[O-0043] 超高齢者への運動療法介入による歩行速度と大腿及び下腿周径の変化
Keywords:超高齢者, 筋力トレーニング, 歩行速度
【はじめに,目的】
近年,高齢者のサルコペニアに関する報告が散見される。欧州では歩行速度が0.8 m/s以下で握力や下腿周径の低下を認められた場合にサルコペニアと定義している。またサルコペニアは移動能力やADL,死亡率とも関連していることが報告されている。歩行速度は移動能力の指標であり,下腿周径は栄養状態や骨格筋量に関与すると報告されているが,施設入所の超高齢者に対する運動療法の効果として明らかにした報告はない。本研究は下肢筋力トレーニングによる運動療法によって,歩行速度,大腿周径及び下腿周径が増加するのかを明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は指示理解,立位保持が可能な施設入所高齢者9名18肢,平均年齢91歳(85-97歳)とした。栄養の状態を把握するため,血液生化学データより血清アルブミン値(Alb)と体重を調査した。身体計測は介入前と介入後に実施した。メジャーを用いて大腿10 cm周径,下腿最大周径,下腿最小周径を背臥位,膝伸展位にて3度測定し最大値を代表値とした。また歩行可能な対象者はストップウォッチを用い10 m歩行路の歩行時間を測定し歩行速度を算出した。介入は12週間,週5日の頻度で実施した。内容は立位にて股関節屈曲,股関節伸展,股関節外転,足関節底屈運動を20回ずつの下肢筋力トレーニングを基本とした。運動負荷として2秒に1回のペースでゆっくり実施した。また身体機能に応じて立ち上がり練習,立位バランストレーニング,歩行練習を実施した。統計処理はwilcoxonの符号付き順位和検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
12週間継続できた対象者は7名であった。対象者のAlbの平均は3.5 g/dlであり,体重は介入前が38.1 kg,介入後は38.3 kgであった。下腿最大周径の平均±標準偏差は左右それぞれ介入前27.6±3.1,27.9±2.5 cm,介入後28.5±2.2,28.5±2.2 cmであった。下腿最小周径の平均±標準偏差は左右それぞれ介入前19.3±1.3,18.8±1.6 cm,介入後18.6±1.2,18.4±1.5 cmであった。大腿10cm周径の平均±標準偏差は左右それぞれ介入前34.5±3.2,35.3±3.9 cm,介入後35.5±2.8,36.5±2.9 cmであった。歩行可能であった対象者は5名で,歩行速度は介入前0.53±0.18,介入後0.76±0.19 m/sであった。右下腿最大周径と左右の大腿10cm周径と歩行速度で有意差がみとめられた(p<0.05)。
【考察】
筋力トレーニングを用いた運動療法介入は歩行可能な対象者全員の歩行速度を向上させた。歩行速度や大腿周径は大腿四頭筋の筋力と相関することが報告されており,歩行速度向上の原因として筋力トレーニングによる筋力や筋肉量の向上が考えられる。また右下腿の最大周径の増加についても栄養状態の安定と下肢の筋力トレーニングの効果が考えられる。左下腿の最大周径で増加を認めなかった要因として,最小周径でも左下腿が太い傾向があること,心不全による浮腫は左下肢にでやすいことの影響があった可能性がある。高齢者に対するトレーニングとして低負荷でゆっくりと実施するトレーニングにより安全に筋力増加が可能であることが報告されている。今回筋力トレーニングをゆっくりと実施したことで疼痛などの誘発もなく負荷も適当であったことが考えられる。今回超高齢者に対する筋力トレーニングを用いた運動療法により歩行速度や大腿及び下腿周径は改善しうる可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
超高齢者に対する筋力トレーニングを用いた運動療法のエビデンスとなると考えられる。
近年,高齢者のサルコペニアに関する報告が散見される。欧州では歩行速度が0.8 m/s以下で握力や下腿周径の低下を認められた場合にサルコペニアと定義している。またサルコペニアは移動能力やADL,死亡率とも関連していることが報告されている。歩行速度は移動能力の指標であり,下腿周径は栄養状態や骨格筋量に関与すると報告されているが,施設入所の超高齢者に対する運動療法の効果として明らかにした報告はない。本研究は下肢筋力トレーニングによる運動療法によって,歩行速度,大腿周径及び下腿周径が増加するのかを明らかにすることを目的とする。
【方法】
対象は指示理解,立位保持が可能な施設入所高齢者9名18肢,平均年齢91歳(85-97歳)とした。栄養の状態を把握するため,血液生化学データより血清アルブミン値(Alb)と体重を調査した。身体計測は介入前と介入後に実施した。メジャーを用いて大腿10 cm周径,下腿最大周径,下腿最小周径を背臥位,膝伸展位にて3度測定し最大値を代表値とした。また歩行可能な対象者はストップウォッチを用い10 m歩行路の歩行時間を測定し歩行速度を算出した。介入は12週間,週5日の頻度で実施した。内容は立位にて股関節屈曲,股関節伸展,股関節外転,足関節底屈運動を20回ずつの下肢筋力トレーニングを基本とした。運動負荷として2秒に1回のペースでゆっくり実施した。また身体機能に応じて立ち上がり練習,立位バランストレーニング,歩行練習を実施した。統計処理はwilcoxonの符号付き順位和検定を行い,有意水準は5%未満とした。
【結果】
12週間継続できた対象者は7名であった。対象者のAlbの平均は3.5 g/dlであり,体重は介入前が38.1 kg,介入後は38.3 kgであった。下腿最大周径の平均±標準偏差は左右それぞれ介入前27.6±3.1,27.9±2.5 cm,介入後28.5±2.2,28.5±2.2 cmであった。下腿最小周径の平均±標準偏差は左右それぞれ介入前19.3±1.3,18.8±1.6 cm,介入後18.6±1.2,18.4±1.5 cmであった。大腿10cm周径の平均±標準偏差は左右それぞれ介入前34.5±3.2,35.3±3.9 cm,介入後35.5±2.8,36.5±2.9 cmであった。歩行可能であった対象者は5名で,歩行速度は介入前0.53±0.18,介入後0.76±0.19 m/sであった。右下腿最大周径と左右の大腿10cm周径と歩行速度で有意差がみとめられた(p<0.05)。
【考察】
筋力トレーニングを用いた運動療法介入は歩行可能な対象者全員の歩行速度を向上させた。歩行速度や大腿周径は大腿四頭筋の筋力と相関することが報告されており,歩行速度向上の原因として筋力トレーニングによる筋力や筋肉量の向上が考えられる。また右下腿の最大周径の増加についても栄養状態の安定と下肢の筋力トレーニングの効果が考えられる。左下腿の最大周径で増加を認めなかった要因として,最小周径でも左下腿が太い傾向があること,心不全による浮腫は左下肢にでやすいことの影響があった可能性がある。高齢者に対するトレーニングとして低負荷でゆっくりと実施するトレーニングにより安全に筋力増加が可能であることが報告されている。今回筋力トレーニングをゆっくりと実施したことで疼痛などの誘発もなく負荷も適当であったことが考えられる。今回超高齢者に対する筋力トレーニングを用いた運動療法により歩行速度や大腿及び下腿周径は改善しうる可能性が示唆された。
【理学療法学研究としての意義】
超高齢者に対する筋力トレーニングを用いた運動療法のエビデンスとなると考えられる。