第50回日本理学療法学術大会

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分科学会・部門 教育講演

日本糖尿病理学療法学会 分科学会・部門 教育講演13

Sat. Jun 6, 2015 5:30 PM - 6:20 PM 第5会場 (ホールB5)

司会:大平雅美(信州大学 医学部保健学科理学療法学専攻)

[K-13-1] 肥満症,メタボリックシンドロームに対する先制医療戦略 身体活動の重要性

宮崎滋 (日本肥満学会副理事長/新山手病院生活習慣病センター)

肥満はBMI(Body Mass Index)で判定し,BMIが25以上であれば肥満である。肥満症とは,肥満と判定された人が,肥満に起因あるいは関連する健康障害(糖尿病や脂質異常症,高血圧など11種の疾患)を合併するか,そのような合併症を起しやすい内臓脂肪の過剰蓄積がある場合をいう。一方,メタボリックシンドロームとは,内臓脂肪の過剰蓄積があり,かつ,高血糖,脂質異常,高血圧のうち2項目を保有する場合をいう。肥満症もメタボリックシンドロームも,内臓脂肪蓄積を原因とする肥満から生じる病態であり,ほぼ重なり合ってはいるが,同じではない。
過食,運動不足という生活習慣の乱れがあると,体重が増加し,内臓脂肪が過剰に蓄積する。その結果,糖尿病や脂質異常症,高血圧などが生じるため,動脈硬化が進み心筋梗塞,脳梗塞などの重篤な疾患が引き起される。一方,皮下脂肪の増加は体重を増やし,骨・関節疾患や睡眠時無呼吸症候群を起す。肥満により生じる代謝異常と物理的障害は互いに影響しあって悪循環を形成する。
肥満症・メタボリックシンドロームに対する先制医療として,食事と運動を中心とした生活習慣改善による積極的な体重管理が必要になる。過食していなくても運動量が少なければ体重が増えるので,身体活動量を増やす指導は常に必要である。また,単に体脂肪を減少させるだけでなく,筋,骨格系を増強し,心肺機能を向上させる運動指導が必要となる。身体活動を増やすことにより,肥満症,メタボリックシンドロームが予防,改善され,脳・心血管疾患のみならず,癌や認知症の予防が期待されている。
疾患により障害された運動機能や臓器機能を回復させることは重要だが,そのような疾患を発症させないためにも,運動を中心とした積極的な介入が必要である。現代人は過食もあるが,運動不足はより顕著である。身体活動を高める先制医療が現在求められている。