正するよう心掛けています。
(1)社会人として ①オリエンテーション ②接遇について
(2)新人セラピストとして ①リスク管理 ②診療報酬について ③筋緊張 ④バランス ⑤移乗(機能的)⑥補装具 ⑦症例報告
(3)当院業務上必要なこととして ①回復期病棟について ②介護保険制度 ③家屋調査と住宅改修 ④訪問リハビリテーション ⑤介護予防事業
(4)患者の治療業務として ①1年間指導者をつける ②評価,治療,記録,マネージメント,プレゼンテ―ション,管理・運営に介入・指導する
職員数が25人,新人職員が5人になった昨年度は,すべての職員を5つのチームに分け,新人職員を指導することにしました。主指導者と副指導者を決め負担を分担することができました。また,指導者以外のチームメンバーも1人の新人職員を見守り,指導者に報告したり,直接指導することができるようになりました。このチーム制は他の業務にも有効に機能したと思います。
3.経験年数による役割の遂行
職場としては,職員一人一人がその経験に見合った能力を持ち,部署の中での役割を果たしてもらえることが理想です。そこで,経験年数による役割を明確化し実施できるよう取り組んできました。その結果,次年度は何をすべきか前もってわかり,心構えや準備ができるようになってきました。
経験年数役 割
1年目①業務を覚える②評価・治療ができる③マネージメントができる(利用者への計画的支援・他職種・他部門・他施設との連携)④プレゼンテーションができる(場面に応じた的確な説明や報告)
2年目①多様な臨床場面に対応できる②評価・治療を実施し,状態に応じて修正・変更できる ③学生教育Iができる(検査・測定)
3年目①研究・学術活動(リハ科内外での研究・学術活動への参加)②職員教育(1年目と患者を担当し指導,1年目の技術研修を実施)③学生教育IIIができる(評価実習)④管理・運営への参加
4年目①学生教育IIIができる(臨床実習)②対外業務ができる(介護予防・訪問・地域連携パス会議)③管理・運営への参加
5年目①新人教育ができる ②対外業務ができる(難病訪問)
4.部署全体の目標設定と実行
『患者様のニーズに応えられるリハビリテーションの提供を目指す』というリハビリテーション科の基本理念のもとに,毎年年度末に次年度の目標の担当者とテーマを決め,進めています。例えば,昨年度は「自宅退院後の転倒を減らすために」を目標にし,家屋改修のケーススタディや家族指導の徹底などを行ってきました。年度の初めに,各部署の目標の達成度と今後の課題について院内研修会で報告します。この活動の中で,都士会学会等に発表できたものもありますが,せっかくの取り組みを,そこまでの研究・学術活動へ引き上げられていないことが今後の課題だと考えています。
5.生涯教育へ向けて
生涯教育は,「その生涯にわたって,あらゆる機会に,あらゆる場所において学習することができ,その成果を適切に生かすことのできる社会の実現を図る」ための理念です。学校教育・職場教育はその中の一部分と思います。職場教育を充実させることで,生涯教育の実現に繋がるものと考えています。