[O-0039] 支持脚・非支持脚における片脚着地動作の円滑さについて
―ジャークコストを用いて―
Keywords:着地動作, ジャークコスト, 障害予防
【はじめに】
バスケットボールやバレーボールにおける着地動作は,利き脚,非利き脚での片脚着地が混在し,足関節捻挫や前十字靭帯損傷などの障害を伴うことが多いとされている。利き脚は,ボールを蹴る,足で砂を均すなど動作中優先的に使用したり,片脚で物を操作するときに使用する。非利き脚は,片脚でバランスを取るときや片脚で身体を安定させるときに使用する。非利き脚は動作中に支持脚となることが多い。利き脚・非利き脚が異なった機能を有することは,片脚着地の際,下肢3関節運動や動作の円滑さにも違いが生じると予想される。片脚着地に関して,利き脚に関する下肢関節運動の運動力学的特性や性差,筋活動に関する報告は散見する。しかし,利き脚の規定も様々であり,利き脚,非利き脚での違いに関しての報告は少ない。本研究の目的は,支持脚及び非支持脚における片脚着地の円滑さに着目し,運動学的特徴及び着地動作の円滑さについて比較検討する事とした。
【方法】
対象は,下肢に整形外科疾患のない成人男性7名(年齢:25.1±1.6歳,身長1.7±0.1m,体重67.1±4.9kg)とした。計測機器は,VICON MXシステム(VICON,カメラ10台,100Hz),床反力計OR6-7(AMTI,2枚,1,000Hz),使用ソフトはVICON NEXUS1.8.5を用いた。マーカは,Helen Hayes Marker setをもとに35ヵ所に貼付した。運動課題は,30cm台から自由落下後,支持脚・非支持脚にて片脚着地し,3秒間静止することとした。支持脚及び非支持脚の規定は,Waterloo Footedness Questionnaire(Elias, Bryden, & Bulman-Fleming.1998)を用いた。各運動課題ともに計測前に十分練習を行い,3回計測を行った。3回施行した中でランダムにデータを抽出し検証した。また,各条件ともに上肢の影響を抑えるため腰に手を当て計測を行った。計測範囲は,片脚着地における初期接地(Initial Contact:IC)から身体重心(Center of Gravity:COG)最下点までの範囲とし,自然3次スプライン補間を用いて,各データのサンプル系列を正規化した。片脚着地の円滑さを求める指標として躍度の二乗の総和であるジャークコストを採用した。解析項目は,支持脚・非支持脚におけるジャークコスト,IC時の下肢3関節角度,ICからCOG最下点までの下肢3関節角度変位量,鉛直床反力(Vertical Ground Reaction Force:VGRF)ピーク値とした。支持脚・非支持脚間における各項目の平均値の差の有無について,Paired t-testを用いて検証し,ジャークコストとIC時の下肢3関節角度,下肢3関節角度変位量,VGRFピーク値,COG変位量の関係をPearsonの相関係数を用いて検証した。有意水準5%とした。
【結果】
ジャークコストは,支持脚:5.3×103±4.4×103m2/sec5、非支持脚:8.0×103±4.9×103m2/sec5で非支持脚において有意に高い値を示した(p=0.03)。また,一人を除いて支持脚と比較し非支持脚で高い値を示した。股関節屈曲角度変位量は,支持脚:25.4±3.2度,非支持脚:24.8±4.6度,膝関節屈曲角度変位量は,支持脚:50.3±6.4度,非支持脚:47.2±6.2度,足関節背屈角度変位量は,支持脚:45.2±8.4度,非支持脚:39.9±4.4度で各関節ともに有意差は見られなかった。支持脚において,ジャークコストと相関があったものは,IC時の股関節外転角度がr=0.65,VGRFピーク値がr=0.73,COG前後変位量がr=0.74で正の相関を認めた。ジャークコストと股関節屈曲変位量がr=-0.75で負の相関を認めた。非支持脚において,ジャークコストとIC時の股関節屈曲角度がr=-0.69,膝関節外反角度がr=-0.80で負の相関を認めた。
【考察】
非支持脚の片脚着地は,IC時の股関節屈曲角度,膝関節外反角度が大きくCOG最下点までの間,その他関節においても衝撃緩衝を行うことが出来ず,支持脚と比較し円滑さに欠けると考えられた。このことから非支持脚の片脚着地は,障害に繋がる危険性があると考えた。片脚着地を円滑に行うための条件は,IC時の股関節外転角度が減少,IC後に股関節屈曲角度が増大と考えた。それにより,COG前後変位量を最小限に留めることが可能と考えた。また,着地動作においてジャークコストを指標として評価することの有効性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により片脚着地を円滑に行うための条件を見出すことで,スポーツ動作で発生する下肢3関節障害の原因解明,スポーツ動作の指導法構築,パフォーマンス向上に繋げることに役立つ一助となる。
