第50回日本理学療法学術大会

講演情報

モーニングセミナー

モーニングセミナー1

2015年6月6日(土) 08:20 〜 09:10 第1会場 (ホールA)

司会:立花孝(信原病院 リハビリテーション部)

[M-01-1] 肩関節障害の理学療法

村木孝行 (東北大学病院リハビリテーション部)

肩関節の障害を引き起こす疾患の代表的なものには腱板断裂,インピンジメント症候群,肩関節脱臼,肩関節周囲炎などがある。これらの疾患名は肩関節の構造や病態に関する一定の状態を示しているが,症状や機能障害は必ずしも一定ではなく,疾患名だけではどのような理学療法が適応なのかを単純に決定することはできない。肩関節周囲炎は専門家の中では「いわゆる五十肩」の病態を示すものとなりつつあるが,いまだ異なる複数の病態に対し幅広く用いられ,適切なアプローチを選択するのに混乱を与えている。インピンジメント症候群は「肩峰下インピンジメント症候群」と称されることも多いが,症状を引き起こす現象を探ってみると必ずしもそれが肩峰の下で起きているとは限らない。これらのことより,目の前の症例がどのような病態を有し,そのメカニズムは何なのか,そしてどのような機能障害が関与しているのかを整理して評価していく必要があるといえる。
どのような機能障害が関与しているのかを究明するため,肩甲上腕関節や肩甲胸郭関節における健常者と肩関節障害を有する患者との運動学的な違いが多く研究されている。これまでは健常者と比較して過大,あるいは過小な運動に関しては異常運動として捉え,それら引き起こしているものを機能障害として考えられてきた。しかし,それらの異常運動が症状の原因なのか,代償として起こる結果なのかが明確にされないまま様々なアプローチが考案されている現状がある。それに対して今回は,肩関節の解剖と生体力学の観点から肩関節障害における病態や症状のメカニズムとそれに関する機能障害の整理をし,原因と結果をどのように判別するか提案する。またそれに付随した評価法や治療の実際と障害予防の可能性について提示したい。