第50回日本理学療法学術大会

講演情報

モーニングセミナー

モーニングセミナー3

2015年6月6日(土) 08:20 〜 09:10 第3会場 (ホールB7(1))

司会:堀場充哉(名古屋市立大学病院 リハビリテーション部)

[M-03-1] パーキンソン病の理学療法 Up to date

岡田洋平1,2,3 (1.畿央大学健康科学部理学療法学科, 2.畿央大学大学院健康科学研究科, 3.畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター)

パーキンソン病は緩徐進行性神経変性疾患である。パーキンソン病の主な病態は中脳黒質緻密部のドーパミンニューロンの脱落変性であるが,その他の神経系にも疾患の影響が及ぶことが知られており,パーキンソン病は多系統疾患として捉える必要がある。パーキンソン病は運動障害だけでなく,認知機能障害,精神障害,自律神経障害などをも引き起こす。パーキンソン病患者の呈する症状は非常に多様で,複雑な様相を呈しており,病態の理解に基づき,症状を多面的に捉える必要がある。
パーキンソン病の理学療法は,運動障害を治療対象とすることが多い。パーキンソン病の主な運動障害としては安静時振戦,固縮,無動,姿勢反射障害が挙げられるが,これまでの理学療法の有効性に関するエビデンスや神経科学の知見から鑑みると,無動は理学療法の治療対象となる可能性のある症状であると考えられる。パーキンソン病患者において問題となることが多いすくみ足は,疾患早期は無動の影響が大きいが,疾患の進行に伴い認知機能障害や精神障害などの影響も受けるようになり,より多面的な評価,治療が必要となる。
日本において理学療法の対象となるパーキンソン病患者は,疾患がある程度進行している場合が多い。疾患早期は自動的な運動制御は障害されていても,随意的に運動を制御する能力は比較的残存していると考えられる。したがって,動作練習や指導を行う際にも疾患早期から理学療法介入を行うことが重要である。日本においてパーキンソン病の早期理学療法を充実させるには,理学療法の効果に関する認識の向上,外来や在宅リハビリテーションなど地域でくらす患者が理学療法を行う仕組みづくりが必要である。
本セミナーでは,パーキンソン病の運動障害に対する治療戦略と疾患早期からのリハビリテーションに関する最新の知見を紹介し,パーキンソン病の理学療法の可能性と今後の展開について考える。