第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会・部門 教育講演

物理療法部門 分科学会・部門 教育講演12

2015年6月6日(土) 16:10 〜 17:00 第4会場 (ホールB7(2))

司会:岡崎大資(徳島文理大学 保健福祉学部理学療法学科)

[K-12-1] 痛みの評価と多角的治療の現状と未来

井関雅子 (順天堂大学医学部麻酔科学・ペインクリニック講座)

痛みは,患者が実際に感じることのできる症状であり,医療機関では頻度の高い主訴である。また,国際疼痛学会(IASP)が「不快な感覚と情動体験」と定義しているように,感覚系と情動系の両面から,患者の痛みは表現されている。痛みの治療をはじめる前に,患者の持つ痛みについて評価する必要がある。
まず,問診,視診 打診 触診,神経学的検査などの理学所見をとり,必要に応じて諸検査を行うことで,できるだけ原因や疾患を明らかにさせるわけであるが,痛みそのものを評価するときには,その中でも,問診が非常に重要な鍵となる。問診では,1)痛みの強さ,2)痛みのパターン,3)痛みの性状・性質,4)日常生活支障度,5)生活の質,などの聴取が必要である。さらに,生活歴や心理・社会的背景なども含め,より多角的な評価が必要な場合には,多職種で評価することが有用なことも多い。
一方で,痛みの治療法については,薬物療法,理学療法,認知(行動)療法,侵襲的治療法などがあるが,同じ原因や疾患であっても,罹患期間の長短や,個々の患者の身体的または心理的・社会的状況も加味して痛みを評価した結果から,選択すべき治療法は異なってくる。さらに,科学の進歩と社会の複雑化によって,人間の痛みに対する感受性や対応能力も変化してきている。その中で,痛みを緩和しながら,不安や恐怖を軽減し,患部や全身を動かすことの重要性を繰り返し患者に体験させる,また痛みとうまく付き合いながら日常生活を送れるように指導していくなど,生活の質に焦点を当てた痛みの治療を行うために,多角的なチーム医療はますます必要とされている。