[O-0040] ソマトポーズとサルコペニア・骨粗鬆症との関連
Keywords:ソマトポーズ, サルコペニア, 骨粗鬆症
【はじめに,目的】
加齢に伴ってインスリン様成長因子(IGF-1)の血中レベルが低下することをソマトポーズという。IGF-1は成長ホルモンの刺激によって主に肝臓で生成されるが,骨格筋収縮によってIGF-1の分泌が促進されることも知られている。ソマトポーズはサルコペニア,骨粗鬆症,それにメタボリックシンドロームや認知機能低下など,高齢期に生じる様々な疾病・機能低下に関連すると考えられている。本研究の目的はソマトポーズとサルコペニア・骨粗鬆症との関連を検討することである。
【方法】
対象は要支援・介護認定を受けていない健常な地域在住高齢者とした。参加者に対して運動機能(歩行速度,握力),身体組成(生体電気インピーダンス法),それに踵骨骨密度(超音波)の測定を実施した。また,同日に採血を行いIGF-1の血中レベルを分析した。アジアサルコペニアワーキンググループのアルゴリズムに従い,運動機能低下および骨格筋量減少の両者を兼ね備えるものをサルコペニアと定義し,踵骨骨密度の測定により,若年比較比(%YAM)が70%未満のものを骨粗鬆症と定義した。IGF-1は男女それぞれにおいて正規分布していることを確認した後に四分位を求めた。統計解析としては,サルコペニア,骨粗鬆症の有無を従属変数に,IGF-1の四分位群(Q1-Q4)をカテゴリー変数化して説明変数に,さらに年齢を調整変数に投入したロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
参加者は男性421名(74.3±5.9歳),女性720名(73.8±5.6歳),合計1,141名であった。サルコペニア有症率は男性12.9%,女性6.5%であり,骨粗鬆症の有症率は男性27.2%,女性29.7%であった。血清IGF-1は男女ともに加齢とともに減少する傾向にあり,男性では103.1±33.9ng/ml(第1四分位81ng/ml,第2四分位100ng/ml,第3四分位122ng/ml),女性では88.4±28.4ng/ml(第1四分位69ng/ml,第2四分位87ng/ml,第3四分位107ng/ml)であった。男女ともにIGF-1の血中濃度が低くなるほど,サルコペニアおよび骨粗鬆症の有症率は有意に高まった(P<0.05)。サルコペニアを従属変数に投入したロジスティック回帰分析では,IGF-1のQ4をリファレンスとするとQ1のオッズ比は男性15.7(95%CI:3.5-69.7),女性8.9(95%CI 1.1-70.2)となった。骨粗鬆症を従属変数に投入した場合でも,同様にQ4をリファレンスとするとQ1のオッズ比は男性3.1(95%CI:1.5-6.5),女性3.5(95%CI:1.8-6.6)と有意に有症率が高かった。
【考察】
本研究結果より,男女ともにソマトポーズがサルコペニアおよび骨粗鬆症の両者に関連していることが示唆された。IGF-1は骨格筋の同化関連ホルモンであると同時に骨形成促進関連ホルモンである。本研究では四分位によってカテゴリー化を行ったため,男性81ng/ml以下,女性69ng/ml以下というのがIGF-1の下限の目安となったが,今後は対象者数および対象者の機能レベルの幅を拡大するとともに,追跡期間を設けることによって明確な基準値の作成を行う必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
IGF-1は身体活動による骨格筋収縮によって分泌が促進するため,身体活動の促進によってサルコペニア・骨粗鬆症の両者の予防に寄与できる可能性がある。ホルモンを含め,身体内部の様々な変化を詳細に捉えることにより,身体活動や理学療法のエビデンス構築につながるものと考えられる。
加齢に伴ってインスリン様成長因子(IGF-1)の血中レベルが低下することをソマトポーズという。IGF-1は成長ホルモンの刺激によって主に肝臓で生成されるが,骨格筋収縮によってIGF-1の分泌が促進されることも知られている。ソマトポーズはサルコペニア,骨粗鬆症,それにメタボリックシンドロームや認知機能低下など,高齢期に生じる様々な疾病・機能低下に関連すると考えられている。本研究の目的はソマトポーズとサルコペニア・骨粗鬆症との関連を検討することである。
【方法】
対象は要支援・介護認定を受けていない健常な地域在住高齢者とした。参加者に対して運動機能(歩行速度,握力),身体組成(生体電気インピーダンス法),それに踵骨骨密度(超音波)の測定を実施した。また,同日に採血を行いIGF-1の血中レベルを分析した。アジアサルコペニアワーキンググループのアルゴリズムに従い,運動機能低下および骨格筋量減少の両者を兼ね備えるものをサルコペニアと定義し,踵骨骨密度の測定により,若年比較比(%YAM)が70%未満のものを骨粗鬆症と定義した。IGF-1は男女それぞれにおいて正規分布していることを確認した後に四分位を求めた。統計解析としては,サルコペニア,骨粗鬆症の有無を従属変数に,IGF-1の四分位群(Q1-Q4)をカテゴリー変数化して説明変数に,さらに年齢を調整変数に投入したロジスティック回帰分析を行った。
【結果】
参加者は男性421名(74.3±5.9歳),女性720名(73.8±5.6歳),合計1,141名であった。サルコペニア有症率は男性12.9%,女性6.5%であり,骨粗鬆症の有症率は男性27.2%,女性29.7%であった。血清IGF-1は男女ともに加齢とともに減少する傾向にあり,男性では103.1±33.9ng/ml(第1四分位81ng/ml,第2四分位100ng/ml,第3四分位122ng/ml),女性では88.4±28.4ng/ml(第1四分位69ng/ml,第2四分位87ng/ml,第3四分位107ng/ml)であった。男女ともにIGF-1の血中濃度が低くなるほど,サルコペニアおよび骨粗鬆症の有症率は有意に高まった(P<0.05)。サルコペニアを従属変数に投入したロジスティック回帰分析では,IGF-1のQ4をリファレンスとするとQ1のオッズ比は男性15.7(95%CI:3.5-69.7),女性8.9(95%CI 1.1-70.2)となった。骨粗鬆症を従属変数に投入した場合でも,同様にQ4をリファレンスとするとQ1のオッズ比は男性3.1(95%CI:1.5-6.5),女性3.5(95%CI:1.8-6.6)と有意に有症率が高かった。
【考察】
本研究結果より,男女ともにソマトポーズがサルコペニアおよび骨粗鬆症の両者に関連していることが示唆された。IGF-1は骨格筋の同化関連ホルモンであると同時に骨形成促進関連ホルモンである。本研究では四分位によってカテゴリー化を行ったため,男性81ng/ml以下,女性69ng/ml以下というのがIGF-1の下限の目安となったが,今後は対象者数および対象者の機能レベルの幅を拡大するとともに,追跡期間を設けることによって明確な基準値の作成を行う必要がある。
【理学療法学研究としての意義】
IGF-1は身体活動による骨格筋収縮によって分泌が促進するため,身体活動の促進によってサルコペニア・骨粗鬆症の両者の予防に寄与できる可能性がある。ホルモンを含め,身体内部の様々な変化を詳細に捉えることにより,身体活動や理学療法のエビデンス構築につながるものと考えられる。