第50回日本理学療法学術大会

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口述

参加型症例研究ディスカッション 口述1

ICU症例

Fri. Jun 5, 2015 10:10 AM - 11:10 AM 第5会場 (ホールB5)

座長:中島活弥(藤沢湘南台病院 リハビリテーション科), 上西啓裕(和歌山県立医科大学附属病院 リハビリテーション部)

[O-0021] イレウス術後に敗血症となりcritical illness polyneuropathy(CIP)を併発した1症例

金尾亮兵, 永冨史子, 森國順也, 濱口雄喜 (川崎医科大学附属川崎病院)

Keywords:critical illness polyneuropathy, 早期運動療法, リスク管理

【目的】
ICU-AWなどの発生は生命予後や機能予後を不良にし,入院期間延長の原因となる。合併症を予防し早期改善することは理学療法の重要な役割である。今回,イレウス術後に敗血症となり,四肢麻痺および両側声帯麻痺を呈しCIPを併発した症例を経験したので報告する。
【症例提示】
80歳代男性。腹痛,嘔吐にて近医でイレウスと診断され,外科加療目的にて当院入院となった。イレウス解除術後より敗血症性ショックを呈し意識レベル低下し人工呼吸器管理となった。人工呼吸器抜管後も咽頭部にwheezeを認め両側反回神経麻痺と診断,気管切開施行された。意識レベル回復後も四肢筋力低下が残存したが,頭蓋内病変は認めず,末梢神経伝導検査にて軸索障害の所見を認め,CIPと診断された。
【経過と考察】
術後7病日よりICUにて理学療法開始した。覚醒状態はRASS:-1。自動運動能は肘関節屈伸と手指屈伸,足関節底背屈のみ可能であった。CIPの治療に確立されたものはないが,早期リハ介入により予後は良好とされている。本症例においても筋機能の改善を目的に筋伸長運動,自動介助運動を実施し,さらに抗重力刺激を用いた筋機能の賦活を目的に端座位保持練習を実施した。この際,静脈還流量の低下による血圧低下が危惧され,動脈圧波形より心拍出量を推測し,血圧をモニタリングしながら下腿ポンプ併用下での離床運動を実施した。27病日より四肢筋力は徐々に回復し歩行練習を開始した。本症例では反回神経麻痺による嚥下障害も呈しており胃瘻の受容が進まず経鼻栄養が続いたため,杖歩行安定後も病棟歩行自立とはならなかった。その後,胃瘻造設し66病日に近医転院,97病日で自宅退院となった。本症例ではリスク管理を行いながら早期からの理学療法介入により比較的良好な経過を辿ったが,経鼻栄養が病棟活動度向上への弊害となった。ADL向上には早期に栄養ルートを確保し積極的な運動療法を実施することが重要と考えた。