[K-05-1] リハビリテーション神経科学が医療を創る
昨今の急速なエレクトロニクス技術の発展によって,私たちはヒトの自発的な脳活動を,実環境下で簡便にモニタリングすることができるようになった。身体に装着できるほど小型になったメカトロニクスを使えば,私たちがおこなおうとする身体運動を外骨格ロボットで介助し,筋収縮を電気刺激で誘導することで,脳に人工的な身体感覚を生み出すこともできる。私たちは,このような理工学技術を組み合わせた「ブレイン・マシン・インターフェース(Brain-Machine Interface:BMI)」による医療福祉技術の開発を,本塾医学部リハビリテーション医学教室を中心とした複数の医療機関と共同で推進している。これまでに,重度運動障害者でもBMIを使ってVR環境内を散歩することができる「機能代替BMI」(BMC Neurosci 2010;世界三大配信会社による公告)や,脳卒中患者の運動回復が進むように脳の状態をチューニングする「機能回復BMI」(Brain Topogr in press;Front in Neuroeng 2014;J Rehabil Med 2014;J Rehabil Med 2011)を開発してきた。身体運動のプロセスと脳の可塑性原理を,一貫した論理性の下でモデルベーストに整理して構築するSystems Rehabilitationともいうべき我々のアプローチは,あらゆる治療介入手法を統一論的に解釈し,新たな治療ターゲットとなる疾患,病態,重症度の同定や介入デザインの検討に役立つと考えている。その実例として最近我々は,書痙の運動機能回復を目的として再設計したBMIの臨床的有効性を明らかにしている(BMC Neurosci 2014)。本講演では,私たちのこれまでの歩みをご覧いただくとともに,神経科学とリハビリテーション医療を融合させる学問的試みを紹介する。