第50回日本理学療法学術大会

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分科学会・部門 教育講演

日本小児理学療法学会 分科学会・部門 教育講演6

Fri. Jun 5, 2015 5:00 PM - 5:50 PM 第4会場 (ホールB7(2))

司会:小塚直樹(札幌医科大学 保健医療学部理学療法学科)

[K-06-1] 小児理学療法の道標

近藤和泉1, 小野木啓子2 (1.国立長寿医療研究センター機能回復診療部, 2.藤田保健衛生大学リハビリテーション医学I講座)

小児リハビリテーション(以下,小児リハ)は,これまでの脳性麻痺(以下,CP)児を中心としたリハから,発達障害全体をその対象とするように変貌しつつある。発達障害には自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder:ASD),注意欠如・多動性障害(Attention Deficit Hyperactivity Disorder:AD/HD),限局性学習障害(Specific Learning Disability:SLD),発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)および知的能力障害(Intellectual Disability)がある。その有病率は全体で8.3~9.2%とされているが,極低出生体重児(1000g以下)では特にAD/HD:14.1%~23.1%,およびSLD:16.7~26.7%などの軽度発達障害で高くなるとされている。こういった発達障害児が放置されたまま成長すると,社会的な問題につながる行為障害を引き起こすことが多く,システマティックな対応が求められている。
一方,これまで小児リハの中心的な対象とされてきたCPは0.2%内外と大きな増加を示していない。したがって現在の小児リハは,以前の少数の脳性麻痺を中心とし,運動障害を主なターゲットにした医療から,軽度発達障害の情緒・多動・基本的な学習などの障害への指向も必要となっている。
CP児の医療自体も粗大運動能力評価システム(Gross Motor Function Classification System:GMFCS)の開発による層別化と,Gross Motor Function Measure(GMFM)およびPediatric Evaluation of Disability Inventory(PEDI)などのRasch分析が行われ,難易度マップが使える評価尺度が考案されたことによって,より精緻化・詳細化している。治療に関しても痙縮に対するボツリヌス毒素治療,バクロフェンの髄腔内注入,選択的後根切断術などの適応,片側性障害に対するCI療法などの新しい治療手段の適用によって,その長期的な予後すらも大きく変わろうとしている。
極低出生体重児の救命率の上昇は,同時に重度障害を持つ児の数の増加にもつながっている。NICUで長期の加療を受けた後,重度の呼吸障害などが併存したまま在宅復帰する児が増えている。こういった児の機能回復のポテンシャルは少ないが,呼吸障害に対する対応など,理学療法士を含めたリハチームが果たせる役割は少なくなく,このような社会的な要請にも応える必要があると考えられる。