第50回日本理学療法学術大会

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口述

口述4

予防理学療法1

Fri. Jun 5, 2015 10:10 AM - 11:10 AM 第10会場 (ガラス棟 G602)

座長:吉田剛(高崎健康福祉大学 保健医療学部理学療法学科)

[O-0045] 地域在住高齢者におけるCalf Ankle Index

身体機能および転倒リスクとの関連

寺山圭一郎1, 新野直明2, 清水一寛2, 小川明宏1, 秋葉崇1, 根本亜友美1, 土谷あかり1, 阿左見祐二1, 中川晃一1,4 (1.東邦大学医療センター佐倉病院リハビリテーション部, 2.桜美林大学大学院老年学研究科, 3.東邦大学医療センター佐倉病院循環器内科, 4.東邦大学医療センター佐倉病院整形外科)

Keywords:Calf Ankle Index, 下腿周囲径, 転倒

【はじめに,目的】下腿周囲径は簡便な指標で,これまで,栄養状態や死亡率のほか,転倒と関連があるとされているsarcopeniaやfrailtyとの関連も報告されている。一方で,皮下脂肪の影響を受けるなど,個体差があることが問題点として指摘されている。本研究は,下腿周囲径の最大と最小の比をとりCalf Ankle Index(以下CAI)とし,個体差に左右されない指標として,転倒リスクと関連するかを明らかにすることを目的とした。
【方法】2012年~2014年の3年の間に千葉県A市B地域およびC地域の介護予防教室に自らの意志で参加した地域在住高齢者を対象とした。対象数は2012年が40例,2013年が47例,2014年が45例で合計132例となっていた。いずれも初回参加時に体力測定および転倒リスクにかかわる調査を実施した。体力測定の項目は,身長,体重,下腿周囲径(最大と最小)の測定のほか,厚生労働省作成の介護予防マニュアルの運動器機能向上マニュアルを参考に,握力,膝伸展筋力,開眼片脚立ち時間,Timed up and go test(以下TUG)および5m歩行とした。また,転倒リスクに関しては,やはりマニュアルを参考に,転倒リスク評価票および転倒不安感尺度について調査することとした。5m歩行は通常速度と最大速度の2回実施した。下腿周囲径,握力,膝伸展筋力,開眼片脚立ち時間については,いずれも左右の平均値を算出した。解析は,身長と体重からBody mass index(以下BMI)を算出し,下腿周囲径は最大と最小の比をとりCAIとした。また,膝伸展筋力は体重との比も算出した。そのうえで,各項目の男女差をMann-WhitneyのU検定にて比較した。また,全症例におけるCAIおよび最大周囲径と各項目の関係をPearsonの積率相関係数を用いて解析した。
【結果】132例のうち,男性は15例で,女性が117例となっていた。男性と女性の比較で有意差が認められた項目は下腿最小周囲径と握力で,下腿最小周囲径は男性が21.31±1.65(21.25)cm,女性が20.32±1.47(20.25)cm,握力は男性が29.63±4.80(23.67)kg,女性が20.50±4.07(21.00)kgとなっていた。最大周囲径およびCAIについては男女での有意差は認められなかった。CAIと有意な相関が認められた項目は,BMI(r=0.222),開眼片脚立ち時間(r=0.183),5m最大歩行(r=-0.184)および転倒リスク評価票(r=-0.290)となっていた。また,最大周囲径と有意な相関が認められた項目はBMI(r=0.760),握力(r=0.417)および膝伸展筋力(r=0.247)となっていた。
【考察】下腿最小周囲径において男女差が認められたことから,男女での骨格の違い,つまり個体差が考えられた。しかし,CAI,最大周囲径ともにBMIと有意な相関が認められたことから,先行研究における指摘のとおり下腿周囲径は皮下脂肪の影響を受けることが示唆された。それでも,最大周囲径と比較してCAIの相関係数がより小さくなっていたことから,最大周囲径と最小周囲径の比をとりCAIとすることで,BMIの影響がより小さくなっていたものと考えられた。その他,最大周囲径は握力および膝伸展筋力と有意な相関が認められたことから,筋力を反映しているものと考えられた。一方で,CAIは弱いながらも開眼片足立ち時間と5m最大歩行および転倒リスク評価票と有意な相関が認められた。このことから,バランス能力および歩行能力と関連があり,これが転倒リスクとして反映されたものと考える。本研究の限界として,男性の症例数の少なさが挙げられる。男性と女性では骨格が異なるほか,骨格筋の質も異なるとされている。今後は,男性の症例数を増やし,下腿周囲径をCAIとすることで性差の影響がなくなるかについて検討すること,また,実際の転倒との関連について,長期縦断的に調査を進めていくことが必要であると考える。
【理学療法学研究としての意義】下腿周囲径をCAIとしたことで,個体差の影響を少なくしたうえで,弱いながらも,転倒リスクとの関連が明らかとなった。これにより,簡便な評価方法であるCAIが転倒予防の必要な症例を抽出するためのスクリーニングとして利用できる可能性が示唆された。