[O-0050] 理学療法士・作業療法士養成校の入学時における学生の進路希望
専門学校と4年制大学における調査
Keywords:進路, 卒前教育, 臨床実習
【目的】
近年18歳人口の減少により,大学全入時代を迎えつつあり,それによって進学の目的や人生の目標が不明瞭な学生が増加していることがしばしば指摘されている。その傾向は,養成校の乱立と相まって医療専門職養成校にまで及んでおり,理学療法士あるいは作業療法士になるためのモチベーションや卒業後のビジョンがない学生が増えているように感じる。またそれが臨床実習を契機に顕在化し,問題となる事例が多く見受けられる。そこで,理学療法士・作業療法士養成校が実現すべき教育の方向性を考えるために,1年生を対象にアンケート調査を実施し,理学療法士・作業療法士養成校卒業後の進路希望の傾向について明確にすることを目的とした。
【対象】
アンケート対象者は理学療法士および作業療法士養成校の1年生とした。昼間部の学生のみに限定した。
【方法】
アンケートは無記名の自記式質問票を用いて回答させた。基礎情報についての項目は,年齢・性別・社会人経験の有無・最終学歴(高卒・専門学校または短期大学卒・大学中退・大卒・大学院中退・院卒)とした。進路希望については,養成校卒業後の最初の進路として,まず就職か進学を選択させ,次に就職先または進学先について選択式(複数回答可)で回答させた。
【結果】
専門学校1年生196名(男性135名・女性61名,平均年齢20.7±4.6歳),4年制大学1年生420名(男性235名・女性185名,平均年齢18.3±0.7歳)から協力を得た。
専門学校では,社会人経験者27.0%,未経験者73.0%で,最終学歴は高卒74.0%,専門学校または短期大学卒6.1%,大学中退3.6%,大卒15.8%,大学院中退0.5%であった。養成校卒業後の最初の進路として,就職希望99.0%,その他・無回答1.0%だった。就職希望者のうち希望する就職先(複数回答あり)は,医療施設96.9%,高齢者・障害者用施設20.6%,行政機関6.2%,企業5.2%,教育機関4.1%,その他・無回答7.2%であった。
4年制大学では,社会人未経験者99.5%,その他・無回答0.5%,最終学歴は高卒97.9%,大学中退1.0%,大卒0.2%,その他・無回答1.0%であった。養成校卒業後の最初の進路として,就職希望97.1%,進学希望1.9%,その他・無回答1.0%だった。就職希望者のうち希望する就職先(複数回答あり)は,医療施設95.8%,高齢者・障害者用施設21.8%,行政機関2.0%,企業5.9%,教育機関6.4%,その他・無回答3.4%であった。
【考察】
平成26年度に文部科学省が発表した,大学新卒者の進路についての報告では,就職73.9%,進学12.6%,その他13.4%とある。日本全体の動向と比較すると,理学療法士・作業療法士養成校では卒後の進学希望者の割合は低かった。しかし,4年制大学では,すでに1年次の時点で卒後に進学を希望する学生が含まれていたことから,今後4年制大学での養成が中心になるに従ってその傾向は強まるかもしれない。また4年制大学においては,卒後に臨床への就職を希望していない者(進学希望含む)が4.5%いたことも特徴的であった。
さらに,理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則では「実習時間の三分の二以上を病院又は診療所において行うこと」と定められており,臨床実習は病院や診療所・クリニックといった医療施設が中心となっているが,医療施設以外への就職を希望している学生も多いことが分かった。
【理学療法学研究としての意義】
今後も社会に必要とされる医療従事者を輩出するために,理学療法士・作業療法士養成校が担う役割を現時点で再考することは重要であると考える。そのための基礎資料として,本研究で得られた知見は価値あるものだと期待する。
近年18歳人口の減少により,大学全入時代を迎えつつあり,それによって進学の目的や人生の目標が不明瞭な学生が増加していることがしばしば指摘されている。その傾向は,養成校の乱立と相まって医療専門職養成校にまで及んでおり,理学療法士あるいは作業療法士になるためのモチベーションや卒業後のビジョンがない学生が増えているように感じる。またそれが臨床実習を契機に顕在化し,問題となる事例が多く見受けられる。そこで,理学療法士・作業療法士養成校が実現すべき教育の方向性を考えるために,1年生を対象にアンケート調査を実施し,理学療法士・作業療法士養成校卒業後の進路希望の傾向について明確にすることを目的とした。
【対象】
アンケート対象者は理学療法士および作業療法士養成校の1年生とした。昼間部の学生のみに限定した。
【方法】
アンケートは無記名の自記式質問票を用いて回答させた。基礎情報についての項目は,年齢・性別・社会人経験の有無・最終学歴(高卒・専門学校または短期大学卒・大学中退・大卒・大学院中退・院卒)とした。進路希望については,養成校卒業後の最初の進路として,まず就職か進学を選択させ,次に就職先または進学先について選択式(複数回答可)で回答させた。
【結果】
専門学校1年生196名(男性135名・女性61名,平均年齢20.7±4.6歳),4年制大学1年生420名(男性235名・女性185名,平均年齢18.3±0.7歳)から協力を得た。
専門学校では,社会人経験者27.0%,未経験者73.0%で,最終学歴は高卒74.0%,専門学校または短期大学卒6.1%,大学中退3.6%,大卒15.8%,大学院中退0.5%であった。養成校卒業後の最初の進路として,就職希望99.0%,その他・無回答1.0%だった。就職希望者のうち希望する就職先(複数回答あり)は,医療施設96.9%,高齢者・障害者用施設20.6%,行政機関6.2%,企業5.2%,教育機関4.1%,その他・無回答7.2%であった。
4年制大学では,社会人未経験者99.5%,その他・無回答0.5%,最終学歴は高卒97.9%,大学中退1.0%,大卒0.2%,その他・無回答1.0%であった。養成校卒業後の最初の進路として,就職希望97.1%,進学希望1.9%,その他・無回答1.0%だった。就職希望者のうち希望する就職先(複数回答あり)は,医療施設95.8%,高齢者・障害者用施設21.8%,行政機関2.0%,企業5.9%,教育機関6.4%,その他・無回答3.4%であった。
【考察】
平成26年度に文部科学省が発表した,大学新卒者の進路についての報告では,就職73.9%,進学12.6%,その他13.4%とある。日本全体の動向と比較すると,理学療法士・作業療法士養成校では卒後の進学希望者の割合は低かった。しかし,4年制大学では,すでに1年次の時点で卒後に進学を希望する学生が含まれていたことから,今後4年制大学での養成が中心になるに従ってその傾向は強まるかもしれない。また4年制大学においては,卒後に臨床への就職を希望していない者(進学希望含む)が4.5%いたことも特徴的であった。
さらに,理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則では「実習時間の三分の二以上を病院又は診療所において行うこと」と定められており,臨床実習は病院や診療所・クリニックといった医療施設が中心となっているが,医療施設以外への就職を希望している学生も多いことが分かった。
【理学療法学研究としての意義】
今後も社会に必要とされる医療従事者を輩出するために,理学療法士・作業療法士養成校が担う役割を現時点で再考することは重要であると考える。そのための基礎資料として,本研究で得られた知見は価値あるものだと期待する。