[O-0009] 当院における卒後教育体制の構築 第2報
~安全なリハビリテーション体制を目指して~
Keywords:卒後教育, 医療安全, インシデント
【はじめに,目的】
近年の理学療法士数増加に伴い,卒後教育体制の確立は重要な課題である。当院は,回復期リハビリテーション(以下,リハビリ)病棟を有する,療養病床である。平成24年度よりリハビリ部門をPT・OT・ST(以下,療法士)合同のユニット単位での管理体制(以下,療法体制)とし,同時に療法士共通の教育体制を構築した。教育体制の基本理念は,自己研鑽・自己管理と現場教育重視。また療法士のキャリアイメージと,経験1~5年目に相当する専門職技能の段階的な到達目標を示し,レベルに応じた課題・研修を設定した。さらに平成26年度より,療法体制と並んで教育部門が設置され,安全なリハビリ体制構築という視点で活動する機会を得たため,インシデント報告書分析を用いて報告する。
【方法】
まず,当院療法士の教育に関する課題を,バランスト・スコアカードを用いて評価し,平成26年度の活動計画を立案した。療法士教育部門の使命は,安全で質の高いリハビリの提供。平成26年度目標は,安全なリハビリ体制構築。当院の療法士到達目標において,医療安全は療法士共通項目に挙げており,質の向上のため,まず初めに解決すべき課題とした。重点化した目標項目は,医療事故等による損失防止,指標は院内インシデント報告書件数。平成25年度の院内インシデント報告書をABC分析した結果,リハビリ中の転倒・転落,皮膚損傷等の外傷,ルート・チューブ類トラブルの発生件数が多かったため,組織としての損失リスクが高いと考え,療法士教育部門の対策対象として抽出した。具体的施策は,リハビリ中転倒,外傷,ルート・チューブ類トラブルを防止するための業務マニュアルの見直しと現場指導,院内医療安全研修の参加推進と伝達講習支援とした。これらの活動結果として,提出日が平成25年4月から平成26年3月(以下,25年度)と平成26年4月から9月(以下,26年度上期)の,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が提出した院内インシデント報告書件数を後方視的に調査した。なお,1事例に対する複数の報告書は,1件とした。
【結果】
リハビリ中転倒,外傷,ルート・チューブ類トラブルに関する,院内インシデント報告書提出総件数は,25年度45件,26年度上期12件。レベル別内訳では,レベル2は,25年度20件,26年度上期7件。レベル1は,25年度25件,26年度上期5件。項目別では,リハビリ中転倒件数は,25年度21件,26年度上期7件。リハビリ中転倒のうちレベル2は,25年度3件,26年度上期2件。外傷は,25年度14件,26年度上期5件。ルート・チューブ類トラブルは,25年度10件,26年度上期0件であった。一番件数の多かった転倒については,傾向として言語聴覚士には移乗場面,作業療法士はADL練習場面,理学療法士は基本動作練習場面が多かったが,全体としてあらゆる場面にリスクがある状況であった。
【考察】
半年間の結果ではあるが26年度上期に,リハビリ中転倒,外傷,ルート・チューブ類トラブルの発生件数が減少傾向であった。今回,教育支援のひとつとしてリハビリ業務マニュアルの見直し,未整備であった具体的な対策行動を明確化,情報発信を実施した。また療法士の行動を適切化するために現場指導を行った。当院の療法士教育において,専門職技能向上のため専門職ラインでの現場指導を重視し,指導体制の構築,推進を行っている。現場指導は,各療法士からの要請に応じて,役職者による治療代行,同行指導という形式で積極的に行っている。勉強会等で知識を補うだけでは,行動変容は起こりにくく,実際に治療中の行動をフィードバックすることが有効であると考えたからである。その現場指導場面で,安全教育も重要であることを再確認できた。以上半年間の結果より,リハビリ時の安全対策は徐々に功を奏してきているため,今後はさらに質の向上むけての対策を強化していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
