[K-01-1] 地域リハビリテーションの歩みと理学療法士への期待
地域リハ活動の嚆矢は1960年以前より行われていた保健婦の訪問リハである。以後,集団的な活動や組織化活動などが散見される。1973年大阪府大東市の山本和儀PTは住民と協働でノーマライゼーションの町をめざし,行政に理学療法課を立ち上げた。1980年砂原茂一氏は「介護期・終末期リハ」を示唆した。1983年老人保健法による機能訓練事業は全国民にリハを保証した世界に冠たる事業であった。広島県御調町(現在尾道市)の地域包括的ケアシステムは超高齢社会を乗り越える切り札になった。これら先人の活動はすべて制度外の活動から始まっており,魂は過去―現在―未来につながる。
現在,地域リハでのキーワードは介護予防である。介護予防を包括的に捉え段階的に整理し具体的活動につなげる必要がある。すなわち,①健康づくり,②疾病予防,③フレイル予防,④要介護進行の予防,⑤非人間的遺体になることの予防,である。
住民ボランティアなくして超高齢社会は乗り切れない。そのため2005年より茨城県で始めたシルバーリハビリ体操指導士養成事業は,①活動家を選ぶ,②育てる,③組織する,④フォローする,⑤褒賞する,という手法で成果を上げてきた。2025年に向け訪問指導と生活支援など多機能化を目指している。しかし素人の限界がある。
要介護者への介護予防にはPTの協力が欠かせない。病院や施設の枠組みではPTの確保は難しく,また病院・施設の乏しい自治体ではサービスが存在しなくなる。この解決には職業団体に属するPTのプロボノ活動以外にない。住民のボランティアとPTのプロボノ活動で硬直した現状の介護予防活動に光りを当ててほしい。制度は後についてくる。