第50回日本理学療法学術大会

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分科学会・部門 教育講演

日本運動器理学療法学会 分科学会・部門 教育講演16

Sun. Jun 7, 2015 9:40 AM - 10:30 AM 第4会場 (ホールB7(2))

司会:小松泰喜(東京工科大学 医療保健学部理学療法学科)

[K-16-1] 転倒・骨折を含む運動器障害の予防のための身体活動・運動

宮地元彦 (国立健康・栄養研究所健康増進研究部)

運動器障害は高齢者の要介護の主要な要因である。2006年から,「介護予防」制度が開始され,運動器の機能向上プログラムはその重要な柱の一つと位置付けられている。高齢者の自立や生活機能の改善には,様々な介入方法が提案されているが,身体活動・運動介入を中心とした運動器の機能向上が重要であることは,これまでにも指摘されてきた。そこで本研究では65歳以上の高齢者への「身体活動・運動」介入が運動器の機能に関連するアウトカム改善に効果があるか否かを文献的に検証した。
高齢者に対する虚弱改善や介護予防において重要な運動器の機能に関連するADL・IADL,転倒・骨折,サルコペニア,関節痛・腰痛の4つのアウトカムに対する身体活動・運動の介入効果を検討したRCTを系統的にレビューした結果,複合的な運動トレーニングにより転倒を減少させ得ること,十分な強度の筋力トレーニングによりサルコペニアを改善させ得ること,運動の種類を問わず,十分な頻度と量の運動介入により痛みを有する高齢者の関節痛(特に膝痛)の軽減が期待できることなどが示唆された。
厚生労働省は健康増進施策の一環として健康日本21を推進している。その中で,上述のエビデンスに基づきロコモの認知度の向上ならびに足腰の痛みを訴える者の割合の減少を目標数値に掲げ,高齢者の運動器障害の予防を啓発している。また,2013年に策定された身体活動指針アクティブガイドでは高齢者の基準を策定し,生活習慣病だけでなく運動器障害と認知機能を予防するために,身体活動・運動を推奨している。本教育講演では,学術的エビデンスに加え,厚労省における運動器に関する取り組みについても概説し,今後の研究の方向性を討論したい。