リハビリ部門において,安全に関する療法士教育について検討したことは,卒後教育の目標のひとつに安全性向上を捉えられること示し,またその方法を模索する一助になると考える。
近年の理学療法士数増加に伴い,卒後教育体制の確立は重要な課題である。当院は,回復期リハビリテーション(以下,リハビリ)病棟を有する,療養病床である。平成24年度よりリハビリ部門をPT・OT・ST(以下,療法士)合同のユニット単位での管理体制(以下,療法体制)とし,同時に療法士共通の教育体制を構築した。教育体制の基本理念は,自己研鑽・自己管理と現場教育重視。また療法士のキャリアイメージと,経験1~5年目に相当する専門職技能の段階的な到達目標を示し,レベルに応じた課題・研修を設定した。さらに平成26年度より,療法体制と並んで教育部門が設置され,安全なリハビリ体制構築という視点で活動する機会を得たため,インシデント報告書分析を用いて報告する。
【方法】
まず,当院療法士の教育に関する課題を,バランスト・スコアカードを用いて評価し,平成26年度の活動計画を立案した。療法士教育部門の使命は,安全で質の高いリハビリの提供。平成26年度目標は,安全なリハビリ体制構築。当院の療法士到達目標において,医療安全は療法士共通項目に挙げており,質の向上のため,まず初めに解決すべき課題とした。重点化した目標項目は,医療事故等による損失防止,指標は院内インシデント報告書件数。平成25年度の院内インシデント報告書をABC分析した結果,リハビリ中の転倒・転落,皮膚損傷等の外傷,ルート・チューブ類トラブルの発生件数が多かったため,組織としての損失リスクが高いと考え,療法士教育部門の対策対象として抽出した。具体的施策は,リハビリ中転倒,外傷,ルート・チューブ類トラブルを防止するための業務マニュアルの見直しと現場指導,院内医療安全研修の参加推進と伝達講習支援とした。これらの活動結果として,提出日が平成25年4月から平成26年3月(以下,25年度)と平成26年4月から9月(以下,26年度上期)の,理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が提出した院内インシデント報告書件数を後方視的に調査した。なお,1事例に対する複数の報告書は,1件とした。
【結果】
リハビリ中転倒,外傷,ルート・チューブ類トラブルに関する,院内インシデント報告書提出総件数は,25年度45件,26年度上期12件。レベル別内訳では,レベル2は,25年度20件,26年度上期7件。レベル1は,25年度25件,26年度上期5件。項目別では,リハビリ中転倒件数は,25年度21件,26年度上期7件。リハビリ中転倒のうちレベル2は,25年度3件,26年度上期2件。外傷は,25年度14件,26年度上期5件。ルート・チューブ類トラブルは,25年度10件,26年度上期0件であった。一番件数の多かった転倒については,傾向として言語聴覚士には移乗場面,作業療法士はADL練習場面,理学療法士は基本動作練習場面が多かったが,全体としてあらゆる場面にリスクがある状況であった。
【考察】
半年間の結果ではあるが26年度上期に,リハビリ中転倒,外傷,ルート・チューブ類トラブルの発生件数が減少傾向であった。今回,教育支援のひとつとしてリハビリ業務マニュアルの見直し,未整備であった具体的な対策行動を明確化,情報発信を実施した。また療法士の行動を適切化するために現場指導を行った。当院の療法士教育において,専門職技能向上のため専門職ラインでの現場指導を重視し,指導体制の構築,推進を行っている。現場指導は,各療法士からの要請に応じて,役職者による治療代行,同行指導という形式で積極的に行っている。勉強会等で知識を補うだけでは,行動変容は起こりにくく,実際に治療中の行動をフィードバックすることが有効であると考えたからである。その現場指導場面で,安全教育も重要であることを再確認できた。以上半年間の結果より,リハビリ時の安全対策は徐々に功を奏してきているため,今後はさらに質の向上むけての対策を強化していきたい。
【理学療法学研究としての意義】
リハビリ部門において,安全に関する療法士教育について検討したことは,卒後教育の目標のひとつに安全性向上を捉えられること示し,またその方法を模索する一助になると考える。