第50回日本理学療法学術大会

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分科学会・部門 教育講演

日本呼吸理学療法学会 分科学会・部門 教育講演10

Sat. Jun 6, 2015 11:25 AM - 12:15 PM 第5会場 (ホールB5)

司会:高橋仁美(市立秋田総合病院 リハビリテーション科)

[K-10-1] 呼吸リハビリテーション50年の歩み―日本と欧米の対比から―

福地義之助 (順天堂大学名誉教授/CRD研究所)

本講演では過去50年間に蓄積された日本および欧米でえられた研究成果を検証することにより,呼吸リハビリテーション(RRT)が歩んだ道筋をたどり,そのEBMの現状を知り将来の発展に向けての展望を得ることとしたい。
日本においては肺結核を対象にした初歩的な作業療法や運動療法が1940年代に始まった。1950年以降の欧米諸国へ渡った研修生達が持ち帰ったRRTプログラムを立ち上げた。1963年には国療東京病院にリハビリテーション学院が,東大にリハビリテーション部初めて設置され日本胸部疾患学会ではRRTは特別講演(1981年),シンポジウム(1991年)に取り上げられた。1985年に呼吸不全に対する在宅酸素療法(HOT)の保健診療への適用が実現し,呼吸器疾患への包括的リハビリテーションとしてのRRTを見直す大きな機運が生まれた。2001年に日本呼吸器学会と日本呼吸管理学会が“呼吸リハビリテーションに関するステートメント”を発表し,我が国のけるRRTの定義が確立した。これを受けて2003年には上記2学会に日本理学療法士協会を加えた3学会共同の「呼吸リハビリテーションマニュアルー運動療法―」の第一版が発刊された。これにより多職種チームによる包括的RRTが全国的に展開される基盤ができた。2005年の呼吸ケア白書の発表や2006年のRRTの保健診療への独立算定も追い風となりRRTがCOPDを中心とする呼吸器疾患治療の中核的存在としての評価が定まってきている。欧米においても1940年代まではCOPDに対する運動は回避すべきとされたが1950年代からBarachやPettyらによって患者の運動療法が症状の改善に有効だとする報告が相次いだ。1960年代には外来でのRRTが開始された。1980-90年代にはRRTは肺機能の改善をもたらさない欠点が指摘されたが21世紀に入り筋肉トレーニングの効果が解明されてRRTへの有用性評価が高まっている。