第50回日本理学療法学術大会

講演情報

分科学会・部門 教育講演

日本理学療法教育学会 分科学会・部門 教育講演14

2015年6月6日(土) 18:40 〜 19:30 第5会場 (ホールB5)

司会:薄直宏(東京女子医科大学八千代医療センター リハビリテーション室)

[K-14-1] 組織で人はいかに育つのか?:人材開発研究の最前線

中原淳 (東京大学大学総合教育研究センター)

筆者の専門は「経営学習論(Managament Learning)」ないしは「人的資源開発論(Human Resource Development)」である。経営学習論とは,企業における人材育成・人材開発の基盤をなすことをめざす学際的な研究領域である。人的資源開発論とは,組織の目標・戦略に合致した知識・スキル・信念を従業員にいかに獲得させ,組織成員性を担保させるかを考察する学問領域である。いずれにしても,組織経営というフィールドに各種の学習研究の知見を組み合わせながら,現場の問題解決に資する実践的かつ臨床的な知の産出をめざしている。
筆者は,これまで「職場学習論(東京大学出版会,単著)」「経営学習論(東京大学出版会,単著)」等において,一般的な企業の職場において,人は,どのような経験をつみかさね(経験学習),どのような他者からフィードバックや支援を受け取り(職場学習),能力を発達させてきたのか,実証的な研究を行ってきた。
最近では研究のスコープをさらに広げて,組織参入前の「大学から企業へのトランジションプロセス」を探究した専門書「活躍する組織人の探究」(東京大学出版会,共著)を共同研究者とともに上梓したりしている。
いずれにしても,筆者の興味関心の中核は「働く成人がいかに学び,成果を残す人材になっていくか」ということである。各プロセスにおける実証的な研究を積み重ねることで,組織参入前から組織の中核人材に至るプロセスを明らかにしたいと考えている。
このたびの貴学会の基調講演においては,企業・組織における経営学習研究,人材開発研究のフロンティアを紹介することを目的とする。本基調講演において筆者が提供する知見は,理学療法というコンテキストとは「遠い」ものであり,その多くは,そのまま適用は難しいと思われる。聴衆の方々においては,諸知見を解釈し,自らのコンテキストに翻訳してお聞き頂ければ幸いである。企業の人材開発研究の,たとえほんの一部であっても,聴衆の方々にとって参考になることがあれば幸甚である。