バスケットボールやバレーボールにおける着地動作は,利き脚,非利き脚での片脚着地が混在し,足関節捻挫や前十字靭帯損傷などの障害を伴うことが多いとされている。利き脚は,ボールを蹴る,足で砂を均すなど動作中優先的に使用したり,片脚で物を操作するときに使用する。非利き脚は,片脚でバランスを取るときや片脚で身体を安定させるときに使用する。非利き脚は動作中に支持脚となることが多い。利き脚・非利き脚が異なった機能を有することは,片脚着地の際,下肢3関節運動や動作の円滑さにも違いが生じると予想される。片脚着地に関して,利き脚に関する下肢関節運動の運動力学的特性や性差,筋活動に関する報告は散見する。しかし,利き脚の規定も様々であり,利き脚,非利き脚での違いに関しての報告は少ない。本研究の目的は,支持脚及び非支持脚における片脚着地の円滑さに着目し,運動学的特徴及び着地動作の円滑さについて比較検討する事とした。
【方法】
対象は,下肢に整形外科疾患のない成人男性7名(年齢:25.1±1.6歳,身長1.7±0.1m,体重67.1±4.9kg)とした。計測機器は,VICON MXシステム(VICON,カメラ10台,100Hz),床反力計OR6-7(AMTI,2枚,1,000Hz),使用ソフトはVICON NEXUS1.8.5を用いた。マーカは,Helen Hayes Marker setをもとに35ヵ所に貼付した。運動課題は,30cm台から自由落下後,支持脚・非支持脚にて片脚着地し,3秒間静止することとした。支持脚及び非支持脚の規定は,Waterloo Footedness Questionnaire(Elias, Bryden, & Bulman-Fleming.1998)を用いた。各運動課題ともに計測前に十分練習を行い,3回計測を行った。3回施行した中でランダムにデータを抽出し検証した。また,各条件ともに上肢の影響を抑えるため腰に手を当て計測を行った。計測範囲は,片脚着地における初期接地(Initial Contact:IC)から身体重心(Center of Gravity:COG)最下点までの範囲とし,自然3次スプライン補間を用いて,各データのサンプル系列を正規化した。片脚着地の円滑さを求める指標として躍度の二乗の総和であるジャークコストを採用した。解析項目は,支持脚・非支持脚におけるジャークコスト,IC時の下肢3関節角度,ICからCOG最下点までの下肢3関節角度変位量,鉛直床反力(Vertical Ground Reaction Force:VGRF)ピーク値とした。支持脚・非支持脚間における各項目の平均値の差の有無について,Paired t-testを用いて検証し,ジャークコストとIC時の下肢3関節角度,下肢3関節角度変位量,VGRFピーク値,COG変位量の関係をPearsonの相関係数を用いて検証した。有意水準5%とした。
【結果】
ジャークコストは,支持脚:5.3×103±4.4×103m2/sec5、非支持脚:8.0×103±4.9×103m2/sec5で非支持脚において有意に高い値を示した(p=0.03)。また,一人を除いて支持脚と比較し非支持脚で高い値を示した。股関節屈曲角度変位量は,支持脚:25.4±3.2度,非支持脚:24.8±4.6度,膝関節屈曲角度変位量は,支持脚:50.3±6.4度,非支持脚:47.2±6.2度,足関節背屈角度変位量は,支持脚:45.2±8.4度,非支持脚:39.9±4.4度で各関節ともに有意差は見られなかった。支持脚において,ジャークコストと相関があったものは,IC時の股関節外転角度がr=0.65,VGRFピーク値がr=0.73,COG前後変位量がr=0.74で正の相関を認めた。ジャークコストと股関節屈曲変位量がr=-0.75で負の相関を認めた。非支持脚において,ジャークコストとIC時の股関節屈曲角度がr=-0.69,膝関節外反角度がr=-0.80で負の相関を認めた。
【考察】
非支持脚の片脚着地は,IC時の股関節屈曲角度,膝関節外反角度が大きくCOG最下点までの間,その他関節においても衝撃緩衝を行うことが出来ず,支持脚と比較し円滑さに欠けると考えられた。このことから非支持脚の片脚着地は,障害に繋がる危険性があると考えた。片脚着地を円滑に行うための条件は,IC時の股関節外転角度が減少,IC後に股関節屈曲角度が増大と考えた。それにより,COG前後変位量を最小限に留めることが可能と考えた。また,着地動作においてジャークコストを指標として評価することの有効性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
本研究により片脚着地を円滑に行うための条件を見出すことで,スポーツ動作で発生する下肢3関節障害の原因解明,スポーツ動作の指導法構築,パフォーマンス向上に繋げることに役立つ一助となる。